※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#705  ドキュメント追跡

 

 

 

(本放送)・・・1975年5月14日

(再放送)・・・2019年9月19日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、田坂刑事(倉石功)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

笹一平、遊佐ナオ子、八木啓子、西村淳二、江幡連、増子浩之、大山高男、

小貫瑞恵

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・(信用金庫強盗殺人犯の一味を、尾行・監視する三船班の面々の場面)

松木  「主犯の佐久間は、暴力団でも大悪(註・大学出か?)で

     頭が良いんだ。おめおめ4人一緒に、東京駅から

     乗り込むとは思えんな」

田坂  「問題は、3人のうち誰が拳銃を持っているかですよ。

     この際、思い切って、井関だけでも連行したら

     どうでしょうか?」

松木  「井関は強盗(タタキ)でも、ただの見張りじゃねえか!

     残る2人がどこに隠れているかも、知っちゃいまい!」

関根  「主任・・・! 4人が落ち合うのを待ちますか?」

三船主任「いや、佐久間は気づいて逃亡している!

     女を泳がせて、石原にマークさせろ! 

     大野から逮捕に踏み切る!」

・・(以下、ナレーション)

追う者と追われる者・・・。

地上から地下へ・・・。

雑踏から埋め立て地・・・。

クールなカメラアイがえぐる、大都会のはらわた・・・。

次回、特捜隊、「ドキュメント追跡」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・今回は、ストーリーの性質上、結末を以下本文で書いていますので、気になる方は以下を省略するのも一考。

・序盤で関根が発言した「3人組の強盗殺人犯」というのは、尾行中の奈津子の他にも3人の強盗殺人犯がいる、の意と解される。

・自身が確認した限りでの登場する駅は、丸ノ内線・銀座、千代田線・日比谷・二重橋、赤坂、明治神宮前、国会議事堂前、日比谷線・仲御徒町、国鉄・上野、となる。

・有明3号埋立地とは、wikiによると、港区芝浦1・2・3丁目、港南1・2丁目、江東区古石場3丁目を指すようであるが、これらは放送時には埋立終了していた。当作では、まだ工事中であることがうかがえるので、別の箇所、あるいは言い間違えであると推察される。

・なお、劇中の水上バスは、東京水辺ライン の運行コースを見ると、当作の佐久間追跡の流れと比較出来て、上記の有明3号埋立地の場所と含め興味深い。

 

 

(視聴録)

・・・ストーリーの性質上、いつもと書き方が異なります

 

信用金庫で2人が射殺され、現金3千万を奪われる強盗殺人事件が発生。主犯の佐久間てつお(笹一平)、やさか奈津子(遊佐ナオ子)、大野(江幡連)、井関(増子浩之)の4人組を、三船班が追跡していくというのが、当作のストーリー骨子です。以下本文で、三船主任が劇中で語ったナレーションをすべて再現してみます。

 

☆東京・銀座4丁目、午後1時43分、歩行者天国に張り込む。

担当、関根・石原両刑事。

☆同日同時刻、東京駅八重洲口構内、新幹線乗車券売場に張り込む。

担当、松木・田坂両刑事。

☆午後2時20分、西銀座地下駐車場。

三船主任・水木刑事合流。

☆午後2時40分、共犯者2人を追って、地下鉄千代田線・二重橋駅付近に移動。

☆午後2時52分、地下鉄千代田線・車内。

☆午後3時16分、原宿表参道。

☆午後4時2分、上野。

☆午後4時40分、白髭橋付近。

☆午後4時55分、港区浜松町、世界貿易センタービル付近。

☆午後5時30分、浜離宮。

☆午後6時31分、有明3号埋立地。主犯・佐久間てつお・36歳・逮捕。

 

そして、主な登場人物は上記のほか、奈津子の妹のヒッピー女(八木啓子)であり、目ぼしい人物でも掏摸2人(西村淳二、小貫瑞恵)くらいしかいません。完全に、三船班VS強盗4人組の追いつ追われつのストーリーが、東京の地下鉄(現在の東京メトロ)を中心に、東京各地を回りに回って展開されます。

 

 

その描写はドキュメンタリータッチで行なわれ、「仁義なき戦い」のような手持ちカメラでの撮影(敢えてブレ・ズレ・ボカシはそのままに)、さらには加藤泰監督へのオマージュもあるのか、ローアングル撮影を駆使して、臨場感あふれる作品に仕上がっています。唐突な場面と思われても、振り返るとその伏線が事前に描写されてある(たとえば、奈津子とヒッピー女との衝突の原因が、関根がヒッピー女を目撃したときの場面に遡れること)など、展開にワンクッション置く効果を醸し出しています。まあ、開始約15分半ばの、千代田線・赤坂駅での石原の行動とニヤリ笑う場面の意味は、何度か見返してもよくわからないのですが、全体的には面白くまとまっていると評価できます。

(追加)R4.1.22 下線部について

再見したところ、千代田線の座席に座る奈津子を、石原が隣の車両の座席に座りながら監視。しかし、列車が曲がりくねって走行して見えにくいため、赤坂駅に着いたとき、石原は一旦下車。そして、隣の車両に奈津子がいることを確認して乗車、奈津子の隣の列の座席に座り、「しめしめ」とほくそ笑んだのではないかと推察します。

 

そして、刑事ドラマですから犯人逮捕は当たり前なのですが、1人、2人、3人・・・と捕まえるとき、男には格闘で組み伏せ、女には有無を言わせず手錠をかけるなど、上手く分けて「やった」という爽快感を与えるつくりにもなっています。視聴録のため、メモしながらの視聴でしたが、途中それを忘れて画面に見入ってしまうなど、視聴者をこれだけ惹きつけるアクション重視の特捜隊作品には久々に巡り会いました。

これは、横山保朗脚本、天野利彦監督の功績も大きいのですが、最近よく触れている助監督・三村道治の存在も大きいのではないかと思います。当作のような、全篇ロケということになると、ロケハンとまでいかなくとも、大工さんの「段取り八分・仕事二分」の諺では無いですが、事前準備が必要になります。これは、監督というより助監督の仕事であり、映画と違い予算も少ないこともあり、第1・第2・第3・・・助監督など設定できませんから、双肩は助監督である三村道治ひとりにかかってきたものと想像できます。

 

一例として、開始約9分半ばからの場面があります。自分は、東京住まいということもありますが、銀座近辺は地下道・地下鉄が入り組んでおり、なかなかわかりづらいのです。なのに、開始約9分半ば、奈津子と大野が合流してからの三船主任・関根・石原・水木の追跡、別動隊として井関を追跡していた松木・田坂の登場、この2つの流れが合流、三船主任の声かけ指示と井関の無防備な発言により、前述の(あらすじ・予告篇から)のとおり、奈津子を泳がせ、大野(と井関)を逮捕しようとする動きになります。そして、誰が拳銃を持っているかが、この逮捕劇で明らかにもなり、まさに文章でストーリーを展開させるのではなく、映像で展開させるのにふさわしい場面となりました。

これらは、先ほども触れた用意周到な事前準備がないと出来ない仕事で、裏方である助監督・三村道治の大変さがわかります。そして、それを上手く消化して、演出に結びつけた天野利彦監督の腕もまた、素晴らしいというべきでしょう。

 

そして、この場面が終わると、いよいよ三船主任の

>女を泳がせて、石原にマークさせろ!

という、石原刑事主役譚の開始かと画面になおさら集中します。これは、#693 情熱の海 でも触れた、「掲示板特捜隊 1」の>>18 による期待感が大きかったからであります。というのが、自分自身が(まだ視聴すらしていない)特捜隊に引き込まれるきっかけが、この、「掲示板特捜隊 1」の>>18 の書きこみでした。最後まで視聴すると、石原刑事主役譚とは言い切れないですが、石原刑事活躍譚に相応しい出来であります。

演じる吉田豊明の出演歴を見ると、現代劇でのレギュラー出演は、特捜隊番組終了後は無いようです。そういった意味では、レギュラーとして光を放った、当作の1975年は年齢的にも(当時34歳)、脂が乗り切った働き盛りの頃だろうと推測できます。

 

その、吉田豊明演じる石原の、三船主任と絡むラストの場面、

泥の水溜りに顔から転んだ石原が、三船主任に促されて顔をあげる

>そんな石原に三船主任は缶ジュースを渡す。

>石原刑事はそれを受け取ると実においしそうに

飲むのですが、このときの三船主任の見せる「いい顔」。1日中動き回り、食事も、飲み物も、煙草も無く動き回った石原への報酬とも見え、それからカメラがどんどん引いていき、犯人逮捕、駆けつけるパトカー、歩き出す三船主任・石原の遠景でエンディングとなるのは、傑作#623 ある夜の 出来ごと を思い出すようです(奇しくも、当作と同じ天野利彦監督作品)。アクション主体の刑事ドラマとして、当作を秀作と評価してももおかしくはないでしょう。

ちょうど1作前は、#704 人妻の虚像 を刑事ドラマの形を借りた人間ドラマとして秀作の評価をしましたが、奇しくも2週続けて(リアルタイムでも再放送でも)視聴者は天野利彦監督の秀作に遭遇したことになります。より深く考えれば、和歌山ロケ2部作の後半作品、#693 情熱の海 から天野利彦監督の復調が見られるので、3作連続で良い作品に巡りあえたというべきか?

 

その天野利彦監督ですが、wikiをみてびっくりしました。ニュースソースも無いのに

>天野 利彦(あまの としひこ、1933年2月3日 - 2019年4月18日)

の記載(いわゆる逝去記事)があるのです。

ツイッターでも触れている方がいるようですが、一切のニュースソースが無いのが事実です。以前、#694 ある絶望の女 で木村豊幸さんのことを触れましたが、wikiの基準の不明瞭さにはいかがなものかと思います(海鼠さんのコメントで、木村豊幸さんの訃報のソースはある程度わかりました)。今回の天野利彦監督については、2019年7月21日にソース無しに書きこまれ、これについてwikiが一切触れず、「出典要」のルビも付けていません。「履歴」を過去に遡って、ようやく「この存命人物の記事には、出典が全くありません」と書いてあるのがわかる体たらくです(現在では、その体たらくの記述すらありません)。

問題は、このwikiの姿勢であり、かつてDr.なんちゃらという検閲者(?)が、特捜隊の放送リストを、規定に則りバッサリ削除したことがあります。職務に忠実というのなら、ソース不明の逝去については慎重になるべきではないかと思う次第です。