困難な再現

 

 これまでに紹介したピットやセンターポストにくらべると、クレードルはかなり複雑な構造をしている(図1)。今回、ほとんどの箇所をモデリングできたが、鎖錠(さじょう)装置(回転位置を固定する装置)だけができなかった。鎖錠装置は図面に曖昧に描かれており(図2)、また独自の機構のため参考にできる資料もなかった。

 

図1:クレードル全体図(FreeCAD)

 

図2:曖昧な描写の鎖錠装置

 

 

 

 そもそも鎖鎖装置にはいくつか種類があるが、どの方式も(かんぬき)を溝に差し込む点で共通している。大半の方式では閂部分がクレードルの天板上、つまり機関車が走るレール面に位置するが(図3-1)、ここで再現する転車台はピットの内部、底の壁面付近に位置するもので、この例がなかなか見つからないのである。

 

 実際に、国内に現存する同型の転車台3台も閂をレール面に置く方式だが、これは運用やメンテナンスの都合から後に改造されたものではないか(図3-1)

 

図3-1:明治村(愛知県)の転車台(同型)の鎖錠装置

明治村の転車台は、本稿で再現した転車台と同型だが、かなりの改造が加えられた。両端を大幅に切り詰めて小径にした(約4.3m減)他、中央支承のベアリングを別構造(スラスト自動調心ころ軸受)に置き換えている。

 

図3-2:スラスト自動調心ころ軸受

 

 

 

 やっとのことでみつけた同方式の鎖錠機構は、若桜駅(鳥取県)に現存する50フィート転車台(動態保存)である(図4)。ただし画像で確認できたのは閂のメス部分だけで、オス部分はクレードルに隠れて見えない。この転車台は2004年に修復されたものであり、そうであれば各所の図面化もされたと思われるので、もしその図面が入手できれば完全モデリングも可能だろう。

 

図4:若桜駅の鎖錠装置

 

 

 

 

 

主構造

 

 クレードルは大きく4箇所に分かれ、それぞれ、主桁部中央部路面部車框(しゃきょう)となる(図5-1)

 

図5-1:クレードルの各部

 

図5-2:図面トレース

 

 

 全体的にL字鋼T字鋼で構成されリベットで接合しているが、今回リベットや小さなボルト類は省いてCAD再現した。また実物では部材の長さが足りずに継ぎ足した部分も、今回は1本の部材で再現している。

 

 

 

 

次回はクレードルの各4部について解説する。

 

 

 

 

この企画の前回以前はこちら(↓)

第31回:転車台の再現(1)設計図と現物

第32回:転車台を再現(2)図面を読む

第33回:転車台を再現(3)機能から学ぶ

第34回:転車台を再現(4)設計図を起こすには

第35回:転車台を再現(5)ピットの製作
第36回:転車台を再現(6)センターポストの製作