2519 :SMD ED8 マイクロトランス実用化物語 | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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管理人Shinは知財保護において個人による「特許」のようなものを好まず、「全公開」を旨とします。(巻末詳細)

 

 

 

SMD ED8 マイクロトランス実用化物語 

前列中央が「SMD ED8 5P」マイクロトランスです。

 


はじめに

 

最近ではなんと「高級オーディオトランス」の仲間入りしたこのトランス。(楽天、AMAZON)

 

それはこのブログでMEMSマイクと同時に「ぶっちぎり優れたマイクロトランス」として実用開発を続けてきたことが大きく反映した結果だと信じています。

 

 

 

 

しかし、いくらなんでもこの値段は凄いが、逆にいえばこのトランスの性能実態が良くわかる日本のパーツ屋的値付けだと思います。

 

 

 

この話は 約3年前にさかのぼります。

ノイズ耐力(EMC)問題で「電子バランス」=(半導体平衡回路方式)の限界に苦しんでいた時、その先にあるのは「トランス」にほかなりません。

マイクロホンの名機も最終的には「トランス式」に行き着くことは歴史的な事実ですが「コストの問題などから、できるところまで電子バランスで頑張る」というのがマイクメーカー各社の姿勢、これは私のProbe シリーズ」でも同様です。

 

 

 

「電子バランス式」か、「トランス式」か、それはホール録音家にとっては日常的に悩む選択であります。

しかし最終的にトランス式の録音に軍配が上がるのが常となっています。

 

ちょうどそのころMEMS型マイクによるホール録音の一部で原因不明のノイズ混入が報告され、やっぱりかと半導体電子バランス方式限界を感じていた。その対策法のこと、そして「MEMS単一指向性」の進捗のことで頭がいっぱいでした。

 

 

 

ProbeⅡタイプのマイクロホンは大きさの制約がキツい中どうしたらトランス式にできるか、しかし音質劣化など一切許されない、それは必須最低条件である。

 

 

 


 

 

 

  MEMS型マイクのトランス出力化へ

 

理想的な「トランスアイソレーション」、もしそれが実現できれば、もともと -30dB台のMEMSマイクですから、増幅回路そのものがいらないのではないか、そう思いながら取り組み始めた。

 

しかしその可否はトランスの大きさとクオリティ次第だ。

 

テストに使ったトランスはタムラ、サンスイ、AKG C-451のリペアトランス、中国製の不明品でテストを始め、タムラ、AKG C-451E/B純正(ルンダール製ではないかと言われているが確証はない)の良さにはその可能性を見たがXLRコネクタに入れるにはデカすぎ、ビンテージ部品のため入手の問題がある。

 

 

居並ぶトランス、はてさて、どうしたものか・・・・・

 

 

 

 

キラキラそんなある日!

 

 

 

 

 

  SMD ED8トランスとの出会いと実用開発

これは運命的な出会いだ。

 

 

「SMD ED8」トランス 5Pin     当時は5個400円台だった。

 

 

2022年末、Aliexprssで「これがトランスか」と思うほど小さく、頼りない外観のトランスを初めて目にした。

 

 

それは100円前後で売られているのだが、内容が怪しく「600Ω:600Ω/1:1「ニッケル鉄/デジタル变压器」/巻線/」などと書かれており、5個480円という激安だった。

 

 

 

 

「どうせロクなものじゃなかろう」とは思いつつ、しかし「ニッケル鉄/デジタル变压器」とあるのを「パーマロイコア・トランス」と読み取れば、大化けするお宝かもしれない、という期待があった。

 

もちろん「オーディオ用」とも「マイク用」とも書かれていないし、あてにならない200-20000Hzと書かれた怪しい謎のトランスでしかない。

 


(上図の巻線「6の同相マーク」は誤り) 正:3・4

 

 

 

赤いEIコアトランスと同時に興味深々と・・・到着を待った。

 

届いた「ニッケル鉄变压器」は黒いテープリール仕様のSMDパーツそのもので、トランスとしてはウソのようなそのサイズに驚き、「マイクロトランス」と勝手に命名した。

 

 

海の物やら山のものやら、正体不明のトランスはMEMSマイクICS40730でテストして仰天した。

 

ProbeⅡと並べてテストしても「エッ」と思うほど、ProbeⅡと変わらない音質、ワイドレンジかつ高品位である。

怒涛たる密度の音に包まれ、驚きながらも嬉しくてじっとトランスを見つめた。

FETもバイポーラTRも使わないトランスのみの回路で・・・

 

これで「出来た!」とつぶやいたのはいうまでもありません。

 

 

 

 

次は同時に送られてきたEIコアトランスの方です。

やはりそう、あのイヤな響きを伴った fレンジの狭い、独特な100円サウンドそのものだ。

サンスイ(橋本電気)と同じ音。ナローなページング用ならかえって良いかもしれないが、遠慮したい音だ。

 

ICS-40730使用のバラック試作。両者の音の差は語ることすらバカバカしいほどの差。

 


 

 

 

 

マイクロトランスのf特を簡易測定した。

 

スペックでは200Hz~20000Hzとあるが、とんでもないです。

 

CTのある一次側から信号を入れ、二次側のレベルを監視した。

20Hz以下からゆっくりスイープして偏差を見ながら追従していくと±約1dB程度こまかく上下に振れながら20KHzはすでに超えた。40K、60Kとどんどん進んでいくが様子に変化はない。ついに100KHzまで±約1dBで届いてしまった。

筆者の測定限界につきここまででSTOPしたがこの先もかなり伸びるだろう。

 

 

ここが中華製パーツ、玉石混交のおもしろいところは、売主の公表文言やスペックもデータも絶対に信じてはいけないところにある。

 

 

品質管理、品質保証は自分自身がおこなうことで、「信頼性のある電子部品」に化けるのです。

 

 

 

 

マイクロトランス発見、その後

 

 

 

注意したいのは二次側:82Ω程度であるべきものが、150Ω品のテープリールが送られてくることがある。(返品はできる)

出力インピーダンスが変わるだけだが、このあたりの管理は大陸的につき、確かめながら使うのがハッピーではないだろうか。

しかし同一品のなかでは巻線抵抗値など、精度は高くバラツキを考える必要はなさそうである。

 

現在では、高級スペックらしきものや600Ω:300Ωの更にサイズの小さいものまである。

 

 

 

 

 

マイクロトランス式はこうして実用化した

 

(2023年の記事)

2303 :マイクロ・トランス採用ファンタム式MEMSマイク (第1編)

 

2304 :マイクロ・トランス採用ファンタム式MEMSマイク (第2編)

 

2305   :「Probe-T」の完成(マイクロトランス式MEMSマイク第3編 )

 

 

 

 

 

 

 TODAY'S
 
MEMS型マイクに新しい選択「トランスバランス」方式

「音の第一印象」が良いマイクは絶対に期待をはずさない、という法則がある。このマイクロトランス式はまさにそれにあたる。

 

 

2023年登場したトランス式Probe-T

 

 

 

 

 

2023年〇月〇日、従来ならProbeⅡinf Lzで対応する吊りの現場だ。

 

トランスだけで構成された1号機Probe-Tの第一報は、「ホール音響」の現場から届いた。

 

「静かだ」、「とにかく静かだ」これは最大の賛辞と受け取った。

オーケストラ録音をはじめ、他ジャンルの音源でも能力は「ヨーロッパ最高峰マイク同等かそれ以上」という追伸評価をいただいた。ほどなく1本100数十万円のノイマンは衛星部から無慈悲にも降ろされてProbe-T交代した。

 

 

Probe-T がここまでくると、「SMD ED8」マイクロトランスは単なる「激安トランス」ではない。

好むと好まざるとにかかわらず、「世界に冠たる」高品位トランスとしての役割を演ずるようになったのです。

 

 

こんな極小トランスでありながらタムラはおろか、マジでルンダールハウフェピカトロンなどヨーロッパの一級品に一歩もひけをとらないその音は、パーツ屋の100円、150円のトランスとは次元の異なる世界を作り出す驚愕の実績を獲得したのです。

 

 

これは、MEMSでもECMでもそのまま使えるため、ご自作された上、SANKEN COS11での「空気録音」されたかたの優れた例がYOUTUBEに見られますのでお確かめください。

 

 

Probe-Tの性能をさらに磨いた絶品 Probe-T inf

極めて繊細でありながらfff でも圧倒的な表現力。

 

 

 

 

先月、東北地方でこのマイクを使用した現場ではホール関係者、放送関係者が驚嘆していたという報告が届いています。

 

 

(回路図)

 

 

 

(基板構成部)

抵抗は1/8Wサイズの1/4W金皮、マイカ粉ベースのオーディオ用ケミコン エルナーR3A使用。

 

 

 

「未知の世界を開く」なんてカッコいい言葉はいらない、必要に迫絵られて、誰もやらないからこそ好んでやっているだけです。

 

そして新雪を踏んで一歩でも進めば、見たこともない世界に立っていることに気づかされます。

 

 

しかし半信半疑常識人には通用しないのかもしれない。

これに疑いを持つかたは「位相特性に疑問がある・・・」「ヒステリシスカーブから見たひずみ率への疑問」などという「半疑」、それはいつか「全疑」となって切り捨てれば、結果も居場所も天と地の差ほど異なることに気づくことでしょう。いや気づかないかもしれない。

 

人が「イイ」ということはまずやってみることです。

次へ進みますので、お先に・・・

 

 

 

 

 

  電子回路をツツきまわすよりも

 

最近ShinさんのMEMS型マイクでお気づきになることがあると思います。

それはFETもバイポーラTRも使わない方式が増えてきたことです。

 

皆さまそれぞれが設計されているマイクロホン自作の苦労話の中で、「回路デバイスも回路も見直して低ひずみ、低ノイズを突き詰めた増幅器を追求して行けば理想的なマイクが出来る」という、とんでもない誤報の発信者とそれに釣られるかたが少なからず発生しています。

 

マイクロホンは機械と電気の合体物、そのノウハウは楽器のそれに似ています。

音楽との両輪で成り立っているマイクロホンに対し「測定結果こそがすべて」という、勘違いもはなはだしく遠い昔経験したことのある古い考え方が再登場してくると「マイクなんかやめてAMPの世界に戻るべき」と真にそう思います。

 

この考え方、物理特性優先の悪名高い「BTS規格」=放送技術規格(1948年~2001年)はかつて国産マイクを支配し、海外の音楽・音響関係者からは「日本製マイクは音はとれても音楽はとれない」と嘲笑されてきた。

それらの矛盾と世界からの孤立により「BTS規格」は2001年廃止された。

しかしそれを今また繰り返している・・・

 

 

「マイクロホン」を勘違いしている例が多い、といつも思います。

「極限までのローノイズ」、「ひずみ率0.0・・・」と、測定器を相手に畳の上で水泳練習しても水の上では絶対に泳げません。

そもそも「マイクロホン」をまったく学んでいないので「単一指向性」となったら手も足も出ないのがこの手のかたの特徴です。

 

 

そもそも「マイクカプセルやMEMSマイク」はその「優秀AMP」の入力ソースの1つとして考えているのではないか?、そんなはなはだしい勘違いは残念に思います。

 

 

 

 

MEMSマイクでは発想を変えろ

 

マイク感度が-60dB,-70dBならともかく、MEMSマイクはOPアンプ出力形式の音響変換器、その出力は-30dB台です。

 

デバイスの出力インピーダンスも180 Ω~250Ωと、しかもバランス送りならそのまま延伸してもかなりいける、しかもシールド線ナシで。

 

ハムフェア2025にて

 

 

 

 

「増幅回路なんて最初からいらない」

と割り切ればいいのです。

 

 

実用マイクには「延伸特性」「耐ノイズ性」が切っても切れない課題であるが、Probe-T 」「Probe-T inf どちらもです。

 

 

マジでこんなクレイジーないじわるテストに耐えられるのです。

いや、耐えられなければいけないのです。

それは「比直線部分」をそぎ落とし、EMC強化した結果です。

 

「優秀な回路」ならさらに鉄壁なんでしょうね。

 

 

 

 

 

マイク自作ファンへ

トランス式MEMS型マイクは、マイク自作者には圧倒的に敷居が低く、結果は素晴らしいので絶対におすすめです。

TRもFETもなんにもないけど、これ以上何が必要でしょうか。

 

そうそう、肝心なことがあります。

「音穴」を音源に向けることだけは厳禁です。

それは、あなたが正常な聴覚をお持ちであれば5秒でわかる「MEMSマイク実用化」の鉄則です。

 

 

 

 

 

 

大出力AMラジオ局で学んだ事

 

またこの年、某最大手民放ラジオ局の技術現場を見せていただく機会があった。送信所では見上げる巨大なアンテナや100KW級の送信設備はもちろん、直径20cmに及ぶ同軸ケーブルも圧巻であった。

直下のフェンスからは放送音が小さく聞こえ、ケーブルラックは銅板張りのピカピカが遥か向こうまで続く。

数ある引き込み口は大型アレスター(避雷器=スパークギャップ)で徹底的に雷害停波を防いでいる。

 

ロケバスで都内のスタジオに移動、機材倉庫の一角に見慣れない無骨な黒いカタマリの一群を発見した。「重みで棚が壊れる」とかで、床置きされた無骨なカタマリがゴロゴロと・・・

とても一人では持ち上がらいそれらに、「トランスは神様さ、どんなに重くともコレなしに放送は成り立ちません」と言い切った。

(これはNHK技術者でも同様)

 

今まさに放送技術のプロ中のプロから放たれたこの一言は、私にとって「金言」として大きな自信につながった

 

イチカバチカの収音と100%安全な収音との違いなので、どちらを選んでもいいが、結果だけはあなたの責任となります。

 

          以上

 

 

 

 

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虹 おしらせ

MEMSマイク使用、話題のProbeⅡ Probe-T  Probe-T inf  L-730mems など、読者のみなさまからのご注文により優秀機種の手づくり製作・領布を承っておりますのでお問い合わせください

またFetⅡなど純正WM-61Aのファンタム式パナ改マイクも継続中です。

 

モノ作り日本もっと気出せ 

 

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