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※管理人Shinは知財保護において個人による「特許」のようなものを好まず、「全公開」を旨とします。(巻末詳細)
”オフマイク適正” MEMS単一指向性マイク実現の最大課題は
「既存の単一指向性マイク設計のノウハウ」では実現にはほど遠いことでした。
オフマイク適正のMEMS型単一指向性マイク
「Probe-T」「Probe-T inf」の高音質そのままで実現
「Probe-T u1」 MEMS単一指向性マイク
指向性切替機構を含めた全体像
方式:Dual Mems 仮想傾度型単一指向性コンデンサマイク
(見慣れない位置にある速度穴はこのマイクの特徴です)
こちらから試聴できます You can listen to it here
♪音源2個 (「今すぐ再生」でダウンロード不要)
Probe-T u1 Heavily trafficked road.wav (通行量のはげしい道路)
Probe-T u1 JR Akihabara Station platform.wav (JR秋葉原駅ホーム)
指向特性 Polar Pattern
祈るように測定した指向特性はご覧の通りです。at.1KHz,
(指向パターンは大きく周波数依存します)
指向性試験
指向性切替シャッタースリーブ
速度穴は4つ。シャッタースリーブにより指向性可変可能。
①シャッタースリーブなし:「ワイドカーディオイド」
②穴1個:「ハイパーカーディオイド」
③穴1/3個:一般的な「単一指向性}(微調整可能)
マイク先端から16mm付近、90度~120度で2本交差させれば良質な「X-Y」ステレオマイクになります。
「MEMS型単一指向性マイク」は無指向性型の延長技術にあらず。
「無指向性MEMSが良かったから今度は単一指向性だ」という単純な想いでは決してたどり着けないノウハウが、指向性マイクには山のようににある。
指向性生成については、記事:2502で相当つっこんでいます。
こうした積み重ねを前提に「MEMS単一指向性 v05」と言えます。
ササッと「完成」など夢の夢、多くのことは手さぐりで、未踏の地を1人で歩く覚悟が必須です。
理屈では絶対にモノにならない「マイクロホン技術の職人領域」をあきらめず進む強い意志はあるか、それが明暗を分けます。
とにかく「音を聴く」ことに尽きます
音を聴きながら作り込んでいく
まず、基準とする既存のコンデンサマイクが必ず必要です。(リファレンスマイク)
それがない場合、「無指向性」ではなんとかなっても、「単一指向性マイク」ではメチャクチャなものになるでしょう。
それほどにMEMS型単一指向性マイクの難しさは筆舌に尽くしがたい高いハードルがある。
それは同様の実験・試作をおこなわない限り経験できませんが、
「単一指向性」はECMや大口径ダイアフラムで経験されたとしても、そのノウハウではMEMSマイクには通じませんし、とても手に負えません。
MEMSマイクに対し半信半疑の状態ではNG、まずは卓越した「無指向性MEMSマイク」を経験し、そのクセを十分身につけてからです。
(MEMS型単一指向性を実現させる各種方式)
①2つの無指向性MEMSマイクで「仮想音圧傾度」型を構成する
②双指向性MEMSマイク(soundskrit社 SKR0600)等の背面空気質量の流入制御(イナータンス制御)
③無指向性MEMSマイクのトップカバーをはずし、双指向性化し②同様のプロセスで。
④2つの双指向性MEMSの物理位置による合成パターンを利用する。
「できなければやめる」選択肢も正しい
なぜならば、そこは無限地獄だからです。
MEMS単一には「回路の理想」をきわめても何の意味もありません。
覚悟と経験と想像力、そしてマイク独特の理論が無限に求められ続けます。
できなければ「やめる」は正しい選択です。
なぜならば、単体の「MEMS型単一指向性マイク」はこのサイト発表以外、業務実用をめざす例はまだ世界のどこにも存在しないからです。
オフマイク適正のむずかしさ
指向性マイク特有の「近接効果」に頼らない低域獲得の難しさ。
存在しないエネルギーはイコライザーでも出てこない。
そもそも「低域はどこまで出すか」そして「音源との距離関係」はMEMS型単一指向性の基本課題として悩みどころです。
たまたま完成しても、ほとんどの場合20cmも離れれば音はすっかりヤセて消えかかり、「Vo専用」または「クリップオンマイク」までがこれまでのMEMS型単一指向性マイクの能力でした。
なんとかして無指向性MEMS同様にホール3点吊り衛星部に乘らないか・・・
オフマイクでパフォーマンスを示す優秀マイクができないか・・・
波長、質量、管内共鳴、音響抵抗、音質、遮光、ボイス試験、明珍火箸試験、騒音評価etcと、チューニングに明け暮れた。
そしてたった1つの推測が状況を一変した。
それは「MEMSマイク」振動系の質量が人の鼓膜の1/10以下しかないこと。イナータンスとしてのそれは「速度穴」の状況を劇的に変えて答えを出してくれたのです。
「チューニング」がすべてでした。
衝撃異音をいかにかわすか
あきらめない「想い」と持続力に頼るのみです。
「衝撃異音」が出なくなるまで取り組む。
なぜならば、それはマイクの各ファクターの組み合わさり、絡み合ったファクターだからです。
成功するまで続ければ失敗など存在しない。
「単一指向性」どんな方法で実現させたか
下写真のどの段階でも必ず音を聴きながら進める。
しばらく使用を控えていたICS-40730は音響用黒色ヒメロン(HN606B)による音穴の遮光処理によって光環境にきわめて弱かったこのMEMSマイクを「光ノイズ不感型」にバージョンアップして使用した。
(MEMSマイク実装方向について)
筆者のMEMSマイクの音穴方向(縦90度実装)に違和感を感ずるかたも居られましょう、それは当然です。
そのMEMSマイクを設計製造したメーカーは「穴を音源に向けた」設計をしていますし、測定データやスペックもしかりです。
しかしながら、筆者が初めてMEMSに出会って音を聴いた瞬間からそのスカスカした違和感に疑問を持ちました。
あちこち向けてテストする中で縦90度方向の音に自然感・力感を感じました。その後この経験を経て、確実にこの方向が「正方向」であるという事を確証しました。
また、わずかながら実在するメーカー製MEMS単体マイク製品の例では国内外すべてがこのサイト同様に「縦90度実装」であり、アマチュアの方の自作以外では音穴を音源に向ける例は見当たりません。
メーカーでもおそらく、私が経験した事と同じ理由で方向決定されていると思います。
イタリア IKマルチメディア社の例(MEMSマイクの位置、方向を拡大強調しています)
肝心なのは、筆者の私は「初歩的なマイク構造」を云々しているわけではなく、「マイクロホンのその先」を追求しています。
いままで「穴」を音源に向けていたMEMS自作者の空気録音やクラシック録音のベテランも、口をそろえて語るのは穴方向音の「引っ込み感、ひ弱さ、量感のなさ」を指摘し、さらに改良を進めるかたは、のちに必ず縦90度実装に落ち着きます。
また、既にかなり録音現場に行きわたっている「Probe型MEMSマイク」は全て「縦90度実装」です。
それは、 B&K(DPA)、NEUMANN、SENNHEISER、 EARTHWORKSといった列強を相手に同等または勝ち進んでいる事実に目を見開いてください。
この一連の事実から「突飛な方法」だと思われても、「縦90度実装」はこのように第一線エンジニアたちの評価と実績をもってこの能力が証明されているのです。
ここまでくると、半導体センサー・ジャンルである「MEMSマイクメーカー」の「設計者」は私たち「音響人」とは異なった目標と音響哲学を持って音に向かっているとしか考えられません。
やはり「サウンドセンサー」としての「MEMSマイク」と「マイクロホン」の違いは明確にありました。
★ 「常識」とは思考停止へのブレーキにすぎなかった。
音を聴き続けながら完成度を上げていく
・室内騒音
・マイボイスリアルタイムモニター(オンマイク・オフマイク)
・明珍火箸(衝撃音ひずみ・余韻)
・さんしん演奏音(アタックひずみ・余韻)
・指向性テスト
・PAテスト(ハウリングマージン)
・屋外録音テスト
成功するまでやめない。(これが最も大切です)
!d=33mm(1kHzの1/10λ) に調整した瞬間、モニタ音は激変、脳内に「ガツン」と衝撃が走り、すべての音はベールが剥がされた。
その音は
・明珍火箸のアタック音も余韻も澄んでいる。
・さんしんもアタック「異音」が消え、突き抜けた。余韻も綺麗。
・駐車場のアイドリングエンジン音(40Hz以下)が聴こえている。
・マイボイス・リアルタイムモニターによるトーク音はオフ領域まで綺麗。
・MEMSマイク特有の20KHz付近にあった鋭いピークは影もカタチもない。
かくして「近接効果」の少ない単一指向性マイクとなった。
回路図
カップリングコンデンサがない?
ひねくりまわした「低ノイズ、低ひずみAMP」も風流だが、これは「中出力レベルマイクロホン」元々AMPそのものがいらないはず、SMD ED8というトランスの音は折り紙付き、格別です。
後日
再度見直し、MEMS~トランス間にマイカベースの音響用ケミコン(R3A)を追加してトランス巻線へのDCカットと2個のMEMS-OUT間のDCループを絶った。これは2つのMEMSとトランス間のどこか1か所に入ればいいわけですが、フロントMEMS側がよい。
もともとは2個のケミコン使いでしたが、チューニングの中で上記回路に至りましたが、どうしても気になるポイントでした。
本当はBPタイプがいいのですが、いまどき好ましいBPケミコンはほぼ入手不可、収納サイズの問題もあり、割り切りました。
サンプル録音の例よりさらに「グイッ」と低域が伸びました。
MEMS型単一指向性特有の指向性生成
振動系が非常に小さい(質量がケタ違いに小さい)ので僅かなイナータンスの変化でも指向性は激変します、このあたりがMEMS型単一指向性マイクのクリチカルかつ難しい点なのかもしれません。
速度穴はφ7ステンレスパイプにキズなくφ1.5の穴4個をあけるのは途方もなく難しく丁寧に時間をかけた。ボール盤はない、パイプがつぶれてしまうのでセンターポンチは使えない。
さればミニルーターでと、0.5mmで開け、広げていった。
回転する0.5mmドリル刃が時々指を突き刺す痛みは格別でした。
その激痛と完成の喜びを秤にかければ、血まみれでも当然ステンレスパイプを掴んでいました。
結果から考えればそれ以外になく、よかったと思います。
ステンレスですから硬いですが、多少のズリ傷はペーパーでヘアラインを付けるだけで綺麗に消えてくれます。
穴4個の場合と、穴1個、そしてそれを2/3ふさいだ場合とでこれほどの指向パターンの差が出るとは思いもよらぬ事実。
当然、一般コンデンサマイクや他形式のマイク同様に「開けておけば良い」とルーズな感覚で速度穴に臨んでいたらここにたどりつくことは絶対になかったでしょう。
同様に、ピュアな「Cardioide」=(心臓型パターン)を得るにはMEMSマイクではハンパなくクリチカルであること。
そのキモは「振動系の質量」にあるのでしょう。
とにもかくにもはじめてたどり着いたのは、いままで経験したことのない「オフマイク適正」のMEMS型単一指向性マイクです。
遠方音でも低域落ちがなく、近接効果による30cm未満の低域盛り上がりも少ない、その性質はEVのRE-20など一部のダイナミックマイク(バリアブルD)で見られる「音響位相管方式」に似ている。
せっかくなので「指向性切替シャッタースリーブ」を外付け追加して、「カーディオイド」、「ハイパーカーディオイド」、「ワイドカーディオイド」の切替を可能にしました。
さらに、マイク2本を交差させると、ごく自然で良質な「X-Yステレオマイク」になることを確認しました。
今回の録音で良く分かったのは、フィールド録音において無指向性と単一指向性とでは捉え方がかなり異なります。その選択は、目的次第となるでしょう。
以上
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