母がもらってきたドリルに読めなかった漢字がふたつ。ひとつめは「水黽」。
「水黽(アメンボ)」はアメのにおいがするところから、「飴坊」とも書く。
昔の人は、ふだんの生活で、昆虫のにおいをかぐことが多かったのだろうか。
というのが、前回の結び。
「椿象」。
ドリル中の、もうひとつの読めなかった漢字がこれ。
こちらは想像さえつかなかった。
正解は「カメムシ」。
なぜ、「椿象」がカメムシか。
「カメムシ」の呼び名の由来は、
上からの姿が、カメの甲羅みたいに見えるから、というのが一般的な解釈らしい。
悪臭のために、ありがたくない呼称も多く、
クサムシ、コキムシ、ヘッピリ。英語では stink bug (におう虫)。
でも、知りたいのは、「椿象」と書く理由。
素直に読むと、椿の象さん? 椿につく象みたいに見える虫? どこが象?
カメムシの正面アップの写真を見ると、ななめ上に向かって左右に触覚がのびているほかに、顔の中央から前に長い口吻が突き出ている。これを象の鼻と見立てたの?
でも、こんな口吻ってカメムシだけじゃない。
椿の咲く頃に現れる、口吻が象っぽい虫? 時期が少しずれていないか…。
「象」は「現象」などとつかわれて、「かたどる」という意味もあるから、羽の形や、羽を広げたときのカメムシのかたちが、椿を思わすのだろうか。
アメンボ同様、においがらみの説もある。
中国では、「椿」が表すのはツバキでなく、「香椿」というセンダン科の植物とか。
この木の若芽の独特のにおいが、カメムシのにおいに近いのでは、という説。
「象」は「かたどる」、ひいては「似ている」の意味も。
これなら、椿のにおいに似ているから、ということで、説明がつきやすいか…。
やっぱり昔の人は、ふだんから昆虫のにおいを気にしていたみたい。
カメムシのにおいは、現代でも気になるけれど。