今回は、ラウンドハウスがレコードのジャケットに使われた例を2点紹介。

 

他にもいくつか例を確認しているが、あくまで特筆するものとして選んでいるので、それを踏まえた上で、他に取り上げるべき作品を知っているという方がいたら、ぜひご連絡いただきたい。

 

 

 

 

『Squaredancing in a Roundhouse』

Derrick L. Carter

(Classic Recordings Ltd. CMC27)

2003年9月リリース(※1)

 

アメリカのハウス・ミュージシャン、デリック・L・カーターの12インチシングル。前年2002年9月にリリースされたアルバムからのシングルカットでセルフ・リミックス作品。イギリスのレーベルClassicからリリースされた。

 

ジャケット写真のラウンドハウスの様子からみて、撮影時期は現ラウンドハウス・トラスト所有となった1996年9月以降。また右端にレンガ製エントランス階段が存在することから、少なくとも再開発工事が始まる2004年5月以前の撮影となるが、アルバムのリリース以前に撮影されたことは明らかなので1996年9月〜2003年8月とみられる。

 

さらに画像に写る街路樹は落葉樹のプラタナス(※2)だが、葉をつけつつそれほど茂っていないことからみて、少なくとも真夏や真冬ではない。あくまでGoogleMapの過去画像で判断すると4月か10月頃となる(図1)

 

(図1)画像撮影時期

 

 

タイトルに「ラウンドハウス」の名があることを考えれば、ロンドン公演を収めた可能性もあり、ジャケット写真もその時撮影された可能性があるが、調べてみたもののそれらしき資料は今回みつからなかった。

 

あくまでタイトルに注目すれば、「Square」dancing と「Round」house」という対義語(「四角」と「丸」の対句)に気づく。おそらくレーベル側の意向で、イギリス企画盤を明示するタイトルにすべく、イギリス有数の会場ラウンドハウスが選ばれ、タイトルもそれに準じただけだろう。

 

外壁のポスターは画像加工だが、それ以外は改築前のラウンドハウスで、今となっては懐かしい画像である。レコードジャケットだけに30cm角の美しい印刷物なのでインテリアにもいい。

 

(※1)ウェブサイト『XLR8R』新譜レビュー記事, 2003年9月19日

(※2)ウェブサイト『Local Authority Maintained Trees』, Greater London Authority (GLA)

 

 

 

 

 

『All's Well That Ends Well』

Man

(Esoteric recordings ECLEC32431)

2014年3月

 

イギリスのウェールズ出身のプログレッシブ・ロックバンド、マンによるライブアルバム。オリジナルは1977年にリリースされた7曲収録だが、2014年のデジタル・リマスタリングで、新たに12曲を追加し3枚組CDとして発売された。

 

リマスター盤の全19曲がすべて1976年のラウンドハウス公演だが、このライブは12月10〜12日の3日間行われており、オリジナル盤(1977年)はそこから抜粋7曲を抜粋したものだった。リマスター盤では、このオリジナル盤1枚とは他に、別日の演奏12曲を2枚のCDに収め追加されている。


ジャケットの表面にはラウンドハウスはないが、裏面には、すでにオリジナル盤(1977年)の時点で小さく掲載されている。そのサイズは約115x100mmで、後のCD再発売では当然ながら縮小され、アナログ盤のわずか15%(46x38mm)になった(図2-1)

 

(図2-1)画像サイズの変遷

 

 

これが2014年発売の本作リマスター盤で、付属のブックレットの最終ページ全面掲載(120x120mm)となった。これにより、オリジナル盤換算で約107%拡大となり、解像度が多少上がった一方、左と下がわずかにカットされた(図2-2)

 

(図2-2)オリジナル盤とリマスター盤の画像変化

 

 

画像内容は非常に興味深く、この時期にこの位置から俯瞰アングルで撮影されたのは珍しい。それによりエントランス階段(バットレス22-24)と、西側の隣接地の様子がよくわかる。階段脇のビルボードが邪魔なのは仕方がないが、現3階のギャラリー部に続く外階段(バットレス20-21)がこの角度で写っているのは、構造がよくわかる貴重な資料である(図2-3)

 

(図2-3)画像内容が示すもの

 

 

大アーチ(バットレス23-24)に注目すると、扉の上に『JOINT STOCK』とあり、扉の中に『A MAD WORLD MY MASTERS』とある。これは当時ラウンドハウスで上演されたコメディ演劇で、劇団ジョイントストックによる公演(※3)。上演期間は1977年9月7〜24日であり、いうまでもなくこれが画像の撮影時期である(図2-3)

 

よってこの画像は、マンのライブに際し撮影されたものではなく、アルバム発売にあたり直近の写真をどこからか調達したものだろう。この画像からさらなる掲示物の内容を確認したいのだが、このサイズと解像度ではこれが限界である。

 

実のところ、この画像はラウンドハウスの歴史上でも貴重であり、その理由はこの1977年という年が、ロックのラウンドハウスとして第2次全盛期の真っ只中だからだ。

 

またこの年はその全盛期が傾き出した年でもあり、春にラウンドハウスの総責任者、ジョージ・ホスキンズが急病で倒れ、後任としてセルマ・ホルトが就任する。それ以後、ラウンドハウスは徐々に運営方針を変え、純粋な劇場へとシフトし、1979年にはロックのライブが完全に締め出されることになる。

 

もしこの先、この2014年リマスター盤がアナログ盤でリリースされ、この画像が12インチサイズで印刷されたなら、この画像ほしさに購入しても損はないだろう。

 

(※3)この演目は、イギリスの著名な劇作家で、映画の脚本家、バリー・キーフ(1945–2019)によるコメディ作品。彼の作品でも人気作のため1984年に再演され、シアター・ロイヤル・ストラトフォード・イーストで上演された。