1008: ファンタム式パナ改マイク fet-Ⅰの誕生 | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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 この記事は2010年のものです。公開から13年以上経過している点にご留意ください。

2024年1月追記

 

ファンタム式パナ改シリーズは今回で5回目となりました。

このコンセプトのマイクは「従来のパナ改マイク」とは全く異なる業務音響の世界で新しい可能性を生み出しつつあります。

 

今回はAMP部分をFET化 し、省電力とシンプルな回路でピークマージンとリニアリティ向上を試みました。

 

最大SPLは123dB/SPL(THD=1%)実測、動作電流は560μAと、卓への負担軽減と同時使用される他のファンタムマイクの動作に影響を与えない省エネ設計といたしました。

 

また、私のこれまでの「ファンタム式パナ改1~4号」はHigh-Lebel-Output設計ですが、このfet-ではオペレーション上の配慮から出力レベルは一般のコンデンサマイク同等に仕上げました。

 

(ご注意)非業務用のマイクアンプやオーディオI/F、格安卓など低品質のファンタム環境での動作は保障できません。

 

 

【「ファンタム式パナ改」シリーズ独特の課題】

 

 

 

①パナ改マイクの良さを業務用マイクとして継承し、多目的に現場で力になる機材たること

 

②ファンタム電源で動作する不平衡/平衡変換回路を備え、さらにECM用電源を取り出す必要があること

 

 

③できる限り僅かな電流で動作する回路(決してファンタムをひっぱる事のない軽い動作)

 

 

④平衡変換AMPは広範囲なファンタム電圧に対応し市販XLRコネクタ・シェル内に入る超小型であること

 

 

⑤十分な音質とピークマージンを保つ事

 

 

⑥オペレーション上、出力レベルはマイクレベルとしたい

 

 

⑦パナ改特有の奇異なデザインを廃し、他のプロフェッショナル機器と親和性の高い、フォルムと拡張性

 

 

 

【外観】
ShinさんのいたずらPA工作室

 

見た目はこれまでと何ら変わりません。

マイクハウジングはShinさんオリジナルです(ウィンドスクリーンは8φのREXSER RZM804LWSが適合。

 

 

 

【回路図】

 

 

 


ShinさんのいたずらPA工作室

 

・使用FETはVdsの高い小信号FETを数種類テスト、性能・実装上良い結果を得られたもので決定しました。

(しかし価格は汎用品の10倍以上になりますね)

汎用の2SK241などでも動作はしますが、48Vでは使えません。

汎用の2SK-30なども互換代替できますが形状はきわめて大きいです。

TR・FETでは、脚配置にバリエーションがありますので、くれぐれもご注意ください。

 

・抵抗は一部KOAの1/8W金属皮膜型、コンデンサはAVXのMFコン使用など、こだわりを詰め込みました。

 

試作でなければ、すべて金属皮膜抵抗で望むところです。

回路的宿命で、マイク電圧がやや低めですが、メーカーのスペック上も問題ありません。

 

・回路構成、定数もほぼ真空管回路同等でいけます、カップリングコンもこだわりコンデンサを使用しました。

 

 

 

【本機の基板とコネクタ部分】
ShinさんのいたずらPA工作室

(中身です)

今回「こだわりコンデンサ」を使用した関係で基板の2穴がムダになり、その為やや長く、15mm×10mmです。

しかし、バイポーラ・トランジスタ回路よりスッキリと仕上がりました。

 


   ShinさんのいたずらPA工作室

(コネクタシェルに収納した基板部)

 

何の絶縁処理もすることなく、「ストン」と入り動作しますが、基板は絶縁スリーブに収め事故防止をはかりました。(絶縁スリーブを外し、撮影しました)

 

 

【製作考察】

 

 

①このシリーズ最大のテーマは「ファンタム電源から2系統の電源を取り出し、なおかつECMが安定的に動作し、AMPはリニアリティの高いものであること、そして大きさの制約これが最大の難所でありますが、それをクリアーすると強い存在理由を見せ始めます。

 

②今回のfetバージョンでは111dB/SPL(THD:1.0%)at48V供給時 を実現しておりますが、ECMへの供給電圧を上げれば高音圧に対するマージンは増加しますが、回路上これ以上の電圧UPは難しいようです。
 

③動作電流は560μA、とダントツのマイクロパワー動作を実現、この結果は机上実験を繰り返す中でやっとたどり着いたものです。

 

今回の2SK330はPチャネルの2SJ105とコンプリメンタリ関係にあります、これを使ったP-P(プッシュプル)回路も優れたものになると考えられます。

ちなみにファンタム式パナ改は1号機からずっと、NPNトランジスタ また今回はN-chFETのP-P(プッシュプル)回路でバランス出力を得ております。

 

⑤ノイトリックのXLRコネクタは、市場では全面的に新タイプに切り替わりました。

前回「ファンタム式パナ改第4号機」で新型の「NC3MXX-B」を使用しましたが、現在まだ若干流通在庫のある旧型の「NC3MX-B」をあえて使用し、新型・旧型コネクタどちらでもジャストフィットする事が確認できました。(これは安価なサードパーティ品2種類でもほぼ同じ結果でした・・・保証の限りではありませんが)

 

トランジスタタイプFETタイプのどちらも優れた特徴がありますので、ラインアップとして併存させると、これからが面白いと思います。

 

 

 

【裏話】

HAとして真空管(Sub-MTの電池管:5678)を使用してテストしたところあまりにもスッキリした高音質を得られましたので、その意外な感動が今回のfetへのきっかけになりました。

変な話ですが、それほどまでにFETと真空管はそっくりなのです、回路も定数もほぼそのままで互換でき、違うのはプレート電圧(ドレイン電圧に相当)とヒーター(電池管ではフィラメント)があるか無いか事ぐらいです。

 

Tubeシミュレーションなんて甘い事言ってないで、単3アルカリ電池が昔の単1ぐらいの高性能になった今、フィラメントの電力食いも気にしなくて良いし、プレート電圧も9Vや18Vでちゃんと動作する。

だからあえて電池管を使った機材なども、いまどき面白いかも知れません・・・

(しかし、真空管は叩くと多かれ少なかれ「キン・キン」というマイクロホニック・ノイズが出るが、電池管のそれはギターアンプなどの普通管とは比較にならない程キツイ)

※<真空管:5678=1T4のサブミニチュア版>

 

【裏話の裏】

真空管特有の「ウオームトーン」「ウオームディストーション」は楽器AMPでは絶対的なファクターであり、同一品番でも球のメーカーや産地(国)によるキャラクターが求められる。

それは、もしかしてスピーカと真空管間で発生する「物理的な共振を伴ったマイクロホニックノイズ」など、出音の物理的フィードバックによるデバイス動作のカラーレーションに思えてならない。

「どこどこの6L6-GCはセレッションのこのSPユニットと合う」とか「やっぱりメタル管に限る」・・・などは、まさにそれではないかと思っているところです。

 

(お詫び)

前回、「次回は仰天モノがお目見えします」 

とお伝えしましたがもう少しお時間を頂く事にし、完成度をUPさせます。

この愛称は「○○たまご」とちょっとだけヒント・・・・・もうすこし待ってくださいね、謝罪!

 

 

 

 

 

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