47年前。1975年。

エリザベス女王が来日した。

 

来日を記念して展覧会が開かれた。父か母に誘われて行った。

 

伊勢丹美術館の記憶があるのだけれど、間違いだろうな、と思う。

女王の来日に合わせた展覧会がデパートの美術展というのは、ちょっとなじまない…。(調べたところ、国立西洋美術館だった)。

 

そのときに手に入れた「展覧会用の書籍」をもっている。

「パンフレット」ではない。ハードカバーの、ほぼ正方形の書籍で、薄い。

表紙は表も裏も厚さ2ミリくらい。展覧会名の下に、型押しのように見える冠が印刷されている。色は黄色とゴールドのあいだのような色。

本文ページは、表紙よりひとまわり小さい判型になっていて、半分が4色ページ、半分が1色ページだったように記憶している。カラーページには展示された王室の財宝写真が掲載され、白黒のページに女王と王室についての解説があったと思う。展覧会用の印刷物としては、特別な仕様だった。

 

それが、エリザベス女王を強く意識した二番めのできごとだった。

最初のできごとは、かなりさかのぼる。

 

シャーロック・ホームズ、かっこいい国旗。「女王の国」。イギリスに抱いたイメージのうち、「女王」の存在は、子どもの僕に、強烈な印象を残していた。

 

日本には天皇がいる。

社会そのものが、男中心に回っているように思える時代だったから、子ども心にも、世の中を治めるのは、男だと信じていた。童話の王様も、いつも男だった。

 

「女の人が王様の国もあるよ。女の王様は、女王様だよ」

「イギリスっていう国があってね、そこには今、エリザベス女王がいる」

と教えられ、とてもびっくりした。イギリスもエリザベスの名も瞬間に頭に刻まれた。

 

47年前、来日したエリザベス女王と昭和天皇は、会見をした。

イギリスと日本、女性の王と男性の天皇、ユーラシア大陸のあっちとこっちにある島国。いろいろなことが、対になった。そして、僕はイギリスに、特別な思いを持つようになったと思う。

 

もちろん、国王が女性であることは、イギリス史のなかでもたまたまだけれど、僕の人生では、一昨日まで、イギリスはずっと女王の国だった。70年間の王位。

その王位は、僕の62歳の誕生日が日本で過ぎた頃に、終わりを告げた。この先、誕生日のたびに、僕は女王を思い出すと思う。

 

彼女が昭和天皇との会見時に発した言葉がクローズアップされている。

「女王であることは孤独です。天皇陛下にはその孤独がおわかりになると思います」

 

自分を語りつつ寄り添う。

とてもすてきな言葉だ。