1049 :Shinさんのマイクロホン開発挑戦記(第二編) | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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2024年1月追記

 

前編から

 

「高品位単一指向性コンデンサマイクへの挑戦」   

(一、 ないものネダリこそ開発の原点だ)

 

ファンタム動作コンデンサマイク、次のステップは「単一指向性シリーズ」であろう。

 

(Shinさんのマイクロホン開発ヒストリーMAP)

ShinさんのPA工作室

※やはり「ファンタム式パナ改マイク」があらゆる原点となっている。

 

 

1.わずかでも疑問の残る開発は絶対に成らず

 

一般に手に入るECMカプセルをかきあつめてスクランブルテストしたことがある。
 

何なのだろう・・・「まともな単一指向性カプセル」がないのだ、知れば知るほど絶望的な状況だ。

 

得体の知れないモノイマイチな単一指向性カプセルならデジキーの個人輸入やアキバあたりでとりあえず手に入る。

 

ある依頼によりスピーチ専用の「襟付け」単一指向性マイク試作する機会があった。

 

その「条件」というのが素敵で「ごくごく狭い同一空間に”オフマイク”でしっかりと音量を持って拡声する」という難題、しかしガンマイクの類・大げさなマイクはご法度、あくまでも襟付けのみ、ヘッドセット型などは論外だ・・・まるで「フタをとらずにお吸い物を飲め」という一休さんのトンチ話並なのだが、Shinさんこういう話に萌えるんです。もえ   「不可能です」といえばそれまでだが、ついやっちゃうんですよね「コンチクショー」と・・・

 

詳細は書けないがホシデンの2種類の単一指向性カプセル(最初KUB-7823、次にKUB-8223を使ったマイクを次から次へと「改善」を加えながらデモ提示していった。

実はこの時ほどマイクロホンの完成形が見えない事はなかった。

 

「ドン・キホーテ」のようなヤミクモな挑戦は案の定敗退、やはり「自信のないこと」

「理論の成り立たちにくい事」 「完成した姿の見えないこと」はやるべきではない。

しかし考えてみてください、私が敗退したという事は、このトンチ話に勝った相手がいるわけです。

むしろそんな勇者に心から敬意を表したい、そして何を以って完結したのか勉強させていただきたい。

 

しかし、凝縮した時間の中に学んだ事は大きい、それは・・・

 

自分で納得出来る単一指向性ECMカプセルは何がなんでも手に入れるべし。

 

「手製です」の甘えはどこにも通用しない。ケース(ハウジング)加工にクラフト限界などを自ら作らず、予想を超える仕上がりで挑む。

 

③優れた過去事例に学び、あらゆる数値とも2~3dBの改善でも「金」に値する。

 

④自分が信じた事は必ず実現するが、僅かでも疑問のある事は絶対に成らず

 

 

 

2.WM-61Aで「単一指向性」を得る試み

 

WM-61A(改)の優秀な音を以て試みたのが「ワイド単一指向性」の実験 でした。


ShinさんのPA工作室

無指向性マイクを3個縦に配列し、音速時間差によるベクトル合成を行った場合、僅かに前方へ指向性を持つ(ワイド・カーディオイド)の考え方。

これはやはり「云われてみればカプセル1つの時よりやや指向性を感ずる」程度、やはり役不足だ。

 

カプセルごとの遅延時間制御すれば、より改善できるが別BOXなどの使用は本末転倒だ。1本のマイクのみで完結するスタイル以外興味ない。

 

そんな異端児だが音はいいので何かの役に立つかも知れない。

 

 

3.WM-61Aでハイパーカーディオイド(狭角度単一指向性)の試み

 

大昔、Shinさんのことを仲間達に「あいつは技術者じゃない『奇術者だ』」と呼ばれていた事がありますが、そうすると、この試みなんか魔法かペテンかも・・・

 

無指向性であるWM-61A(改)を複数使ってさらに電気的なひねくりで単一指向性 を得られるはずだと・・・まだあきらめていないのだ。

 

これ・・・何だか良くわからない回路だけどどうなっているの? ??
ShinさんのPA工作室

WM-61Aを3個使ってハイパーカーディオイドの実験回路

 

机上実験中、かなりローカットされた音になり、マイクを音源と反対側に向けてみた。

モニター音は「スコン」と下がり、「オッ」と思い詳細に調べてみたところ正面軸から45度もズレれば、もう消え入るようなレベルである。

 

ただ、角度によっては逆相のような違和感を感ずるゲリラ的マイクだ、これは低域があまりにも出ないため、とりあえずお蔵入りだ。

 

しかし理論的にはアリだと思うのでこのゲリラテクは何かの折に絶対役立つノウハウだ!、何といっても無指向性カプセル2~3個だけでとにもかくにもハイパーカーディオイドを実現したわけだ、その点だけでも意味はあるんじゃないかな。

 

この記事は案の定多くのアクセスを頂いております、実験された方は是非ご連絡ください。

 


 

(ニ、 高品位カプセルとの運命的出会い

 

ホシデンのカプセルで不納得な開発を行っている最中、ひょんなことから知った国内ECMカプセルメーカ がある訳を説明しての単一指向性カプセルをサンプルとして(UEB-0600、UEC-0600)を御提供いただいた。

 

結局、提出評価には間に合わなかったが使ってみるとSN比、ハウリングマージンともに前者を上回る優秀さ、使用感はデジキーで手に入れたパナソニックのWM-65Aを上回る単一指向性6φモノだ、しかし・・・・

 

ホシデンのカプセルで敗退してしみじみ感じたのはスモールダイヤフラムと良い指向性能は相反する条件だという結論、ハウリングマージンを望むならスモールダイヤフラムECM とは決別しなければならない必要があることを学んだ。

 

そして6φや8φの単一指向性ECMカプセルは諦め、10φ以上に目を向けた。
 

このメーカー(フォーリーフ社) のECMカプセル・ライナップの中で上位モデルとなっている13.7φの単一指向性カプセル・UEB-5361と、10φで特性の優れていそうな EB-5261を入手してみた。

何回かの連絡で本当に誠意あふれる同社の対応には感激しました。

製品にもそれはきっと現れているだろうと、楽しみに待った。

 

しばらくして届いた2つのカプセル、指定通り負荷抵抗を10KΩにし、ブリーダ抵抗値を変えたfet-Ⅱの基板で試した。

最初は13.7φのUEB-5361である(下写真)


ShinさんのPA工作室 (現物の前面は黒の不織布でチリよけ兼風防が施されている)


音の世界には「姿の美しい機材は必ず音も良い」というオカルトのような法則があるが、度肝を抜いたのはその音だ、AKGのC-451Bとそっくりの音ではないか・・・・・

C-451B現物を持ってきて詳細な音質比較に挑んだ、イヤ・・・どこに違いがあるのだろう、「酷似」と言って良い。

 

目の前が一気に「パーッ」と開けて、遠くまで延びる道のようなものが頭をよぎった。

長い間想像していた事が現実となって目の前に現れたときの興奮現象なのか・・・

「頭の中にあった何か」とコンペアがとれたからであろうか。

 

次に10φのUEB-5261、フラットでやや超高域を丸めた感じは同じくAKGのC-391Bこれまた酷似。たとえの相手として物議をかもすかもしれないが、手元で比較出来るコンデンサマイクがさほどあるわけではない。

 

このC-451B・C-391Bともに現物とのA/B持ち替え比較を行って確認した。

 

C-451との比較音源を2010.9.11アップしてお聴きいただけるようにしたが、極端に重くなりブログの閲覧に支障が出始めた為、2010.9.14やむなく中止した。この3日間にお聴きいただけた方はラッキーでした。(ファイルサイズ5MB程度のMP3音源ですのでご希望があればご連絡下さい、メール添附でお聴き頂けます)

 

単一指向性ECMカプセルこれまで秋葉原や国内通販・デジキーの個人輸入によって血眼になって探しまわってもロクなものがなかった。

すこし頑張って手に入るのはパナ:WM-65A-103, WM-55A-103 やホシデン:KUB6123, KUB-7823, KUB-8823 程度で音楽用途にはイマイチだったりマトモに使えるものはなかった

 

しかしまぎれもない「ホンモノ」と向き合えるようになったこのエポックはマイクロホンクラフトの世界に別次元の可能性を広げてくれ、率直に喜び、フォーリーフ社 には重ねて感謝申し上げたい。

 

 

(三、 単一指向性マイクロホンクラフト

 

マイクロホンクラフトにおいて大きな問題点は「外観構造」である。

 

「ファンタム式パナ改マイク」で経験したとおり、マイクロホンクラフト最大の難所であり、これが完成度を決める重大ファクター、しかしECMカプセルの径がまったく異なるので、あらたに考えねばならない。

 

こういう場合、いかにジャストフィットする外筐物を既存の市販品からチョイス出来るかが大きい。

水道管であれ、100円ショップの台所用品であれ外筐物に見立てて想像を巡らすと良い、

しかし、出来上がりのグレードにマッチしたデザインが想像出来る納得のマテリアルでない限り正気に帰って考え直すべきだ。

 

まじ  ワラをもつかむ想いのチャッカマンマイク

 でもこのおかげでShinさんの「単一指向性」への執念に火がついた炎
ShinさんのPA工作室

着火ライターを使った単一指向性マイクのハウジング例

ECMカプセルがどんなに優秀でも、単一指向性マイクロホンクラフトの大きなポイントはハウジングに速度孔(速度成分取り入れ孔・逆相成分取り入れ孔などいろいろ呼べる)を設ける加工についてであろう。

 

また、カプセル前面も背面もダイレクトに空気に結合していない限り介在する機械的等価回路由来の色付けが複数のプロセスで起こる。

これの回避ワザ、制御ワザこそが指向性マイクの音作り最大のテクノロジーであろう。

 

こういう変な構造も首をかしげながらの製作ですが、単一指向性ECMのクラフトの試行錯誤 の中でワラをも掴みたい状況下の作品、発表している記事の中でも文句言いながら書いています、失礼いたしました、しかし新しいプロセスにがついた。

 

! 工作ツールを手に入れてマジに取り組むとこう変わる・・・
ShinさんのPA工作室  ShinさんのPA工作室

着火ライターの反省に立っておもいきり頑張った例 Shinさん、やるときはヤル。



そのあとの事だ・・・・・

 

 

UEB-5361 5261との出会いで一層気合の入ってきた単一指向性マイク開発。

海外個人輸入などの正体不明モノとは次元の異なる圧巻の高品位に納得、しかしこれが普通なのだと確信している。

 

fet-u1  fet-uⅡへと進化を続けている
ShinさんのPA工作室     ShinさんのPA工作室

fet-uⅠ (13.7φカプセル)  fet-uⅡ(10φカプセル)

 


 

さらにBLM-fetⅠへと進化は続く・・・・・・・・
ShinさんのPA工作室

BLM-fetⅠ・Ⅱ の作例

 

 

(ご注意)いずれのマイクも非業務用のマイクアンプやオーディオI/F、格安卓など低品質のファンタム環境での動作は保障できません。

 

 

 

             【いずれ第三編へ続く予定です】

 

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【おことわり】

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