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2024年1月追記
「ファンタム式パナ改マイクロホンの誕生と進化」
【1.プロローグ】
うわさのfet-Ⅱ そして人気のfet3 (旧measurement-fetⅡ)
写真左はウィンドスクリーンとタイピンクリップをつけたfetⅡ の外観を加えた。
写真右はケーブルを付けた fet3
(旧measurement-fetⅡ)
どちらのマイクも唖然とするイイ音です。
(ご注意)非業務用のマイクアンプやオーディオI/F、格安卓など低品質のファンタム環境での動作は保障できません。
【2.あの「パナ改」をファンタム動作の優秀なマイクに変身させる】
1年前パナソニックのECMカプセルWM-61Aを使った「パナ改マイク」の可能性を探っているうちに、あの邪魔な電池箱から開放してこれを「ファンタム動作」の「業務用途」として転用出来たら何と素晴らしいことか、という夢が膨らんでいった。
WM-61A データシート(海外向けには20~20,000HZのf特に書き換わっている)
いわゆる「パナ改」の有名な2線式カプセル改造(プラスアース)
※このカプセル改造には、カプセルケース(シェル)のアルミ板金の一部を剥いてアースパターンを無理矢理露出させて半田付けをし易くする方もおられますが、振動系にまでダメージを与えてしまう可能性がありますのでShinは絶対お奨めしません。
半田付けの熱でもECMをダメにしますので3線式の方が優れています。
「ファンタム式パナ改」用の改造(3線式にしてマイナスアースを可能にする)
幅約0.2mmほどのGNDパターンに半田付けさえ出来れば、2液エポキシ接着剤で強力に固定出来るので半田付けワザ頼りにするほうがダメージ回避もでき、正攻法でしょう。
この3線式改造の最大特徴・・・半田付けの熱でECMカプセルを劣化させる事なく改造できる事。
こつはD・S電極は最初から乗っている半田だけでリード線(予備半田あり)を短時間(1秒)で半田付けする。
GND側にムリヤリシールド線を付けようとせず、とりあえず一瞬(1秒)でリード線を半田付けして、そこから先をシールド線に短く接続すればよい。
リード線
みなさんの作られた現物を拝見すると、どれもこれも「太い!」。手に入りうる最細の撚り線をここの配線用に取り寄せる価値さえある(Shinはマルツ電波にある最も細い撚り線・・・7芯)です、単線は鳴きが出ますので使用禁止。
半田箇所はエポキシ固定。
リード線はShinの場合 S=黄 D=赤 GND=黒 にしてあります。
「一般パナ改」では、このD(ドレイン)~GND間をショートしますが、ファンタム式パナ改ではそれぞれの電極を単独に使用する「三線式接続」となる点が異なります(3線式にすると接続パターンの自由度も増します)
一般パナ改では+(プラス)接地でありますが、ファンタム式(Shinさん提唱)では-(マイナス)接地で使用します。
WM-61A この優れたカプセルのソースフォロワ動作=「パナ改」は完全に業務用マイクとして優秀なポテンシャルを持つと判断した。
また、ファンタム電源・ソースフォロワへのパスポートを手に入れる為、電池BOXと決別できる3線式改造とした。
そしてコンシュマー用従来型パナ改マイクとは距離をおき、文化圏を変えた別進化をさせることとした。
最大課題はファンタム電源動作による小電流の優れた不平衡/平衡変換回路とECMへの電源供給をいかにスムーズかつ同時に行うかという点である。
ファンタム電源は②-③と①との間の48V、卓の6.8kΩ×2経由でさほどの電流容量もない。
これを使い小電流で高品位な音声出力を得たいが、オペアンプICなどで大きな電力消費を平然と行う気にはなれない拘りの企み。
正負対称な2つのバイポーラTRのディスクリート差動回路で、中点からR・Cを使ってECM電源をパクった。
それはAMPの動作的にもECMの供給電圧としても良好なポジションを探りあて、手を打った。
ファンタムの持ち出し電流もμAクラスは無理だとしても1mAや2mAなら何とかなるはず・・・
当然「オペアンプIC」では荷が重い、手仕事のディスクリートで・・・・・あの手この手と混沌とした実験の末、出来た!・・・2mAから120μA少ない1.88mA、意地だ!
でもエコポイントは付きません。
しかしねー「こりゃまたデカイゾ、はみ出しちゃって・・・」どうやって収納したらイイんだろう?
かくして完成した 第1号機 ( fet3 の2倍近くの長さはあった)
無理矢理デッチ上げたとしか云いようのないマイクではあるが、その音質は「同類のマイクカプセル」が使われているという噂のECM-8000など、この時点でまったく比べる対象ではなくなっていたのは実に驚きである。
ECM-8000ではフェーダーを上げていくとホワイトノイズの中にダイナミックレンジのせまい音声が泳いでいるのに対し、1号機は量感のある音声が「ワーッ」と上がって行く快感! 「雲泥・・・というか、ここまで違うのか!」とあきれる程、圧倒的な違いを見せてくれた。
「ファンタム式パナ改マイク」 誕生の瞬間である。 2009年11月1日頃
(ECM8000とfetⅡとの比較録音があります、ご希望の方はメールにて)
【3.ファンタム式パナ改マイクの執拗な改善アプローチ】
『大は小を兼ねず』(もっと小さく組み、もっと高音質になれ!)
ハードウェアは小さくする事で次元を変えた可能性を手に出来る事を信じています。
ピンマイク形状で基板を小さくし、2号機・3号機・4号機と作り進め、そのたびにTR・コンデンサ・抵抗の一つ一つ、そして配置や実装状態まで見直して形にした。
部品一つ一つのサイズを縮め、部品の配置も見直して行くと基板サイズは僅かづつ小さくなっていった。
基板サイズ小型化の過程で・・・・
「基板をきちんと起こせばもっと小さくなるだろうか、チップ部品なら間違いなく小さくならないか、と試行錯誤とあせり」、答えは違っていた。
甘い甘い(^O^) 目標は2.5mmピッチの基板縦4穴、横4穴 合計16穴、
(10mm×10mm)の中に全部収め切らなければならず、不可能なら何の未来もないのだ。
(ファンタム式パナ改マイク、基板の進化)
左上からスタート、右下が最終完成形です。
AMP部の単独使用でもRODEのD-Powerに勝るとも劣りません。
【4.転機】
4号機を模索しているころ、ひょんなことからこのマイクロホンが業界筋で話題となり、そこでの評価テストの意外な好結果が大きな転換点となった。
しかし、自分でも不納得部分の残ったままでは「イマイチマイク」になってしまう。
前後するが、ある日ウン10年ぶりに真空管(サブミニチュア電池管)「 5678」 を引っ張り出した。
三結(三極管接続)とし、プレート電圧27Vで動作させアンバラOUTで動作させてみた。
わずかなショックでも電池管独特、強目のマイクロホニックノイズが気にはなるが本質的にイイ音、ピークマージンも高く申し分ない。
(真空管実験回路)
ピンときたのは・・・そうFET化、「半導体管球」化だ。
そうだ、そうすればコンデンサもはるかに容量の小さな高音質なフィルム系コンデンサが採用出来る!・・・
そしてディスクリート回路で動作電圧を思い切り上げたことは良い結果を招いた。
かくして、「ファンタム式パナ改」を公式な場で披露するチャンスに、(fet-Ⅰ) としてジャスト間に合わせた。
その結果の専門家達による「驚愕だ!」という思いがけない高評価にこれまでの疲れもモヤモヤも全部すっ飛んだ。(ファンタム持ち出し電流は何と0.56mAという信じられない値のマイクロホンだ)
しかし、自分はどうしても納得できない部分があるのです。
ECM電源をAMP回路からパクる為、使用しているFETのおいしい動作点からわざわざ外している事、そしてそのヤリクリからECM電源もスペックギリギリに低い・・・どうしてもイヤなのです。
さればECM電源はFET回路からパクるのではなく単独にこしらえてやれ、そして中域にやや鳴きを感ずるAVX(米)のフィルムコンデンサをやめて定評の高いWIMA(独)のMKS-2に変更、そして小さくである。
かくして、さらに一皮剥けた高品位のマイクとして
Measurement fet1
fet3 (旧measurement-fetⅡ)として完成、専門家の評価も ◎のマイクに仕上がった。
AMPの動作点とECM電源電圧は理想値にはまり、中域の張りも消えた。
そして最大SPLも約10dB高い130dB/at1%(THD)、を軽くクリアーしてくれた。
爆音ですぐ歪むコンシュマー「パナ改」の欠点もこのFET回路と卓入力のみにし、PADの併用で高音圧も対応可能となった、これは設計品質のWM-61Aでは全く考えられないことだ。
(これは基板小型化の副産物)
ワザを振り絞ってAXP-221の中に基板を収め切ったのが下の写真。
fet3 です。
fet3の基板収容模様 (これ以上のサイズでは絶対に入りません)
下図はここまでの「ファンタム式パナ改マイク」の遍歴です。
考えてみれば、MADE IN JAPAN の製品たちがかつて行ってきた歩みそのままなのかもしれない。
横道にそれるが、真空管式のギターAMPが支持される大きな理由は「ウオームディストーションと管球の個体差を探れる」事及び「圧倒的音量感」であろう。
ひょっとして、SPから出た演奏音は「プレート」をはじめ「グリッド」「カソード」まで至る電極がそれぞれが振動し「マイクロフォニックノイズ」による変調(Moduration)を受け、フィードバック音をMix させるエフェクターになっているのではないか。
「12AT7」系「6CA7」「6L6・6G6・6V6」系が中心のようだが、演奏者はこの差し替えによる音の変化を選んで自分のサウンドを創りだしているのはそういうプロセスだとすれば非常に納得出来る。(なぜか12AX7はマイクロフォニックノイズが少ないが)
同じ事をFETで行うことは不可能であるため、仮説はあながち・・・???
これは真空管式コンデンサマイクにもあてはまる原理なのかも知れないぞ・・・
(付録)
なぜ「ファンタム式パナ改」にこだわるのか
現在、ShinさんはこれらのECMカプセルは必ずソースフォロワ(3線式接続)で使います。
1年ちょっと前、一般型の「パナ改」からスタートした経緯がありますが、現在では外部電池を使う従来型の「パナ改」から離れ、「ファンタム式」オンリーにしています。
これには大きな理由があります。
それは不安定な3.5φのステレオ・ミニプラグのマイク入力を持った機器の必然的問題点があり、とにかくこの欠陥から逃げたかった。
そして邪魔な外部電池箱からも逃げたかった。
それは、何を意味するのか?・・・開けてしまったパンドラの箱だった。
半田ごてとカッターを武器に「妖怪」を相手に勝負を挑むドンキホーテでもあった。
XLR入力を備えていてもコンシュマー機器ではHAの質はコストとの戦い、当然ながらトータルの性能も頭打ちになります。
「卓接続のみ」を指向したことで、今度は「卓の質」すら選ぶマイクに変貌し、好むと好まざるとに関わらず、もはや「100円マイク」の卑屈さもないが「手製ですから」の甘えもない。
パナ改の可能性については、提唱者である大先輩のSiegfried Linwz 氏(米)やTOP技術者のBill Wall's 氏(米)による研究結果のさらにその先が延々と続いていたのです。
地獄を覗いてしまったのかも知れません。
(「ないものねだりこそ開発の原点だ!」、単一指向性編です。)
なお、ご希望により fetⅡ、fetⅡi、 fet 3
3機種限定にて製作を承ります メールにてご問い合わせください
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【おことわり】
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