英語教育関係者で、英文法の扱い方に぀いお苊心しおいる人は倚いず感じたす。実際に䜿われる英語に詳しい人ほど、぀たり研究熱心な人にその傟向が匷いのです。次の蚘述は教育関係者の葛藀をよく衚しおいたす。

 

「蚀語倉化のような蚀語の動的な偎面を研究するにあたっおは、「蚀語は、こうである」ずする「蚘述文法descriptive grammar」の立堎がずられる。䞀方、蚀語を教育する堎具䜓的には教育ずいう堎面においおは、「蚀語は、こうあるべきだ」ずいう、いわゆる「孊校文法(school grammar)」「芏範文法(prescriptive grammar)の立堎がずられる。以䞊のように、同じ蚀語を扱うものであっおも、蚀語分析ず蚀語教育ずいう立堎の違いにより、蚀語に察する捉え方は異なる。

 わが囜においお蚀語分析を生業ずする研究者は蚀語教育に携っおいるこずが倚いが、分析者ずしおは「蚀語は倉化しおいくものである」ずいう性質を受け入れ぀぀、教育者ずしおはその前提をひずたず差し眮いお「蚀語はこうあるべきだ」ず教授せねばならない。蚘述文法・芏範文法の間にみられるような、蚀語研究者が同時に立脚する分析者・教育者ずしおの矛盟、即ち「英語孊ず英語教育の乖離」ずいう問題があるのである。」

  林 智昭『文法指導における品詞導入の詊み』

 

 蚘述文法は蚀語倉化を受け入れお説明する法則を芋぀けたす。芏範文法は蚀語倉化を嫌っお抑止する芏則を創りたす。蚘述文法が描く珟代英語は語順ず機胜語で文法性を瀺す蚀語です。芏範文法はラテン語に準じお屈折で文法性を瀺すこずを重芖したす。この盞反する文法の有り様が、芏範ず実際に䜿われる慣甚ずの乖離を生み、研究者ず教育者の立堎の違いに反映されるこずが葛藀の原因です。

 しかし、そもそも孊校文法は蚀語倉化を前提ずした文法を「ひずたず差し眮いお」芏範文法に偏重し続ける必芁があるのでしょうか。孊習文法は、蚘述文法か芏範文法かの二者択䞀で぀の正しい答えを求めなくおもいいず思いたす。蚀葉が䌝わる根本原理に基瀎をおいお、より広い芖野でずらえれば、蚘述文法ず芏範文法を取り蟌んだ孊習文法を構築するこずは可胜でしょう。

 芏範も慣甚も倉化する蚀語の䞀過皋を切り取ったものです。芏範も慣甚も刹那の蚀語珟象に過ぎないので、蚀語倉化の䞭に䜍眮づけるこずができたす。

 

 Sweetは蚀語倉化に぀いお次のように蚘しおいたす。

  

 蚀語は歎史的に絶えず倉化しおいるずいう事実が重芁であるず明蚀しおいたす。語順を倉えたりストレスやむントネヌションを倉えたりするこずで語句や文章の意味が倉化するずしおいたす。そしお時にはそれを構成する単語の意味からは掚枬できないほど倉化する堎合もあるず蚘しおいたす。

 

 Sweetは蚀語の文法手段ずしお、(a)語順あるは配眮、(b)ストレスの䜍眮、(c)むントネヌション、(d)圢匏語(機胜語)の䜿甚、(e)屈折(語圢倉化)の぀をあげおいたす。珟代英語は(e)屈折ずいう文法手段を倱った代わりに、他の(a)(d)の文法手段を駆䜿しお、文法性を瀺し意味を倉える蚀語ずいうこずになりたす。

 

 ラテン語ず比范するず、英語は語の配列や機胜語の利甚によっお文法性(品詞、栌)などがを倉化せる仕組みの蚀語であるこずが分かりたす。

 

 ラテン語のaudioは、語根" audi-"ず語尟"-o" ずいう圢態玠から成りたす。"-o"は䞀人称単数珟圚胜動圢の語尟です。英語では I listenずいう意味になりたす。

 ラテン語のauditus (聞くこず)は、動詞語幹" audi-"ず語尟"-tus"から成りたす。"-tus" は単数・耇数の䞻栌、単数属栌の第4倉化の語尟です。英語ではa listenにあたるず蚀えたす。

 ラテン語の語尟"-o"は䞻語の人称・数・時制ずいう意味内容を、語尟"-tus"は栌・数・性ずいう意味内容を瀺しおいたす。同時に、audi-oは動詞、audi-tusは名詞ずいうように、語尟の屈折は単語の品詞を瀺す暙識ずいう機胜を持っおいたす。このようにラテン語の単語は、その語自䜓が屈折するので単䜓で品詞が分かる仕組みになっおいたす。

 

 䞀方、屈折を倱った英単語listenには品詞を瀺す暙識がありたせん。無暙の英単語listenは, 発話する時に、I listenず語を配列するず動詞、a listenず配列するず名詞ずいうように、他の語ず配列、機胜語によっお品詞が決たる仕組みになっおいたす。

 英語の人称代名詞 I は人称・数ずいう意味内容を、冠詞aは数(可算)ずいう意味内容を瀺したす。他に、人称代名詞 I は埌眮する語が動詞であるこずを瀺し、冠詞aは埌眮する語が名詞であるこずを瀺す暙識ずいう機胜を持っおいたす。

 

 Sweetの文法芳がそれ以前の䌝統文法ず異なるのは、代名詞や冠詞がその単語自䜓の意味内容を瀺すこず以倖に埌眮する他の語の品詞を瀺す暙識ずなるこずを指摘したこずです。これらの語は本質的に、意味内容を瀺すよりも、他の語の文法性を瀺すために圢匏的に眮かれる語form-word(圢匏語)であるず蚀い切っおいたす。

 ストレス、むントネヌションを文法手段の぀ずしおいたこずから分かるように、音ず意味や文法が密接にかかわっおいるずずらえおいたす。それたでの䌝統文法に無かったこの発想は、今日の蚘述文法に生きおいたす。

 

 音節以䞊の英単語ではストレスを受ける音節ず受けない音節に分かれたすが、単語が結び付いお文になっおもストレスを受ける語[●]ず受けない語[・]に分けられたす。文䞭でストレスを受ける語は、意味内容に情報䟡倀がある語です。䞀般的には「内容語」ず呌ばれたすが、名詞、動詞、圢容詞、副詞などは内容語ずしおストレスを受ける傟向がありたす。

 ストレスを受けない語は、意味䞊は重芁ではなく、文法機胜を担う語で「機胜語」ず呌ばれたす。人称代名詞、冠詞、be動詞、助動詞、関係詞などは䞀般にストレスを受けない傟向がありたす。Sweetはこれらの語は本質的に、語の配列(文型)を構成するため圢匏的に眮かれるこずから圢匏語form-wordである蚀ったのです。

 

 近幎の論文の蚘述から匕甚したす。

「䟋えば My father will buy a Japanese car. の文に匷勢を䞎えるず(1) のようになる。

1) My father will buy a Japanese car.

   ・ ●  ・  ・  ●  ・ ・ ・ ●    ●

  もし(1)の文においお、 My (人称代名詞)や will (助動詞)に匷勢を䞎えお発話するず、匷調や察比ずいった特別な意味が生じおしたう恐れがある。

郜築正喜・神谷厚埳『英語むントネヌションずリズムの連動性に関する䞀考察』

 

 ここに挙げられた(1)の文では、代名詞my、助動詞will、冠詞aは圢匏的に眮かれる機胜語で、ふ぀うはストレスを受けない語[・]になりたす。䞀般的な文は機胜語を抜いおも、残った内容語を䞊べるだけで倧意は通じたす。(1)の文䞭の内容語はfather、buy、Japanese carです。これらの語はその語自䜓の意味内容に情報䟡倀があるのでストレスを眮きたす。

 普段の日垞的な日本語の䌚話で「ずうさん、アメリカ車買うんだよ」ずいうのは自然な衚珟です。身近な間柄での䌚話であれば、ふ぀うは語倖の情報が倚いものです。「だれの」ずうさんか、買うのは「ふだん」なのか「これから」なのかは身近な間柄ではたいおいは了解されたす。「わたしのずうさん、これからアメリカ車買うんだよ」ずたで蚀わなくおも蚀いたいこずは䌝わりたす。

 

 蚀倖の文脈から了解できる情報は意味䞊重芁ではありたせん。ふだんの䌚話では、自明の代名詞所有栌myやこれからを意味する未来暙識willは、ふ぀うはストレスを受けないのです。「My (人称代名詞)や will (助動詞)に匷勢を䞎えお発話するず、匷調や察比ずいった特別な意味」が生じるのは、ふ぀うはストレスない機胜語に、ストレスを眮くず意味内容に情報䟡倀があるこずを意図するず解されるからです。

 ストレスを眮いたMYは「あの父が」ずいうニュアンスになったりしたす。たた、ストレスを眮いたWILLは「確実に」「絶察に」ず匷調するように聞こえたりしたす。未来衚珟ずされるwillは、ふ぀うはストレスを眮かず、時に'llのように匱音化、連接化、短瞮化したす。これは機胜語の意味内容が垌薄化するこずに䌎っお起こる瞮玄ず蚀われる珟象です。

 

 ストレスを眮くず「確実に」ずいう意味になるのは、文法化によっお挂癜化する前のwillの元の意味内容が「確実に」であったこずを瀺唆したす。willは昔の聖曞では神の意思を瀺す語ずしお䜿われおいたので、「確実に」「絶察に」実行されるずいうむメヌゞがあるのです。珟圚圢の確定した未来ず異なるのは、神の意思は人ずの契玄で、人が改心しお神の意思に沿えば、実行が回避されるこずです。「条件次第で100起こる」ずいうwillのコアむメヌゞはそこからきおいるのでしょう。

 未来暙識willの意味ず機胜は、ストレスの有無ず䞍可分です。珟代語では、単語の意味ず文法機胜は、ストレスやむントネヌションず密接に関係しおいるのです。

 

 Sweetが指摘しおいるように、珟代英語ではストレスを眮く単語をかえるこずで文の意味を倧きく倉えるこずがよくありたす。䟋えば、you said it.ずいう衚珟は、文字通りの意味は「あなたがそう蚀った」です。䌝えたい意図はストレスの眮き方で倉わりたす。

 (2a)はyouにストレスを眮いた堎合で、(2b)はsaidにストレスを眮いた堎合です。

2) a. YOU said it.  「あなたでしょ」

 ã€€ b. You SAID it「その通り」

 

  (2a)は、詳しく蚀えばYou're the one who said it, right?「あなたでしょ、蚀ったのは」ずいうような意味になりたす。誰が蚀ったのかに焊点があるのでyouにストレスを眮くわけです。これは文字通りの「あなたがそう蚀った」ずいう意味に近いず蚀えたす。

  䞀方で(2b)はExactly what you said!「たさにあなたの蚀うずり」ずいうように「蚀ったこずが的確」ずいうこずを意味し、匷く同意するこずを䌝える意図で䜿いたす。I strongly agreeなどでも蚀い換えるこずができるように、文字通りの意味を離れお「それを構成する単語の意味からは掚枬できない堎合」ずいうこずになりたす。 䞀般的にはむデオムず蚀われるものです。単語の配列は同じでもストレスずいう文法手段によっお異なる意味を生むずいう蚀語倉化は、Sweetが口語を重芖したこずをよく衚しおいたす。

 

  リズムずむントネヌションず意味ずの関係に぀いおの論文の蚘述を玹介したす。

 

「抂略、䞋降調は陳述文疑問詞で始たる疑問文呜什文感嘆文などで甚いられ䞊昇調は yes か no を求める疑問文柔らかな芁請の気持ちなどを瀺す文などに甚いられる。䞋降䞊昇調√は蚀倖の意を含む平叙文いたわり芁請譊告に甚いられる。

 郚分吊定(3a)ず党吊定(3b)の区別も音調栞の違いによっお匕き起こされる。

3) a. √All cats don't like water. 䞋降䞊昇調が甚いられるこずが倚い

    b.  All cats don't likewater. 䞋降調

    遠藀 裕䞀 『英語の音声─リズムずむントネヌション─』2012

 

 All 
 notを含む(3a, b)の解釈は、それぞれ次のようになりたす。

(3a)「すべおの猫が氎を嫌うわけではない」(郚分吊定)

(3b)「猫はみんな氎を嫌うものだ」党䜓吊定

 

 受隓英語の圱響から、「All 
 notは郚分吊定」は芏則で、他の解釈法はないず思い蟌んでいる人は結構倚いず感じたす。Sweetが指摘しおいるように、文の意味はそれ自䜓では決たらず、蚀の意味を含む文脈などによっお倉わるこずはありえたす。

 同じ文字列の文を、䌝えたい意図によっおストレスやむントネヌションずいう文法手段を䜿っお衚珟するのです。文字通りの意味から掟生的な意味を生じるずいう蚀語倉化の芳点は「郚分吊定」ずいう文法事項のずらえ方のヒントになりたす。

 

 遠藀2012では、「䞋降䞊昇調√は蚀倖の意を含む平叙文」ずし、(3a)を郚分吊定で「䞋降䞊昇調が甚いられるこずが倚い」ず説明しおいたす。このこずから、いわゆる「郚分吊定」は文字通りの意味ではなく「蚀倖の意を含む」掟生的な甚法であるこずが分かりたす。All 
 notずいう衚珟を把握するには、文字通りの甚法ず掟生的な甚法を区別しお、個々に䜿われる文の解釈がどの甚法なのかずいうずらえかたをすればいいはずです。

 

 たず、論理的に考えたす。䞍定数量詞を倧雑把に分けるずall、some、noずずらえるこずができたす。allをnotで吊定するずき、文字通りの意味はallの吊定なので、単にallではないこずを意味したす。぀たり、all以倖のsomeかnoかは問わず、蚀語孊的にはsomeずnoのどちらの解釈もあり埗るわけです。このAll 
 notの文字通りの甚法をずりあえず単玔吊定ず呌ぶこずにしたす。そうするず、All 
 notは蚀語孊的(論理的)解釈ずしお、次の぀の甚法が考えられたす。

 

①  å˜çŽ”åŠå®šç”šæ³•ã€Œã™ã¹ãŠã§ã¯ãªã„ã€(someかnoかは問わない)

②  éƒšåˆ†åŠå®šç”šæ³•ã€Œã™ã¹ãŠãŒïœžãšã¯é™ã‚‰ãªã„ã€ïŒˆâ‰’some 該圓するものずしないもの

     ãŒã‚る

③  å…šäœ“吊定甚法「すべおではない」(no 該圓するものは党くないzero)

 

 では、順に各甚法を説明しおいきたす。

①  å˜çŽ”åŠå®šç”šæ³•ã¯all or not allずいうこずを焊点ずする文脈に適し、反語疑問などで䜿われたす。

 

4)a. Why not all options were considered in the decision-making

       process?

      (どうしお決定プロセスで党おの遞択肢が考慮されなかったのですか)

 

  b. Why not all members of the team were informed about the changes?

      (どうしおチヌムの党員がその倉曎に぀いお知らされなかったのですか)

 

  (4a)では「党おではない」ずいうこずを指摘しおいたす。䟋えば、ある事を実斜しお䞍具合が起きた時、぀の問題が芋぀かったずいう堎面です。このずき、指摘を受けた人が「それ以倖の遞択肢はすべお考慮したんだけど 」ず答えたずしたら、元の話し手は「いや、いく぀考慮したか党然考慮しなかったかは問題じゃない。すべおの遞択肢をもれなく考慮したかどうかの話をしおいるんだ」ずいう思いになるでしょう。「すべおではない」こずを意味し、someかnoかは問わないのです。

   (4b)も、発話者はチヌム党員に知らるこずに意味があるず蚀っおいたす。䞀人でも知らせおいなけらばnot allであり、䞀郚の人に知らせたsome members、誰にも知らせなかったno membersを問うわけではないのです。

 

 この文字通りの甚法は、䜿う堎面が限定的で意図が明確です。文字通りの意味は単玔吊定で、掟生的意味ずしお郚分吊定、党䜓吊定があり構造だけでは決たらないず柔軟に捉えるこずが倧切です。単玔吊定の甚䟋は埓来の孊参英文法曞などには取り䞊げられおいないのではないかずも思いたす。孊習者には、単玔吊定ずいう抂念に぀いお分かりやすい具䜓䟋を瀺すのもいいかもしれたせん。

 

 䟋えば、䌚話の話題にする人の足取りや日頃の行動から、その人が東京、名叀屋、倧阪のどこかにいるこずは分かっおいお、そのうちのどこかは特定できおいない堎合を想定したす。このずき「あい぀の居堎所は東京ではない」ずいうのは、所圚地ずしお東京を吊定しおるだけです。notによる吊定の基本はこの単玔吊定です。名叀屋にいるのか倧阪にいるのかは蚀及しおいたせん。名叀屋にいるか倧阪にいるかを明確にするには、他の手掛かり(情報)が必芁になりたす。

 

②  éƒšåˆ†åŠå®šç”šæ³•ã¯ã€ã€Œsome、いくらかは有りいくらかは無い」こずを意味したす。

   æŽŸç”Ÿçš„な甚法なので聞き手が文脈から郚分吊定ず掚定し解釈できるずきに䜿われた

   ã™ã€‚Allで始たる吊定文では、意味を正確に䌝える工倫ずしお、Allにストレスを眮き

   æ–‡æœ«ã‚’䞊昇調にするこずで郚分吊定甚ず分かるようにするこずもありたす。

 

5) a. All that glisters is not gold.――The Merchant of Venice

     ã€€(光っおいるものがすべお金だずは限らない)

 

    b, Not all the students passed the exam.

        (生埒党員が詊隓に合栌したわけではない)

 

 (5a)が郚分吊定に解されのは、この文の構造からではなく、他に手掛かりがあるからです。

  郚分吊定甚法をsomeず考えるず「光るものの䞭には光るものも光らないものもある」ずいう文意に解せたす。党䜓吊定甚法をnoず考えるず「光るものはみんな金ではない」ずいう意味に解せたす。このずき、シェむクスピアはどちらの意味で䜿ったのかを考えたす。

 この文は「倖芋で人を刀断しおはいけない」ずいう意味で䜿いたす。文脈からしお②の郚分吊定甚法ずしお䜿っおいるず刀断するのが劥圓ずいうこずです。(5)が郚分吊定甚法に解されるのは、文の構造によっおではなく「垞識」によっお劥圓だず蚀えるからです。

 (5b)のようにNot allの語から始たる文は、英語者の䜿甚実態を調査した論文では、ほが䞀臎しお郚分吊定甚法に解されおいるず報告されおいたす。これは論理的理由ずいうより、慣甚ずしお定着しおいるのでしょう。

 

   æ–‡æ³•史を研究するず、蚀語孊的な理由以倖に「芏範的芏則が普及したから」や「倧郚分の人が䜿うから」ずいう瀟䌚科孊的な理由で定着した文法事項は実際にあるこずが分かりたす。Sweetは、蚀語倉化では、特定の地域で誰かが解釈したこずが同䞖代に広がっおいくずいう珟象に぀いお述べおいたす。

 蚀語は自然科孊ではないので、すべお論理的に説明できるず考えるのは無理なこずです。十分な根拠が芋぀からない限り、無理に論理的な理由を付けるよりも、倉化に察応できるようずらえ方をしおおく方はいいず思いたす。

 

③  å…šäœ“吊定甚法は「no 党くない」を意味したす。掟生的な甚法なので、聞き手が

    文脈から党䜓吊定ず掚定し解釈できるずきに䜿われたす。

 

6) There was hardly anybody in the lobby any more. Even all the the

     whory-lookig blondes weren't around any more. ――J.D. Salinge, 

     (The Catcher in the Ryer)

  矢口 正巳『珟代英語におけるPartial Negation―英米小説等にあらわれた甚䟋を䞭心ずしお―』  

    (ロビヌにはほずんど誰も残っおいなかった。あのけばけばしい金髪の女たちさえ

    も、もういなかった。)

  この䞀節は、J.D. サリンゞャヌの小説『ラむ麊畑で぀かたえお』からのものです。䞻人公ホヌルデン・コヌルフィヌルドの芖点で、圌がニュヌペヌクのホテルのロビヌで感じた雰囲気を描写しおいる堎面です。この䞭のall 
 notは文脈から党郚吊定ずしお解釈した方が自然です。

 

  小説のようにストヌリヌがあるものは、蚀倖の手掛かりは倚いので掟生甚法のうちどちらかを特定しやすいず蚀えたす。これは吊定衚珟に限ったこずではありたせん。You said it.のような短い文でも意味は぀ではないのです。意味を決めるのは蚀倖の情報ずいうこずになりたす。

 Sweetは蚀葉は揺らぎがあるもので、䞀貫しお単語や文の意味は倉化するものであるこずを述べおいたす。

 

The meanings of words change because the meaning of a word is always more or less vague, and we are always extending or narrowing (generalizing or specializing) the meanings of the words we use — often quite unconsciously.

(513)

「蚀葉の意味が倉わるのは、蚀葉の意味が垞に倚かれ少なかれ曖昧であり、私たちは䜿う蚀葉の意味を垞に拡匵したり狭めたり䞀般化したり専門化したりしおいるからだ — しばしば無意識のうちに。」

 

 䞀方で、珟代英語本来の蚀葉が䌝わる仕組みの倉化は個々の衚珟の移り倉わりず比べお緩慢です。本来の蚀葉が䌝わる仕組みずは(a)語順あるいは配眮、(c)機胜語の利甚ずいう文法手段のこずです。この仕組みは1500幎ごろに成立しお以来、500幎以䞊倉わっおいたせん。

 䟋えば、蚀語名は䞀般的には䞍可算です。英語はEnglishず衚珟したす。しかし、近幎では人々の䟡倀芳が倉わり英語は1぀じゃないず倚様性をみずめるようになりたす。そうするずそれたでになかったEnglishesずいう耇数の衚珟が珟れたす。

 蚀葉は、人のむメヌゞを衚珟するもので、生きおいるのです。単語の甚法は時代ずずもに倉化しおいたす。これに察しお、(a)語順あるいは配眮、(c)機胜語の利甚ずいう蚀葉が䌝わる仕組みは簡単には倉わっおはいかないのです。倉化する珟象をずらえるには、論理的に倉わらない枠組みを基瀎にしお、個々の珟象を䜍眮付けおいくずいう手はあるでしょう。

 

 Sweetが指摘した「時にはそれを構成する単語の意味からは掚枬できないほど倉化する堎合もある」をに基づけば、蚀語倉化の圚り方ずしお、文字通りの甚法から掟生する甚法があるず蚀えたす。この倉化を枠組みずしお、それぞれの甚法を䜍眮付ければ、芏範ず慣甚を䜓系的に芋枡せたす。

 not 
 allで䜿った枠組みは、not 
 bothに暪展開しお、その甚法を䜓系的に捉えるこずができたす。

 

【not 
 both】

both(぀ずも可)の吊定には、①単玔吊定「䞡方(同時)は䞍可」、②郚分吊定「䞀方は䞍可」either、③党䜓吊定「䞡方ずも䞍可」neitherの぀の甚法がありえる。

①単玔吊定甚法 

"I didn't pass the test because I wasn't holding the steering wheel with both hands."

 (私は䞡手でハンドルを掎んでいなかったので、詊隓には通らなかった)

 

 この甚䟋では、䞡手ではない(単玔吊定)を意味し、片手だけ掎たない(郚分吊定)、䞡手ずも掎たない(党䜓吊定)かは䞍問である。

 

[æ•°å­Š] not both equal to zero は「䞡方同時に0ではない少なくずも䞀方はではない」の意味で甚いられる。

䟋The condition a²b²≠0 is true when a and b are not both 0 at the same time. (a²b²≠0は、aずbの倀が䞡方同時に0ではないずきに成り立぀) このずき、not both 0は「ab0ではない」(単玔吊定)を意味する。a, bのどちらかがではない(郚分吊定)、a, bがずもに0ではない(党䜓吊定)の堎合はどちらも等匏が成り立぀ので含意しない。

 

 ②郚分吊定甚法ず③党䜓吊定甚法は掟生甚法なので、語倖の情報を含む情報や、慣甚によっお解釈する   

             以䞋省略

 

  ずいうような具合にそれぞれの甚法を䜓系的に䜍眮づけお瀺したす。このように捉えおいれば、生きた衚珟に接したずきにそれを䜓系の䞭に取り蟌めたす。  それぞれの甚法の扱いは、時代や階局によっお異なるので、泚釈に入れお倉化すれば情報曎新すればいいずいうこずになりたす。

 

 bothの吊定の甚法は、今珟圚で蚀えば、英米の芏範は①単玔吊定だけを正甚ずしお認めおいたす。②郚分吊定甚法、③党吊定甚法は文脈により倉わり、慣甚ずしおも定着しおいたせん。 

 語感や解釈には地域などによっおばら぀きがありたすが、英語話者 の間では実際にはどちらの甚法も䜿われおいたす。

 not bothの解釈に぀いお、アメリカ、むギリス、カナダ、オヌストラリア、ニュヌゞヌランドの英語を母囜語ずするカ囜で、質問圢匏の筆蚘によるアンケヌトず聞き取り実地調査の結果を玹介しおおきたす。

 

  宮畑 カレン『英語甚法における郚分吊定の問題III』

 I don't eat both fish and meat. に぀いお、(a)Partial郚分吊定甚法、(b)Total党䜓吊定甚法、(c)Both郚分/党䜓䞡甚法のそれぞれの解釈は英語ネむティブの間でもばら぀いおいたす。USAでは(a)人(b)16人(c)人ず党䜓吊定ず解釈する人が倚く、New Zealandでは(a)10人(b)人(c)3人ず郚分吊定甚法に解釈する人が倚いなど地域差も芋られたす。珟状は、文脈次第で解釈が倉わるずいうこずです。

 

 和補の英文法は、英米の芏範ずも実甚ずも異なり、斎藀秀䞉郎の瀺したnot bothsomeが受隓英語ずしお残っおいたす。日本独自のルヌルですが受隓英語界隈では結構広たっおいるので①③の甚法の぀ずしお抌さえおおけば受隓には察応できたす。

 その珟状が分かる論文の蚘述を匕甚しおおきたす。

「わが囜では、吊定が特にall、both、everyなどの代名詞、圢容詞、あるいはalways、quite等々の副詞を䌎っおいる堎合を、郚分吊定ずよび、nothing、none、not  at allなどの語句を䌎っおいる堎合を党吊定ずよんでいる。 この方面の研究では、なお珟代の英米の小説等にあらわれおいる䜿甚䟋に぀いお芋るず、埓来の文法家の諞説ではただ尜くされおいない点がある。

 䞻なものを挙げるず、次のようになる。

 

 (1) all, every, whole, both, each. (2) always, necassarily, exactly. (3) quite, altogether, entiely, completely, perfectly, utterly, awfully, fully, thoroughly, wholly, absolutely, (4) particularly, specially. (5) very, too, greatly

 

 notabsolutelyが党吊定を意味する堎合も少なくないようである。

 But he has something he does. I mean he doesn't absolutely beg his bread from door to door. (A. Powell)

矢口 正巳『珟代英語におけるPartial Negation―英米小説等にあらわれた甚䟋を䞭

    心ずしお―』

 (でも圌にはやるこずがあるんだ。぀たり、圌は決しお家々を回っお物乞いをしおいるわけではないんだ。)

 

  いわゆる郚分吊定は100幎以䞊前のわが囜独自の芋解が今日たでたいしお怜蚌もされないたた䞀般に䌝わっおいるのが珟状です。研究が進み䞀般に成果が反映されるのはこれからでしょう。

 

 以䞊のように、蚀語倉化に察応しながら、芏範や慣甚あるいは詊隓に察応する孊習文法は構築可胜だず思いたす。

 ポむントは、䞀芋論理的に芋える説明その堎限りの説明は避け、基本的枠組みは䞀貫した原理で倚くの珟象を䜓系的に説明できるものを採甚するこず。今回の䟋では同じ配列の文でも文字通りの甚法ず掟生甚法がありえるずいう蚀語倉化に察応した原理を採甚するこずです。

 たた、無理に぀の正し答えを求めようずしないこず。芏範文法の芏則は正甚ずしお安定するこずをよしずするので぀の答えを瀺す傟向がありたす。慣甚は倉化するものなので珟状の甚法がずっず同じずは限りたせん。芏範も慣甚の倉化しおいくものです。芏範ず慣甚は珟時点の瀟䌚的な䜍眮づけず䜿甚実態をおさえお、郜床情報を曎新すればいいのです。

 最埌に蚀語珟象の説明をするずきに蚀語孊的な理由ず瀟䌚科孊的な理由を分けるこず。個々の文法事項を粟査しおいくず、この぀を混同しおいるこずが本圓によくありたす。蚀語孊的な理由の根本はSweetが瀺した文法手段に基づいおいるかどうかを基瀎ずすればそうぶれるkずは無いでしょう。

 

 今回改めおSweetの文法曞を読み返しお、新たに埗た知芋もあり、ずおも勉匷になりたした。この蚘事は個人的な解釈をしおいるだけなので、興味があれば原曞を読むずいいず思いたす。面癜いこずがいっぱい曞いおありたすから。