※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#635  初笑い とら、とら、とら捕物帳】

 

(本放送)1974年1月2日

(再放送)2016年12月22日

(脚本)西沢治

(監督)吉川一義

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、

鑑識課員(田川恒夫)、関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

ジャネット八田、目黒幸子

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

時は天保の頃、

江戸庶民の味方、ねずみ小僧が神出鬼没の大活躍。

そこに降って湧いた職人殺しの事件!

盗みはすれども非道は致さぬねずみ小僧を、

犯人と決めつける三船同心!

別の犯人を主張する水木同心!

2人の我の張り合いにうんざりした配下の岡っ引きたちは、

独自で犯人を追い始める。

そこに登場した、遠山の金さん、

華麗なる変身ぶりに魅せられてか、

ねずみ小僧を庇って得意の啖呵(タンカ)!

さて、特捜隊・刑事たちが正月から始めるちょんまげ捜査、

その顛末や如何に・・・!?

次回、新春に贈る、「三船班 初夢捕物帳」に御期待ください。

 

 

(備考)

・オープニング&エンディング映像が変更される。

・検証本、リスト特捜隊、東映chでの再放送時の「初笑い トラ・トラ・トラ捕物帳」「初笑い トラトラトラ捕物帳」は、微妙に誤り。次回予告篇での「三船班 初夢捕物帳」も、単に紹介言葉とも見えるが誤り。実見のように「初笑い とら、とら、とら捕物帳」が正式題名。

・架空の世界で、特捜隊面々が演じる配役は以下の通り。

○風雷軒こと松平主水正=田中係長、

○北町奉行所鑑察=鑑察医、

○その部下=鑑識課員2人、

○岡っ引き・長兵衛=関根部長刑事、

○水木しんご同心=水木刑事、

○岡っ引き=石原刑事、

○竹次郎、進行解説者=松木部長刑事、

○遠山左衛門尉景元こと遠山の金さん=畑野刑事、

○三船狂四郎同心、鬼の左門=三船主任

・劇中登場する田中係長宅住所は、Googleマップで微妙に存在するが、44年前の映像とはいえ道路幅があまりに違うため、別の場所であると推察される。

・本放送の時期は、同じNETテレビで「ご存じ 遠山の金さん」(市川段四郎版)を放送中なので、パロディ的要素を交えた作品になっている。なお、当作三船班メンバーのうち本放送前に、三船主任を演じる青木義朗が「遠山の金さん 捕物帳(中村梅之助版)・#142  七万石を 拾った男」に出演している(1973年3月25日放送)。

・また、女ねずみ小僧の登場は、フジテレビでの「浮世絵 女ねずみ小僧」3rd(1974年1月5日から放送、小川真由美主演)を意識していたとも考えられる。

・芝新堀とは旧名の芝新堀町あるいは芝新堀河岸のことで、現在の港区芝2丁目を指す

(1964年、住居表示変更)。

 

 

(視聴録)

 

年始回りで田中係長宅に訪れる三船班の面々、田中係長の妻(目黒幸子)も交えのんびりムード。関根部長刑事、石原刑事はテレビで時代劇ドラマ「鬼の左門捕物帳」を視聴、内容は芝新堀・ひぐらし長屋に住む職人・竹次郎が殺害された事件で、鬼の左門は疑われた女ねずみ小僧・お吉(ジャネット八田)の無実を晴らし、真相を突き止めるというものだった。水木刑事が、もし我々が町役人だったらどのように捜査したか、我々が捜査したらドラマのラストは変わっていたかも、と思ったところから、三船班面々は好き勝手に(?)事件を推理していく・・・。

 

竹次郎の死に、ひぐらし長屋に駆けつける三船同心、水木同心、長兵衛、岡っ引きの4人。竹次郎は絵筆を握ったまま死亡、手の傍には寅の首振り人形(劇中では張り子の虎)が置いてあった。長兵衛は遺留品で煙草入れを見つけるが、三船同心は、刑事ドラマでは必ず遺留品が落ちており、そんなご都合主義は御免だとばかりに「なかったことにしろ」との設定変更。それならと長兵衛は、目撃者捜しの場面を作り、女が竹次郎の家から出てくるのをが目撃したという体で、コ〇キ浪人・風雷軒を登場させるが、女の人相については無言を貫く。そこに三船同心が快剣一閃も、風雷軒はかわして、逆に杖を突きつける。

 

大船町番所に戻った三船同心は、人相書から女ねずみ小僧・お吉の仕業と睨む。さらに竹次郎の頭にできた、赤紫色に腫れあがった縦の線は、お吉は空手が得意という人相書の特徴に一致すると確信する。しかし、長兵衛は義賊が殺すことに疑問を持つ。

 

一方、三船同心と風雷軒との一騎打ちを見ていた水木同心、岡っ引きは、縦の線は別のものでもできると考え、風雷軒の杖に疑いの目を向け、尾行を開始する。ところが、風雷軒が向かった先は北町奉行所、あろうことか北町奉行・遠山左衛門尉景元と会っていた。風雷軒の正体は、松平主水正であり、巷の情報を提供する遠山奉行の協力者だったのである・・・。

 

 

当作は、1974年の特捜隊正月特番で、あるテレビ時代劇のストーリーを、三船班面々の想像から、さらに架空のストーリーを設定、真相追及していくというものです。

初見のときは、笑いがあって面白いものの、あまりに脱線しすぎで刑事ドラマとして見るにはどうかなと考えていました。再見しても、最初はそう思っていたのですが、設定を各人好き勝手にやり直すところが、実はパラドックス的に真相追及できる形に気づきました。つまり、木は森の中に隠せという諺を、当作で採用しているのです。

また、その手法は、水木同心、岡っ引きの、縦の線は別のものでもできると考えたところにも繋がることでもあり、こういった点では刮目すべきところはあります。

 

しかし、細かいようですが、遠山左衛門尉景元を登場させるのは必然性もあるのですが、遠山の金さんを登場させるのは、その先が見えなかったこともあり、無くても良かったような気もします。これは、時代劇の部分に、笑いをとるとはいえ、特捜隊車両や背広姿の三船主任・松木部長刑事を登場させたことにも繋がり、余計な継ぎ足しが目立つのが当作の特徴だと感じました。吉川一義監督らしからぬ演出にみえるのですが、正月放送ゆえ、悪ふざけ的な演出を意図的にやったとも推察できます。

これは、特に、開始23分過ぎから如実にみられる内容です。いつも、「時間不足が宿命な特捜隊」と感じるのですが、当作は23分過ぎから、流れにスピーディーさが無くなります。架空世界と現実世界とが行ったり来たりする頻度も、多すぎるきらいがあります。

 

まとめると、評価的には、いつもの特捜隊として視聴すると一本背負いをうけた気になりますが、番外的な正月放送として見るにはまあアリかな、というところです。「掲示板特捜隊」のどこにあったかは忘れましたが、当作もかつての立石班の正月版のリメイク作だという指摘がありました。リメイク作ゆえ、いつもの三船班と違う雰囲気があったのかもしれません。

ちなみに、ラスト、夢から覚めて現実へ、ということで事件現場に向かう三船班ですが、今なら飲酒運転を疑われて撮り直しというパターンでしょう。