母がデイサービスでもらってきたドリル。
読み方の難しい漢字が、20 書いてあった。読んでみたら、読めない漢字が2つ。
それが、「水黽」と「椿象」。虫に関するドリルのページだった。
高齢者なら読めるのかと思ったら、そうでもないらしい。
生活上、必要でもないし、読書家や書道をやっている人でも読める字ではないか…。
「水黽」の正解は、「アメンボ」。
そうかな、とは思った。
「蠅」みたいな字だから、水棲昆虫のうち蠅っぽいのを思い浮かべて…。実際には「蚊」に近いかたちだけれど。
ところが、実家にあった岩波の国語小辞典で「アメンボ」をひいてみると、「水黽」ではなく「水阻」とある。「蛆」でもなく「阻」だ。違うか…。じゃあ、ミズスマシ? ヤゴ? タガメ?
いや、タガメもヤゴも違いそうだなあ。
帰宅して、パソコンで調べ始めたら、いきなり困った。
「黽」の文字をどんなふうにワードで出力したらいいのかがわからない。音読み、っていっても、これ一字でなんて読むんだ?
手書きして調べるしかないか…。と、ここで、また挫折。
書き順がわからないから、うまく漢字を書けず、かたちにしにくい。
どうにか似せて書いて、行き当たった。
文字を出すだけ出したあとにしたこと。
「漢字の書き順」を教えてくれるウェブサイトを見つけて、学習。
へえ、そういう書き順か、なるほど、こう書けば、漢字らしくなる…。
「蠅」は、つくりの縦棒が一本だったよね。この文字とは違うよな…と思っていたら、おんなじ。「蠅」という字を、印象だけをもとに、間違って書いていたことが、はっきりした。
ちなみに、「黽」は。
音読みでは「ビン」「ベン」「ボウ」など。
訓読みでは「あおがえる」「つと(める)」。
部首名は「べんあし」。「あおがえる」を模した象形文字ということだ。
水黽、のほかに、水馬、飴坊、などとも書くらしいけれど、岩波の辞書で見つけたネット上での辞書では「水阻」には行き当たらなかった。
岩波って、この小辞典の重版時、僕が小学生の頃には、特別な出版社みたいな扱いの会社だったのに。へんなの。中国の古い書籍にでも出てくるのかな。
水馬は、漢字の組み合わせが印象的。わかる気がする。水の上を、走る、イメージ。
飴坊は、アメンボが、飴みたいなにおいを出していることが由来だとか。
子どもの頃、保谷にある「武蔵野」という中国料理店へ、家族で訪れていた。
立派な調度と広い店内。そして小さな池のある中庭。8歳くらいまでの記憶だ。
僕は、よくその庭に出て、池の敷石の上に乗っては。アメンボが何匹も水の上を滑っていくのを眺めていた。いくら見ていてもあきなかった。でも、アメンボのにおいをかいでみたことはなかった。
昔の人は、ふだんの生活で、昆虫のにおいをかぐことが多かったのだろうか。