難解な設計図
今回、3Dモデリングの設計図を起こす際に基本としたのは「定規」と題されたもの。これに他の2枚の図面で補足して製図する。しかしなぜかうまくいかない。どの図面にも正面図・側面図・平面図という三要素がそろっているのにだ。
何度かやり直して気づいたのは、入手した図面では、外側から見えている部分と隠れている部分がわかりやすく表現できていないということ。そしてこうなる理由が、本来なら分けて描くべきパーツを1枚の図面に収めたためとわかった。
転車台は大きく3つのパーツから構成されており、1つ目は円筒形の穴(ピット)、2つ目は回転の中心軸(センターポスト)、3つ目は機関車を乗せる台(クレードル)なのだが、これを分けて製図することにした。
(図1)3つのパーツが重なっている
この方法で3方向から製図すると、計算上9枚の図面ができあがる。しかし転車台の場合はピットとセンターポストが円形のために正面図と側面図が同じになるので、計7枚あればいいことになる。
謎の鉄材表
「甲号」と題された図面には「鉄材表」が含まれている。これはおそらく、この転車台を作るために必要な鉄材をまとめたもののようだが難解だ。
(図2)転車台「甲号」の鉄材表
※ 旧漢字は現代漢字に修正したが、読解できない漢字は●で表記してある。
※ 赤ワク内が図面掲載の表、その右側が寸法表記をインチに変換し、摘要欄を独自に推測翻訳したもの。
難解な原因のひとつが旧漢字で書かれており読み方が容易にわからないこと。もうひとつはその名称が転車台のどの部分を指しているのかわからないことだ。特に後者はこの設計図の作者自身も表記に困ったようで、表内に部品の形状を書き込んでいる(図2:青色)。もし正確にご存知の方がおられたらコメント欄にてお教えいただきたい。
まず知りたいのは、鉄材が4種類(平鉄、板鉄、丸鉄、角鉄)区分されているが、その内の平鉄と板鉄がどう違うのかということ。またサイズと数からどこの部材かを推測したが、数量が合っていないように感じるのは、おそらく図面を正確に理解してないためだろう。
この表からどうにかわかることとしては、鉄材の厚さが4種類(3/8インチ、1/2インチ、5/8インチ)あって、各部で使い分けられていることだ。
一方で図面は手書きのため鉄材の厚みが区別しにくいが、「甲号」と「定規」には英語表記があり、そこには部材の形状を示す語句があるので、それがヒントになるだろう。英語表記は以下のように訳せる。
「甲号」
L Iron → L型鋼
T Iron → T型鋼
Dia → 直径(diameter)
「定規」
Planking → 敷き板【木材】
Flange Plate → フランジ(突縁)(図3)
Web → ウェブ(主桁)(図3)
Angle Iron → L型鋼
T Iron → T型鋼
Sleeper → 枕木、張板【木材】
L Iron → L型鋼
Concrete → コンクリート
dia → 直径(diameter)
なおフランジとウェブは、いわゆるH鋼(H型鋼)の各部の名称(図3)なので特に訳す必要はないが、先述の鉄材表にはフランジ箇所を示すような「突縁」という語がみられるのでヒントになるかもしれない(図2)。
(図3)H鋼の各部の名称
以上2つの図面から鉄材の厚みに関する語句や数値を抜き出したのが図4である。これをみると両図で用いられている鉄材のサイズはかなり酷似しており、同じ転車台を計測したのではないかと思うほどである。ちなみに図面には、鉄材の厚みには上表に含まれていない7/16インチも加わっており難解だ。
(図4)鉄材の厚みに関する語句と数値
※ 赤は鉄材の形状が示されているもの。
※ 青は数値だけで示されているもの。
※ 茶色は木材。
※ 黄色のマーカーは両図で共通するサイズの部材。
次回は、転車台を図面に起こしたものを発表(する予定だけどどうなるかわからない)。