転車台の機構

 

 本ブログで目指す3Dモデルは、あくまで形状の再現にすぎないが、そもそも機械の形状はその機械の動作で決まってくるので、動作の仕組みを知る必要がある。特に転車台に特徴的な回転の仕組みは重要だ。

 

 そこでネット上で見つけたのが『The Tyseley Turntables』という記事。これはイギリスのバーミンガム郊外にあるタイズリー機関庫の転車台に関するもの。ちなみに、バーミンガムはラウンドハウスの転車台を製造した企業Lloyds, Foster&Coがあった場所でもあり、またラウンドハウスはロンドン&バーミンガム鉄道の施設でもある(それが何だってんだ!)

 

 この機関庫は1908年に完成したもので、それはラウンドハウスの時代から60年以上も後のことだが、使われていた転車台は旧来の回転構造で手動式のセンターバランス式であり、おそらく本ブログで再現しようとしているものと同機構のようだ。というのも、この記事には回転構造について図を用いているのだが、その図が私が入手した明治期の図面とほぼ同じだったからである(図1)

 

(図1)センターバランス式の構造図

※左の構造図は『The Tyseley Turntables』に掲載されていたものを、本ブログ独自に製図し直したもの

 

 

 この記事で図面各部の役割や動きが理解でき、それが最終的にどのような形状になるべきかのヒントになる。これにより図面で曖昧な箇所や簡略化された箇所が明確になるだろう。

 

 

 

 

図面を補う機構

 

 図面の中央支承部に半球状のもの(C)があるが、これが当時のベアリングで回転システムの要となる。このベアリングが下に接した凹み(B)の中で回転する仕組みなのだが、この記事によれば、その接点は1.5平方インチ以下。これはわずか3センチ四方。

 

(図2)ベアリング

 

 

 またこの記事の図には、ベアリングの接点の両脇に堤防のような縁があり、これは文章によればオイルバス、つまり潤滑油をためておくためのものとわかる。このオイルバスは本ブログで入手した転車台の図面には描かれておらず、これでは潤滑油が流れ落ち回転効率が悪く、またベアリングも摩耗しやすいと考えられる。よってオイルバスに類する部分を付加する必要があるかもしれない(図3)

 

(図3)オイルバス

※黄色で示したのは潤滑オイル

 

 

 さらにこの記事には、転車台の両端に設けられた車輪と円周レールに関する記述もあり、このレールがガイドにすぎず、ここに荷重はかからないとある。これを裏付ける動画がYoutubeにもあり、青森の津軽中里駅の転車台の回転シーンでは、車輪の片側が回転しておらず重量がかかっていないことを示している。

 

(図4)青森 津軽中里駅の転車台

 

 

 これはつまり、センターバランス式の転車台では、中央支承部ですべての重量を支えていることになるが、先述したようにその接点はわずか3センチ四方程度で非常に不安定だ。そこでベアリング上部は円形の蓋状になっており、その円周を複数のボルトで固定する仕組みになっている。このボルトで回転台の水平を調整していたのだろう。

 

(図5)固定ボルト

 

 

 こうした構造を知ることにより、入手した設計図の穴が埋められていく。

 

 

 

 

 

 

次回は、これまでの資料から設計図を起こしていく。