>オリジナルフルアルバム

>タイトル:[(an imitation)blood orange]

>アーティスト:Mr.Children

>リリース日:2012年 11月 28日

>記事作成日:2022年 5月 12日

>1回目の感想はこちら






久しぶりに聴きました!


ミスチルの、デビュー30周年Week! この機会に、過去のミスチル作品をアルバム単位で聴き直しているところです。


本作は、実質的に最後の“小林武史プロデュースアルバム”になりましたね。次作『REFLECTION』以降は、セルフプロデュース体制に移行しているので(小林Pプロデュース曲も何曲か入ってはいるけども)。

そういう意味で、ぼくは勝手に、『シフクノオト』辺りから始まった“2期のミスチル”(詳細は過去記事参照)の終わりだと思っています。




『hypnosis』

配信シングル。(配信とはいえ)シングル曲、しかもこんな感じの重厚で壮大な雰囲気のロックバラードから始まるミスチルのアルバムって、他にない。唐突に始まって、一気に“ピーク”に持っていかれる。ちょっと珍しいタイプの配置だなーというのが率直な印象です。アルバムの終盤、ハイライト的なところに置かれそうな曲なのに。

結構、ボーカルテクニックを駆使しないとすぐに喉が潰れてしまいそうな感じの、難しいメロディラインという印象です…いや、ボーカリストじゃないんで分かんないですけど(笑) イメージの話。


『Warshmallow day』

もはや、前曲など無かったかのように(笑)、瑞々しさが溢れるカラフルなポップチューンへ。前曲が『I ❤︎ U』とか『SENSE』のような雰囲気を受け継いでいるとしたら、この曲は完全に『HOME』や『SUPERMARKET FANTASY』の系譜。

僕は個人的に、『エソラ』の双子のような曲だなーと思っています。『エソラ』から力強さと男臭さ(?)を極限まで抜いて、ちょっと中性的なまでにポップに振り切った感じ。ミュージックビデオも、(この時点で)40代に突入している人とは思えない感じの桜井さんが、ひたすらポップにキュートに歌って踊っている。ドリフみたいなボックスを踏んでる桜井さんなんか、他では一生見られないでしょう(笑)


『End of the day』

トリプルA面シングルの2曲目。ぼくはシングルCDというフォーマットに畏敬の念すら覚えているので(笑)、シングル表題曲と名乗る曲にはハードルを上げてしまいがちで。ぶっちゃけ、この曲は“シングル表題曲”というよりは“アルバム曲”っぽい雰囲気を感じてしまうんだけれども、爽やかで程よく力強さも湛えたバンドサウンドの耳馴染みの良さは疑いようがない。

前2曲は、バンドのアンサンブルというよりはストリングスや鍵盤などの音も合わせた“合体技”みたいなアレンジが特徴的だったけど、この曲はバンドの音を存分に楽しめます。


『常套句』

未発表の時点で、ライブで桜井さんが突如(一番だけ)弾き語りして…その時点で、虜。で、ドラマ主題歌になって、スタジオ音源をテレビ越しに聴いて、更に虜。満を持してCDリリースされてフルで聴いて、なお虜。アニメーションのMVを見て、虜というか感涙。ほんっっっと、大好きなバラード。

歌詞はこんなにも愛で満ち満ちているのに、どうしてこんなに切なく聴こえるんだろう。今もって謎。謎だけど、それがすんごく良いんだ。感情がぐちゃぐちゃになってどうしようもない時には、この曲を聴いて一旦落ちるとこまで落ちたら良いと思うんですよね。そしたらきっと、素敵なリスタートが切れると思う。

MVのラストだけ…そこ、そんなに救いのない結末にする必要あった⁉︎とは、未だに思う。


『pieces』

トリプルA面シングルの3曲目。これもまた、ぶっちゃけ、「シングル表題曲というよりはアルバム曲じゃない⁉︎」とはちょっと思う。

独特な浮遊感のある曲。ふわふわしていて、どこにも着地しない。悲しい曲なのか、穏やかな曲なのか、あったかい曲なのか、切ない曲なのか、未だに自分の中で判然としない。霧の向こうの景色を見るような、ちょっと掴みどころのないミドルバラード。


『イミテーションの木』

対して、この曲はとても分かりやすい。歌詞に込められたメッセージも汲み取り易ければ、アレンジもシンプルで分かり易い。気を吐いて本物を目指さなくても、イミテーションにはイミテーションにしか持てない良さや出来ない事がある。そういう事を、説教臭くもなく押し付けがましくもなく、自然に示唆してくれる曲。

派手さはないけど、味わい深い。


『かぞえうた』

東日本大震災のチャリティ目的で制作•配信された曲。当初、「アルバムにこの曲を無理に入れなくても良かったんじゃない?」と思うところもあったんだけど…2012年というタイミングで、クリエイターとしてのMr.Childrenが震災の影響を(多分)直接的に受けながらも制作したこのアルバムなので、今となっては「収録されていて当然だよなぁ」という気持ちになります。

極限まで飾り気を排して、シンプルで等身大の言葉と音によって希望を浮き上がらせている印象。刺激的な、カッコいい、“それっぽい”希望はこの曲にはなく、生きていればきっと光は見つかるだろうという控えめな希望が眩しい。震災は、確かに絶望だった…絶望からの最初の一歩は、飾り立てた希望なんかじゃないほうが良いに決まってますよね。華々しいポジティブは、くじけそうな人にとって刺激物でしかないから。


『インマイタウン』

超ぶっちゃけると、「なんか印象の薄い曲」という印象だったんですよ(苦笑) でも、今回聴き直したら、なんかすごい良かった! 何ででしょう、理由が分からん。焼肉ばっか食ってたのに、歳と共に漬物の旨さに気付くようになるみたいな感覚なんでしょうか(笑)  淡々と進む曲は、だけどピアノが洒脱でベースがメロディアスで…アダルティな魅力に満ちてる事に気付きました。

ミスチルは、季節感をあまり出さないイメージがあるんです。で、流行りモノや流行り言葉も殆ど出てこない気がするんです。時期や時代を限定しない事で普遍性を持たせようとしてるのかなーとか勝手に思ってたんですが…この曲は、年末の空気が色濃く出てるし“Twitter”なんていう固有名詞も出てくる。桜井さんの歌詞にしては、少し異色な感じがします。


『過去と未来と交信する男』

なんでしょうね、この、桜井さんが時々披露するぶっとんだ世界観。なんか、解釈次第では物凄く深い事やメッセージ性の強い事を内包している曲のようにも聴こえるし、でも単純に遊んでいるだけのような気もしないでもない。ミスチルはアツいメッセージソングが多いので、この曲は気楽に聴いていたいなーというのが個人的な向き合い方。

『SENSE Tour』でのオープニング曲。あのイリュージョンは印象的でしたねぇ。ミスチルは、剥き出しのパフォーマンスと生々しい言葉が持ち味のバンドですが、あんな芝居がかった事をするのもぼくは割と嫌いじゃない。


『Happy Song』

当時、毎日毎日めざましテレビでこの曲が流れてきて。後半は、そこそこのファンを自認しているぼくでもさすがに飽きた記憶があるな(笑)

まぁ、テレビで細切れでしかも同じ箇所ばかりエンドレスで聴かされるような特殊な状況下でなければ、とてもいい曲。

これもやっぱり、どこか落ち着いた雰囲気があるんですよね。メジャーの響きで、バンドの音も厚く、でもストリングスは軽やかに…そういう意味ではもっと華やかに聴こえてきてもおかしくないのにどこか落ち着いた雰囲気に感じてしまうのは、聴き手の問題か、震災直後のクリエイターの心境が出ているのか。


『祈り〜涙の軌道』

シングル始まりは珍しいって事を『hypnosis』のところで書いたけど、ラストがシングル表題曲ってパターンもこれまた希少ですよね。『BOLERO』『シフクノオト』『SUPERMARKET FANTASY』くらいか(結構あった 笑)。

当然ぼく個人の見解ですが…ミスチル史上、一番地味なシングルだと思ってます。いつも通りにストリングスがふんだんで鍵盤が艶やかなアレンジなんだけども、それでも、華やかさはあんまりないかなーと(別に、シングルには華やかさが必須だと言うつもりはありませんが)。これもやっぱり、震災から間もない作品というのが多少は影響してたりするんですかねぇ。と言う事で、あと10年くらいしたらもう一度改めて聴き込んでみたい曲。『インマイタウン』のように、その頃になれば激しさやインパクトみたいなところ以外の部分に興味が向くようになっていそうな気がするし、そういう状態で聴いたらきっと物凄く沁みてきそう。




そんな、計11曲。


落ち着いた雰囲気のアルバム。派手さは皆無ですね。

例えば『hypnosis』、エモーショナルではあるけれども“J-POP”としては重厚感がだいぶ前面に出ている。例えば『過去と未来と交信する男』、ユーモラスなストーリーテリングではあるけど“マスに響く”というよりはマニア向け。『Happy Song』だって、朝の情報番組で1年間毎日流れる曲にしてはメロディも展開もクセが強い。だから、割と、ツウ好みというか、長年のファンが喜ぶタイプの作品なのかなぁといった印象です。

理由は何なんでしょうね? 時期的に、震災の影響はゼロだとは言えないでしょう。でも、もしかしたら既に旧制作体制(小林PやOORONG-TOKYOスタジオを中心としたクリエイション)へのやり切った感を感じていた可能性もあるし、そもそも単純に本作がそういうコンセプトで制作されていただけという可能性もありますが。

そんな中で、一曲だけ瑞々しいポップネスを放つ『Marshmallow day』は良いアクセントだと思います。






お気に入りは、

#01 『hypnosis』

#02 『Marshmallow day』

#04 『常套句』

#06 『イミテーションの木』

#07 『かぞえうた』

#08 『インマイタウン』

#09 『過去と未来と交信する男』






この作品が好きなら、

•『風のクロマ』/レミオロメン

•『トビラ』/ゆず

•『三日月ロック』/スピッツ

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/

















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