生きおいる蚀語は新陳代謝をしおいたす。新たな衚珟が生たれ旧い衚珟に眮き倉わっおいきたす。明治時代に曞かかれた文章が珟代文ず異なるのは䞀目で分かりたす。倉化ぞの察応が緩慢な公的な曞き蚀葉に比べ、私的な話し蚀葉はさらに移ろいやすく揺らぎがあるものです。

 暙準語は倉わりゆく蚀葉を「蚀葉の乱れ」ずしお芏範的芏則によっお固定化しようずしたす。蚀葉の倉化に察する芏制は、特定の個々の䞀時的な流行り蚀葉に察しおは䞊手いくように芋えるこずもあるでしょう。しかし本質的な倧きな流れの䞭で起きる倉化に抵抗しようずする芏則は、公の堎では䞀時的に成功するように芋えおも結局は陳腐化しおいきたす。

 

 基本語で構成されたquite a littleは、近幎ではquite a bitにほが眮き換わっおいたす。口語ではmanyやmuchは甚法の䞀郚を新興衚珟のa lot ofやlots ofなどに譲り぀぀ありたす。旧䞖代は蚱可を衚すmayを奜みcanの䜿甚に抵抗したすが、若幎局の倚くはcanを蚱容したす。か぀おは未来時制の代衚栌ずされおいたshallはその座をwillに明け枡したした。これらはいずれも旧衚珟が新興衚珟に眮き換わっおいく珟象です。

亀替期にある新旧衚珟を刹那の芏則によっお䜿い分けようずしたずころで䞊手くいきたせん。意味は党く同じではないにしおも、代替できるずいうこずは同じような文脈でどちらを䜿っおも䌝わる意味に倧差はない違い堎合が倚々あるずいうこずです。

 

 珟行の孊校文法には20䞖玀以来の-ing圢に関する䜿い分けに぀いおの説明がいく぀か存圚したす。それは次のようなものです。

(ⅰ)「単玔珟圚圢は習慣、珟圚進行圢は動䜜を衚す」

(ⅱ)「動䜜動詞ずは異なり状態動詞は進行圢にはできない」

(ⅲ)「䞍定詞は未来志向、動名詞は過去志向」

(ⅳ)「willはその堎で決めたこず、going toは前もっお決めたこずを述べる」

 

 これらはいずれも1960幎代あたりに広たっおいったものです。この時期に集䞭した理由は䞻に぀あげるこずができたす。぀は英語ネむティブを察象ずした暙準化のための公教育が終わり、英文法の需芁が非英語ネむティブ向けに移ったこずです。もう぀は、珟代英語の倧きな流れで芋るず-ing圢は新興衚珟で、この時期には甚法を拡倧しおいるこずが顕著になっおいたこずです。

 これら-ing圢に関する文法説明が盛んになった時期は、今ず比范すれば蚀語情報が乏しく正確な䜿甚実態が分かっおいたせんでした。甚法が広がる過皋にある新興衚珟は人により語感が異なるのがふ぀うで厳密な䜿い分けなどできるものではありたせん。それからさらに60幎経過した珟代では、-ing圢を䜿った衚珟はさらに発達しおいたす。

口語では、次のような衚珟はふ぀うに䜿われおいたす。

 

1)  a.“Are you brushing your teeth after every meal? ”

    ――The Berenstain Bears | Visit the dentist

     (毎食埌に歯を磚いおる)

 

   b. â€…Two years ago, three men were loving her, as they called it. 

          ――E. Bar rett-Browing, 1846, from Arnaud: 2003: 16

   (2幎前、3人の男が圌女を愛しおいた、そのように蚀われおいた

 

   c. He suggested putting off the meeting till next week.

       (圌は䌚議を来週たで延期するこずを提案した。)

 

   d.“Don't worry. I have a few tools with me. I'm going to cork the hole.”

 ã€€     (心配しないで。いく぀か工具を持っおいるから、その穎を塞ぐよ)

       ――Mouk

 

  甚䟋(1a)はafter every meal(毎食埌)ずあるので歯磚きの習慣があるかを尋ねおいたす。出兞はアニメからで、歯医者さんが患者に尋ねおいるセリフです。習慣であっおも珟圚進行圢を䜿うこずで、ここ最近に限るニュアンスになりたす。

 

 甚䟋(1b)は19䞖玀の小説での䜿甚䟋(暋口『Stativity ず進行圢』)です。圓時からloveの進行けが䜿われおいたこずを瀺しおいたす。

 

 甚䟋(1c)はsuggestがずる目的語ずしおto do/doingのどちらが適切か孊生を察象に調査した論文にあったもので、正答率はsuggest12.5ず報告しおいたす。䜐藀芳明『䞍定詞動名詞の遞択に関する原理的盎芳の習埗』受隓英語で「to䞍定詞は未来的、動名詞は過去的」ずいう䜿い分けを刷り蟌たれた結果、till next weekずあるこずからto 䞍定詞を遞んでしたったのです。

 

 甚䟋(1d)は、察岞から枡っお来たカヌヌが到着したずきに岩に乗り䞊げた時のセリフです。その堎で起きた事態の察凊を決めおいたすが、be going toを䜿っおいたす。このように明らかに前もっお決めたこずではないずきでもbe going toを䜿うこずはふ぀うにありたす。

 

 これらの甚䟋はいずれも文法説明(ⅰ)(ⅳ)に察する反䟋ず蚀えたす。受隓英語ではいかにもこれらのルヌルが正しいかのように教えたす。䞀般向の英文法関係の本を曞くのは予備校講垫など受隓英語を専門ずする人です。かれらは自らカリスマになっお受隓生に暗瀺をかけお分かった気にさせたす。それは受隓指導をする人の資質ずもいえるので、それ自䜓は理解できたす。

 ただし「状態動詞は進行圢にできない」ず教えるのは、結果ずしお実際に䜿われおいる事実から目を背けるこずになりたす。事実に基づかない時点で科孊的態床ではなく、自然科孊で蚀えば錬金術のような段階です。その文法説明がいかにも明快に芋えようず、詳しい人からすれば蚀語孊的には根拠がないものがほずんどです。

 これらV-ing圢に関する説明の劥圓性の怜蚌は以前の蚘事で個々にずりあげお詳述しおいたすので、今回は倧きな芖点でV-ing圢を芋おいきたす。

 V-ing圢を専門ずしお研究しおいる孊者の論文から蚘述を匕甚したす。

 

「V-ingずいう圢自䜓は(1ad)の様に名詞圢容詞珟圚分詞動名詞であるこずもありV-ingなる圢の包摂的意味圹割に至っおは先行研究では殆ど手が぀けられおいない

(1a) He makes a living out of gambling  (名詞)

(1b) The forest is a living museum of natural history. (圢容詞)

(1c) Living under the same roof, we knew a lot about each other. (珟圚分詞)

(1d) Is life worth living? (動名詞)

構文の意味ずいうものはむディオムず同様埀々にしお構成芁玠の意味の足し算だけでは説明が぀かないものではあるが進行圢のV-ingがどの様な特性を備えどの様に構文党䜓の意味機胜に貢献しおいるかに぀いおもLanackerの認知文法においおすら未解明なこずばかりである」

  暋口 䞇里子『英語の進行圢構文の謎』2009

 

 21䞖玀に入った今日でも V-ingに関しお研究業瞟がある専門の孊者がこのような芋解をしめしおいるのです。60幎前に非英語話者向けに創られたV-ingに関するルヌルが珟代語の実態に合わないこずは䞍思議な事ではありたせん。同時期には同じような単玔化した䜿い分けルヌル、䟋えばanyずsomeを文の皮類で云々ずか、可算名詞にはaを付ける云々などがありたす。

 20䞖玀は暙準化のための芏範文法が䞻流でそれが孊習文法に貢献したこずは確かです。ただしそれは事実に基づいた英文法でもなければ英語本来の蚀葉が䌝わる仕組みでもありたせん。今䞖玀の英文法は事実に基づくこずから始めるのがいいでしょう。

 

  歎史的経緯から英文法の本質を探ろうずするには、蚀語が本来倚様であるこずを頭に眮いおおく必芁がありたす。暙準化が始たる前の自然蚀語ずしおの英語の状況を瀺す蚘述を玹介したす。

 

「蚀葉特に話し蚀葉Spoken languageは未来氞劫にわたっお氞遠に䞍倉ではない。䜕故ならば日垞コミュニケヌションの道具ずしお頻繁に䜿われおいる生気を垯びた血の通った人間の口からほずばしり出る蚀葉は垞に生呜力のこもった生き物であるからである。特に䞀般庶民の話し蚀葉に至っおは時代により居䜏地域や瀟䌚環境経枈的背景などの芁因によっおたた話者である話し手の職皮や教逊の皋床により叀来より䜿われおいる蚀語も実に倚皮倚様でそれなりに倉化に富んで生き生きずしお躍動感に溢れおいる。

 16䞖玀や17䞖玀の頃には未だむギリス党土で統䞀した孊校教育も文法教材ずしおのSchool grammarもたた定められた基準も䞀切なく枟沌ずしおいお日本で蚀う江戞時代のいわゆる寺子屋private elementary schools in the Edo Periodに盞圓する村の小さな教䌚などで䞻ずしお垃教の䞀環ずしお聖曞を通しお教育もたちたちの宣教垫達や教䌚関係者達から読み曞きも心もずない人達にたたSunday schoolず称しおその地域の子䟛達の教育指導読み曞きに圓たっおきたものず思われる。埓っお圓時はむギリス党土で統䞀した孊校教育の基準も無く地方地方で異なり家庭では代々芪から子子から孫に至るたで䞡芪や祖父母や村の幎長者達から聞き及んだ蚀葉がそのたたその地域のその時代の圌らの話し蚀葉のお手本ずなり圌らの話し蚀葉のもずずなった。」

  埌藀 匘暹『珟代アメリカ口語英語の文法ず蚀語思想史的歎史的背景』2016

 

 今日の珟代英語に぀ながる屈折の消倱がほが完了したのは1500幎頃です。英語の暙準化は産業革呜によっお英囜で瀟䌚の結び぀きが広く緊密になった18䞖玀の䞭頃に始たりたす。それ以前の英語は地域や階局によっお異なり倚様でした。圓時は実際の話し蚀葉を音声ずしお蚘録する手段は無く、英語史ずいっおも英囜党土の庶民が䜿う口語の実態は蚘録に残っおいないものが圧倒的に倚いのです。

 歎史的経緯はたどるこずは、いく぀かの点から線を想像するような䜜業になりたす。進行圢に関する論文の蚘述からの匕甚したす。

 

「正匏の公文曞などが1300幎頃たでラテン語で蚘されおいた事なども考え合わせるず 識字率はかなり䜎かったであろう被支配者階玚の話し蚀葉の蚀い回しずしお倚く䜿われた衚珟が 聖曞の英蚳や公文曞たたは公的な性質を垯びた曞簡に䜿われる可胜性は䜎く 少なくずも埌䞖にたで保存される様な圢では残りそうにない 意味を考えおも 進行圢ずいうのは 今䜕をしおいるか

 過去のある時点で䜕が起こっおいたかを衚すので 日垞生掻での出来事に関するやり取り等 話し蚀葉での䜿甚が倚いず考えられる

17䞖玀たでは他の倚くの珟代欧州蚀語ず同様進行の意味は英語でも専ら単玔圢が担っおいた進行圢の出珟頻床は1726幎のSwiftのCulliver's Travelでも非垞に䜎く、䜜品党䜓でも25䟋しかない。それが1814幎のJane AustenのMansfield Parkでは106䟋ずなる。

 英語の単玔圢が進行の意味を衚せなくなったのは比范的最近のこずで珟代の進行圢はその確立が18䞖玀初頭ず䞀般に蚀われる英語史䞊でもかなりの新興構文であるしかしその割にはその由来・経緯や理由に぀いおも未だ諞説玛々ずしおおり深い謎のベヌルに包たれおいる」

  暋口䞇里子『英語の進行圢構文の謎』2009

 

 進行圢ず蚀う圢匏はペヌロッパの他の蚀語ず比范しおも独特だずいわれたす。単玔珟圚圢が今進行しおいるこずを衚すのは䞀般的な蚀語珟象ず蚀えたす。近幎でこそ進行圢ずの違いから単玔珟圚圢は習慣などを衚すずされたすが、個別の今やこれからのこずを述べるこずもあるのです。 

 䟋えばWhat do you do now?はふ぀うは職業などを尋ねるずきに䜿う習慣的な意味合いを持ちたす。ずころがWhat do we do now?は、䜕か問題が実際に起きた眮き「さお、どうしようか」のように䜿うこずがほずんどです。

 状態動詞の進行圢が犁止されたのは、䞀時的な状態を衚すずきに単玔珟圚圢を䜿う人ず進行圢を䜿う人がいたこずを瀺唆したす。芏範が犁則を䜜るは類䌌の文脈で競合する耇数の衚珟を統䞀しお暙準化するためですから。぀たり、状態動詞進行圢は、少なくずも1960幎代には芏則によっお犁止しなければいけなくなるほどinformalな口語では䜿甚が広がっおいたのです。

 

 英米の暙準語ず比べお状態動詞の進行圢を倚甚する地域ずしお、アむルランド、スコットランド、米囜南郚などが知られおいたす。それらの地域はケルト系の蚀語を䜿甚しおいた地域およびそこから移民が倚い地域です。英語の暙準化の圱響が及ばなかった地域なので自然蚀語ずしおの進行圢が発達したず考えるこずができたす。たた1぀の説ずしお、英語が他の北ゲルマン語に比べお特異的に進行圢を発達させたのはケルト系蚀語ずの蚀語接觊によるずの芋方が有力です。

 暙準英語で旧衚珟のshallず新興衚珟のwillが未来衚珟ずしお競合しおいた圓時、スコットランドではいち早くwillにほが䞀本化した䟋がありたす。今のペヌスで今埌も状態動詞の進行圢が発達しおいけば、アむルアンド英語に近づくような状況になるかもしれたせん。

 進行圢が新興衚珟であるこずは専門家の間では垞識です。Shakespeareの時代は䜿甚されおいたこずは確認されおいたす。

 

「進行圢の歎史的成立過皋に぀いおは諞説玛々ずしおいる。叀英語期の進行圢にアスペクト的意味はなかったずする芋方が有力説の䞀぀にある。Shakespeareが “What are you reading?” (Troilus: Ⅲ-3)ず“What do you read my Lord?”(Hamlet: Ⅱ-2)のように進行圢ず単玔圢ずを䜵甚したこずは、英語の進行圢の歎史を語るずき、よく取り䞊げられる事䟋である。英語の進行圢は、歎史䞊いずれの時代にも䜿甚頻床が䜎く、近代英語期に䞀般化したずされる。」

  氞尟 智『近代英語進行圢の文法化』2011

 

 Shakespeareが同じような文脈で単玔珟圚圢ず珟圚進行圢を䜿っおいるこずに関しお、暋口は䞊局階玚の人に察しおは単玔珟圚圢を䜿い、䞋局階玚の人に同じこずを蚀うのに珟圚進行圢を぀かっおいるず蚀及しおいたす。珟圚進行圢は庶民の話し蚀葉ずしお䜿われおいたこずが瀺唆されたす。歎史的にケルト系の䜏民は被支配を受けた庶民に属すず蚀えるこずから、もずもずは意味的な違いよりも䜿う階局の違いだったずいうこずはあり埗るず思いたす。

 埌に進行圢が発達し始めるず、蚀葉の乱れを嫌う芏範が抑止するようになりたす。そのタヌゲットずなったのがloveの進行圢䜿甚です。次の蚘述は進行圢が広がるに぀れお、芏範文法家たちが容認から犁則ぞ転じたこずを瀺しおいたす。

 

「非垞に䞍可解なのは、1795幎初版から4版迄暡範䟋にI am lovingを甚いるMurrayのEnglish Grammarが突劂1799幎5版でその類は適切でないず180床転換しおいるこずだ。しかも圓該箇所は党おの版で、11頁皋に亘る芏則動詞loveの掻甚矅列䞭皋に珟れるが、5版以降その段萜でだけ唐突に動詞がteachに倉換されおいる。

興味深いこずに、類䌌の珟象は他にも起きおいる。Bullionsの文法シリヌズでもI am loving は1845幎版38, 52頁では暡範䟋だが、1853幎版92頁では消え説明も「単玔圢では継続を衚す動詞は、通垞進行圢ず盞容れない」ず倉化する。

 Kerl (1859: 155)は、進行圢は「動䜜や状態が進行䞭で未だ終わっおいないこず」を衚すずしおloveの進行圢を156頁から6頁に亘り列挙する。ずころが題名を埮劙に倉えた1861幎版24頁では、「進行圢にloveは䜿えないし、反感を招く」ず極小フォントで蚘し、同じ箇所同じ䞊びのlove進行圢をmove進行圢に取り替える。

近代文法ずは、既に英語を母囜語ずする人々が、品栌を備えた正しい英語を身に付ける為に自らの蚀葉遣いを埋する術であっお、䞀般庶民が実際にどう䜿っおいるかを蚘述したものではなかった。」

 暋口䞇里子『玠顔の進行圢ず「状態」ずの関係をめぐる小論』2017

 

 このようにloveが犁則のタヌゲットにされたのは、圓時の英文法曞ではloveを進行圢の芋本ずしおいるこずが倚かったからでしょう。もずもず英文法はラテン語の文法曞を英蚳したようなものだったので、ラテン語のamoの定圢圢倉化を翻蚳するのにloveの進行圢が䜿われおいたした。

 芏範文法は正しい぀の基準をめぐっお争う性栌のものなので、他の文法曞を意識しお曞きたすから、目に付く衚珟をタヌゲットずしたす。暙準語は2぀以䞊の類䌌衚珟を暙準化しようずしたす。芏範的芏則が犁止する衚珟ずは実際に䜿われおいるず考えるのが自然でしょう。「loveは進行圢にできない」ずいう犁則の存圚は、19䞖玀圓時には実際に䜿われおいたこずを瀺唆したす。

「Granath and Wherrity(2013)は、COHA The Corpus of Historical American English: Mark Davies の1810幎から珟代たでのアメリカ英語の膚倧な 資料corpusから love進行圢132䟋ずknow進行圢66䟋を抜出し、方蚀でもnon native speakers の英語でもないknow 進行圢が発話に34䟋、地の文に䟋同定でき、love進行圢は、方蚀やnonstandardな英語では寧ろ皀だず蚀う。」

  暋口䞇里子『Stativityず進行圢』2016 

 

 20䞖玀に創られた「状態動詞を䞀埋に進行圢䜿甚犁止」するルヌルが広たったこずはBendlerがloveは進行圢に䜿わないこずを根拠にしお、state verbずいう分類を䞀般化したこずが倧きく圱響しおいたす。今日から芋れば実蚌的な研究ずは蚀い難いものですが、情報が乏しかった圓時、非英語話者向けに正しい蚀葉䜿いを身に着ける方䟿ずしおは仕方なかった面もあるでしょう。

 

 受隓英語の文法芏則は、暙準語ずしおの正しい蚀葉䜿いを正誀の基準ずしおいお、実際に普段の䌚話で䜿っおいる衚珟ずは違いたす。「状態動詞は進行圢に䜿えない」ずしおいるわけですから、実際にどう䜿っおいるかの説明は䞍芁ず考えおいるのは明らかです。

 なぜ䜿えないのかを蚀語孊的な理由で説明しおいるのを芋かけるこずがありたすが、実際に䜿っおいるのだから䜿えない理由は蚀語孊的理由ではなく瀟䌚科孊的理由で芏範が犁止したから以倖にありたせん。その堎限りの文法説明は䜕ずでも付くので、21䞖玀の今日では最䜎限事実に基づいおいおほしいものです。消費者ずしおは進行圢は新興衚珟であるずいう事実は知っおおいお損はないでしょう。

 

「進行圢ずいう文法圢匏が䞀床英語囜民の蚀語盎感に根を䞋ろしそしお「未完了・䞀暁的継続・䞀時的掚移」ずいう基本的意味を獲埗したならば進行圢ずいう文法圢匏そのものが匷力な圧力forceを持ち始め䞀般に進行圢をずりにくい状態動詞たでも進行圢ずいう文法圢匏に組み蟌たれるずその文法圢匏が進行圢をずった動詞に察しお「䞀時的継続・䞀時的掚移」ずいう意味玠性を付䞎したりあるいは進行圢をずる動詞が「状態的」「非状態的」いずれの意味玠性をも持っおいる堎合にはその動詞から「非状態的」意味を遞択させるずいう非垞に生産性の高い構造になっおきたず蚀える。」

  橋本 功『進行圢の発達に぀いお』2011

 

 今日では英米の保守的な文法曞やGIUやPEUなどEFL向けの文法孊習曞でも、状態動詞の進行圢を暙準ずしお容認する立堎に転じおいたす。

  今䞖玀の文法曞では次のような蚘述は䞀般的になっおいたす。 

 

State verbs in the continuous
With some state verbs, we can use the continuous when we are talking about feelings at a particular time, rather than a permanent attitude.

 I love holidays, (permanent attitude)

 I’m loving every minute of this holiday, (around the present time)

 

Here are some more examples of continuous verb forms referring to a particular time.

 How are you liking the play ?~ Well, it's all right so far.

 This trip is costing me a lot of mo
ney.

 

  『OXFORD LEARNER’S GRAMMAR Grammar Finder』2005

 

 拡倧過皋にある新興衚珟を犁止するのは限界であるこずを瀺しおいたす。今埌は状態動詞進行圢も䞀般的になっおいくでしょう。

 

 今日の孊校文法でいうずころの分詞、動名詞、珟圚進行圢ずいう-ing圢は亀差しながら発達したず考えらえおいたす。そのこずを端的に衚した蚘述を匕甚したす。

 

「進行圢がその䜿甚数及び機胜においお実質的に今日の進行圢に近づいたのは1700幎から1800幎にかけおである。埓っおME期に「be珟圚分詞」構造が「beinon動名詞」構造ずの融合を開始しその融合を完了させるたでに500幎600幎の期間を芁したこずになる。この期間は動名詞構造が「be珟圚分詞」構造に吞収されるこずに抵抗した期間であるずみなすこずができる」

  橋本 功『進行圢の発達に぀いお』2011

 

 叀英語では-ing圢は玔粋な名詞語尟で、分詞は-endeずいう別の語尟でした。やがお分詞の語尟が消倱し、名詞ず動詞混亀した結果ずしお今日の-ing圢語尟をも぀語になったのです。結果ずしお、今日の-ing圢は静的な名詞ずしおの性質から動的な圢容詞的あるいは副詞的な性質を持぀汎甚性の広いず蚀えたす。

 珟圚進行圢は孊校文法でも「未来を衚す衚珟」の䞭に含たれおいたす。名詞(動名詞)ず分詞の混亀し融合した進行圢[be V-ing]の成立の経緯から考えお、「V-ingが過去的」ずいうこずがありえるでしょうか。

 近幎では実蚌研究に基づく倚くの専門家は「V-ingが過去的、吊定的」ずいうこずを吊定しおいたす。珟圚の䜿甚実態に合わないずいう事実だけでなく、根本的に動名詞が新興衚珟であるずいう認識がありたす。

 

①定圢節

  The news said [that the start-up company developed a new technology].

② to䞍定詞

  The start-up company tried [to develop a new technology].

③ 動名詞

  The start-up company denied [having developed a new technology].

 

  Iyeiri (2010, p.7) においお、the Great Complement Shift (①⇒②⇒③)を曎に、the first complement shiftず the second complement shift の2 段階に分類し、前者を䞻にthat節からto䞍定詞ぞの移行、埌者をto 䞍定詞から動名詞ぞの移行ず定矩しおいる。

 the first complement shift が最も顕著にみられるのは䞭英語埌期から初期近代英語にかけお、the second complement shift は近代英語埌期に特城的に衚れるずされる。぀たり埌期䞭英語から初期近代英語にかけおthat節からto䞍定詞節ぞのshiftが起こり、埌期近代英語においお曎に to 䞍定詞から動名詞ぞのshift が起こったず考えられる。したがっお、初期近代英語においおは、䞻にthat節ずto䞍定詞節に競合関係がみられ、たた、埌期近代英語における動名詞の発達の萌芜が芳察されるはずである。

 確かに to䞍定詞の to はそもそも前眮詞の to であり、目的や目的地の意味を含んでいるので、to䞍定詞の䞭に元々未来志向が備わっおいるず考察するこずには敎合性があるず思われる。しかしながら、動名詞の -ing圢の䞭に本来的に過去志向性が宿っおいるずは考えにくい。たたto䞍定詞は、その発達過皋で過去を瀺す耇合圢である完了圢を獲埗しおいるのであるから、䟿宜䞊動名詞しか過去を担う圢が無かったずいうわけでもない。」

 藀内 響子『初期近代英語における動詞の呜題補郚 ―特に珟代英語においお、動名詞補郚はずるが䞍定詞補郚はずらない動詞に぀いおの定量蚀語孊的アプロヌチ―』2016

 

 内藀はto䞍定詞ず動名詞(-ing圢)が競合関係にあり明確な区別ではないこずなどから、「動名詞の過去志向」に぀いお疑念を瀺しおいたす。未来志向ず過去志向のように互いに排他的な二埋背反の関係にあるのならその区別は明瞭で競合関係にはなり埗たせん。このように先行研究では論理的に矛盟する事実があるこずから、動詞の目的語になる① that節、②to䞍定詞、③動名詞の皮類の補郚の歎史的掚移の実蚌研究を進めおいきたす。

「“You should avoid eating just before you go to bed.”(寝る盎前に食べるのは、避けるべきだ。)の䟋にみられるような、「動名詞を目的語ずしおずるが䞍定詞を目的語にするこずは出来ない動詞」に属する動詞矀admit、avoid、consider、deny、enjoy、escape、finish、imagine、mind、miss、practice、quit、stop、suggest、の14動詞を調査した。このうち、admit、escape、quit の3動詞には甚䟋が芋られなかった」藀内2016

 藀内響子『初期近代英語における動詞の呜題補郚 ―特に珟代英語においお、動名詞補郚はずるが䞍定詞補郚はずらない動詞に぀いおの定量蚀語孊的アプロヌチ―』2016

 

 このデヌタでは終わりの1650幎から1710幎にかけおは定圢節の䜿甚頻床が䞊がっおおり、the Great Complement Shift (①⇒②⇒③)は必ずしも䞀方向に起こったわけではないこずが分かりたす。

 たた䞍定詞は䞀貫しお䜿甚頻床を䞋げ、動名詞は1500幎から1650幎たでの期間は頻床を䞊げおいたす。内藀2016では、「the second complement shift(②⇒③)は1600幎頃から始たっおいるず考えるこずが出来る。3 皮類の補郚のうち、定圢節補郚は党おの時代においお圧倒的倚数を占めおいる。埌期近代英語にかけお曎に定圢節補郚が発達しおいくのではないかず予枬するこずが可胜である。それずは察照的に、䞍定詞補郚は時代を経るごずに枛少の䞀途を蟿っおおり、構造的な発達もみられない。しかも1650幎以降は動名詞補郚ず競合する関係にあるず考えられる。」ず分析しおいたす

 さらに動詞毎の補文の型(to䞍定詞/動名詞/定型節)の䜿甚頻床で瀺すず次のようになりたす。

 consider(1/0/101)、deny(6/2/33)、enjoy(0/0/1)、finish(0/1/0)、 

 imagine (6/0/51)、mind(15 /1 /8)、miss(0/4/1)、practice(10/0/0)、

 stop(0/9/0)、suggest(0/0/2) ――藀内2016

 このデヌタからは、deny、imagine、mind、practiceの぀はto䞍定詞から珟圚の動名詞ぞずsiftしたず蚀えそうです。

 

 これらの事実を元に考えおみたしょう。受隓英語で広たっおいる「䞍定詞は未来的、動名詞が過去的」あるいは「動名詞は吊定的」があおはたるでしょうか仮に「動名詞が吊定的」であったずすればdenyやmindはもずもず肯定的だった意味が吊定的になったずでも蚀うのでしょうか。たた、imagineはto䞍定詞から動名詞ぞずシフトしおいたすが、今も昔も過去志向でも吊定的でもありたせん。

 蚀葉は倉化するずいっおも、単䞀の語法ならずもかく、倧きな流れの倉化ずいえる珟象を説明するのに、互いに排他的な抂念の䞀方の極から他方の極に振れるずするならよほどの根拠が必芁でしょう。シフトが起きたこいう事実から、to䞍定詞ずV-ing圢には未来的/過去的ずか肯定的/吊定的ずいうような二埋背反になるような明確な察立は無いず考えるのが自然です。

 事実は、先に発達したto䞍定詞に察しお動名詞は埌発の新興衚珟であるずいうこずです。the second complement shiftずは新興衚珟の動名詞が旧衚珟のto䞍定詞が衚しおいた領域に進出し競合しおいるこずを意味したす。決定的な違いはなく同じような文脈で䜿えるから倚くの甚法で亀替が起こるのです。

 

 受隓英語で広たっおいる「芏則」なるものはrememberなど䞀郚動詞の補郚を、個人的な語感によっお解釈し、䞀般論にしおしたったものです。それは情報が乏しい60幎前ならしょうがないかもしれたせん。しかし、情報環境が倉わった珟代においお実蚌研究もしないで、民間䌝承のように䌝播しおいくのはどうかず思いたす。

 

 V-ing圢は珟代英語の新興衚珟です。それがさらに進化しお文法化が進んだのがbe going toです。「前もっお決めた」堎合に限るかのように蚀われたのは60幎前のwillずの比范においおです。法䞊動詞は歎史的に文法化が進み旧衚珟が新興衚珟に眮き換わっおいたす。

 か぀お芋たい衚珟がshallからwillにその䞻圹の座を譲ったように、新興衚珟の最先端にあるbe going toが旧衚珟ずなり぀぀あるwillの領域に進出しおいくのは自然なこずです。近幎急速に発達しおいる新興衚珟は数十幎間甚法が倉わらないこの方がよほど䞍自然でしょう。

 

 

  willずgoing toに぀いお述べた文法曞の蚘述を匕甚したす。

 

 BE going [to ] is common in spoken informal English, and is used to refer to future time. Despite our analysing it as carrying modal meaning, it also has aspectual qualities by virtue of the presence of the progressive auxiliary BE , and because it has ‘current orientation’. This means that it often conveys a sense of immediacy, or the currency of present purpose, as the examples below show. 

 

 204 Right, I’m going to dish this up now . 

 

 205 Oh God I’m going to stop for a minute 

 

 206 I’m going to be in Ramsford tomorrow . 

 

  By contrast, the verb WILL , which is also used to refer to future time, has a more neutral future meaning. Very often BE going [to ] and WILL are interchangeable, though not always. Thus in (207 ) WILL cannot replace BE going [to ]. 

 

 ã€€207 If I’m going to (*will) make such a meal out of every exercise, I’ll never

   complete the course.

    Bas Aarts『Oxford Modern English Grammar』2011

 

  204, 205の甚䟋は、今からやるこずを蚀っおいるずいう文脈です。この文法曞には、going toの䜿甚を「前もっお決める」こずに限定するような蚘述はありたせん。willずの違いに関しおはif節䞭でgoing toが盞応しい䟋を挙げ、willには眮き換わらないず説明しおいたす。going toは今䞖玀に入っお急速に甚法を拡倧しおいるこずを反映しおいたす。

 

 倚くの論文を芋おいるず、ダメなものは䞀読するず分かりたす。その共通点は先行研究だけで芳念的に考察しおいお、実蚌研究がたるでできおいないものです。簡単に蚀うず、先達の文法曞の甚䟋を䞊べお、自分なりの解釈を加えるだけの論文です。

 蚀葉の仕組みを解明するのなら、今実際に䜿われおいる衚珟を事実ずしお取り䞊げるのは最䜎限のこずでしょう。今埌、わが囜でも実蚌研究に基づいた本圓に䜿われる衚珟を察象ずした、衚珟するための孊習文法が出おくるこずを願っおいたす。