これまで本ブログでは、画像の撮影時期の特定にさまざまなものを指標にした。空模様や路面の様子、影の形状や状態、人物の服装、車種やナンバープレート、広告看板などだが、今回は街路樹を取り上げる。
街路樹を知る
ラウンドハウスの北側は幹線道路のチョークファーム・ロードに面しており、その道沿いには数本の街路樹がある。
街路樹に採用されるのはほとんどが落葉樹で、その理由は暑い時期に葉が茂って日陰を作り、寒い時期には葉が落ちて日光を取り込むからである。この樹形の変化こそ画像の撮影時期を推しはかるまたとない指標だ。
ただし木の種類により季節ごとの変化は当然異なる。あらかじめ品種を特定しておきたいが、はたして街路樹の品種を調べる方法などあるのだろうか。しかも私のような一般人がイギリスの樹木を。
幸運なことにロンドンの場合、街路樹の情報はネット上で公開されている。その代表的なウェブサイトが「London's Tree Map」と「Treetalk」だ。
London's Tree Map
「London's Tree Map」はロンドン市の行政サイトで、そこでは市内の110万本に及ぶ街路樹すべての位置と種類が公開されている(図1)。
(図1)London's Tree Map

https://apps.london.gov.uk/public-realm-trees/explore
表示画面は非常に見やすくなっており、地区名や道路名で検索もできるのだが、特に地図表示が便利で探しやすい(図2)。
(図2)検索画面
地図表示を拡大すると、個々の街路樹を示すマークが表示されるので、そこをクリックすると樹木名が表示される。それによると、ラウンドハウス前のチョークファーム・ロード沿いには7本の街路樹があり、その品種はロンドン・プレーン4本、フィールド・メープル2本、シルバー・メープル1本だった(図3)。
(図3)ラウンドハウス周辺の街路樹
treetalk
「treetalk」も同様のサイトだが、民間の緑化企業、グリーントーク・リミテッドが運営している(図4)。
(図4)treetalk

https://www.treetalk.eco/map#xyz=9.97/51.5145/-0.1604
街路樹の検索ページは「Discover London's Trees」という名で、基本的な内容と操作は前節の「London's Tree Map」と同様である。このサイトの基本データは、先のサイトの運営元であるロンドン市からの提供だが、そこにさらに独自に収集したデータを加えることで、市民が利用しやすい理想的なシステムになっている。
最大の情報はロンドン中の街路樹の、なんと一本づつの具体的な情報であり、さらに各樹木の季節ごとの変化についても追跡している。
たとえば、その木が植樹された年などの来歴情報、現在の樹高と幹の直径、現時点の枝葉の広がり幅までも掲載。さらにその木の季節に応じた移り変わりをグラフ化し、現在どのような状態にあるかが一目瞭然だ(図5a, b)。
(図5a)
(図5b)
日本の状況
東京都のウェブサイトでも街路樹のデータはどうにか提供されているが、残念ながらイギリスには遠く及ばず、お世辞にも市民の利用にふさわしいとはいえない(図6a)。
(図6a)
東京都オープンデータAPIカタログサイト
TOKYO OPEN DATA API
東京のデータ提供は味気ないテキストデータを、単にダウンロードするだけものだ。しかもそのファイルには街路樹の位置が味気ない座標データ(経緯度表示)で示してあるだけで、利用者はそれを頼りに地図で探さなければ、自分が知りたい街路樹にたどりつけない。これでは大半の市民が検索をあきらめるだろう(図6b)。
(図6b)
ここまで極端な日英の落差は何だろう。小池東京都知事が掲げる都民ファーストとはこの程度のものなのか。知事が率いる都民ファーストの会のカラーが緑色というのは実に皮肉だ。
街路樹のデータベース構築など、東京マラソンの開催費用1回分にくらべれば微々たるものだろう。緑化ボランティアや市民参加で大幅なコストダウンも可能だ。
それでも無用のコストだというなら、そもそも莫大な管理費が半永久的にかかる街路樹など一本残らず取り払い、浮いた資金を福祉に充てる方が遥かに都民ファーストだろう。
それともロンドン市は福祉予算をゴッソリ削って、それにより野垂れ死にした数百万の市民の上に街路樹データベースを構築し、東京はそれをしないからこそ福祉が充実してるとでもいうのだろうか。
ラウンドハウス前の街路樹
ロンドン・プレーン
この木は日本でも街路樹としてなじみ深く「モミジバスズカケノキ」として知られている。
通称はプラタナスだが、正確には西洋プラタナスと東洋プラタナスの交雑種で、病気に強いことから世界各国で街路樹に多用されている。
葉が比較的大きく樹皮は迷彩柄という特徴的な外観、落葉樹で葉は掌状葉(手のひら型の分裂葉)で、夏には大きな日影を作る。
「treetalk」によれば、花期は3〜4月、葉は4〜11月まで茂り、タネは10〜2月なので、これが画像の撮影時期の指標にできる。当然ながら以上はあくまでロンドンの気候での話である。
フィールド・メープル
和名はコブカエデ、あるいはドイツカエデで、日本には伝統的にない樹木。現在では研究目的、あるいは植物園・公園の一部で植えられ、また洋風住宅や施設でオシャレ目的で植えられる。
カエデ類の中では比較的小ぶりのため扱いやすい。葉は先のロンドン・プレーンより小さく、樹皮は縦に裂け、いわゆる一般的な樹木の外観をしている。
「treetalk」によれば、花期は4月、葉は4〜11月、タネは10〜11月。これは先のロンドン・プレーンより時期が限定的なので、画像の撮影時期の指標に最適だ。
シルバー・メープル
西洋では古来から広く知られた木で別名が多く、クリーク・メープル、シルバーリーフ・メープル、ソフト・メープル、ラージ・メープル、ウォーター・メープル、スワンプ・メープル、ホワイト・メープルなど。
和名はギンヨウカエデ、あるいはギンカエデ。アメリカ原産で寒さに強く、北米やヨーロッパでよく知られているが、日本では札幌で街路樹として植樹される程度。
成長が早いため木質の密度が低く、また根張りも浅いため風に弱い。
「treetalk」によれば、花期や葉の茂り具合、タネの時期は先のフィールド・メープルと同じ。
ラウンドハウス前では、1本だけが西側の別館脇に植樹されている。この場所はちょうど別館カフェの裏口にあたる。
今回は東京都を辛辣に批判したことに驚いた人もいるだろう。もしこれが次回の序章だと気づいた人がいたら、そのすばらしい洞察力を称賛したい。
実のところロンドンの街路樹情報には重大な欠陥がある。もちろん彼らの取り組みや理想は非常にすばらしく、現在は実現の過渡期にあるのだろうと信じたい。
次回はその詳細をラウンドハウスの写真群から説明していく。





