>オリジナルフルアルバム

>タイトル:トビラ
>アーティスト:ゆず
>リリース日:2000年 11月 1日
>記事作成日:2015年 12月 28日





久しぶりに聴きました!

いや、ほんと久しぶり。
当時、“フォーク”デュオとして破竹の勢いを誇っていたゆずがリリースした、(ある意味)問題作ですよね。時に陽気に、時に儚げに、どんな喜怒哀楽もアコギ2本を基調としてきたお二人が、バンドサウンドを大胆に取り入れた本作。しかも、綺麗な言葉を紡いできた流れ自体をひっくり返すかのように、醜い部分やネガティブな部分も吐き出すように吐露した歌詞。
多分、“いわゆるゆず”が好きだった当時のリスナーには、かなりの衝撃だったんじゃないかと思います。ぼくは割と、アホみたいに素直に、「新しいなぁ」くらいにしか思いませんでしたが(笑)。



『幸せの扉』
一聴した限りでは“ゆずっぽい”、キャッチーで爽やかなポップチューン。でも、歌詞的に、それまでのゆずとは一線を画しています。それまでは“半径5メートル”といった感じの、身近で、日常的で、普段着な歌詞が殆どでしたが…この曲では、広義の愛が描かれています。前者が“君と僕”の距離感だとすると、この曲は社会とか、人間とか、文化とか、そういうものも内包しているような。
サウンド的に大きな変化を盛り込んだ本作ですが、この曲に関して言うと歌詞的な変化が顕著です。結果論ですが、この辺りから、今現在のゆずの片鱗が出始めているような気もします。
…とは言いつつ、当時のぼく(ハナタレ小僧)は「いい曲ぅ~」くらいにしか思ってませんでしたけどね(笑)。

『日だまりにて』
爽やかな曲調がむしろ異様に目立つ曲。この当時のゆずさんの作品群からすれば、むしろ直球ど真ん中と言えるはずの曲調なのに…他が余りにも“らしくない”曲ばかりのため、この曲がマイノリティに感じてしまうという。

『仮面ライター』
はい1発目の変化球、その名も『仮面ライター』。もちろん作者(北川さん)がそのまま個人的な心情を吐露しただけの歌詞だとは思いませんが、当時のゆずさんを取り巻いていたであろう空気が滲み出ちゃってますよね。多分、この時期、ご本人たちの思う自分とパブリックイメージとの間の乖離が物凄いことになっていたんじゃないかなぁと、そんな気がします。
曲自体は、妖しげな雰囲気と攻撃的な歌詞がインパクト大の、中毒性の高い曲。

『飛べない鳥』
シングル曲。確か、ゆず初の連ドラタイアップが付いていた気が。乾いたアコギのストロークがそこはかとなく儚さを漂わせる、秋の匂いがする作品。岩沢さんのハイトーンが、何とも胸を締め付ける。

『ガソリンスタンド』
泣ける程切ない曲。岩沢さんが、ソングライターとしてもコンポーザーとしても底知れない才能を持っている事をまざまざと見せつけられる曲。アコギのアルペジオとピアニカの、シンプルなミディアムバラード。“いわゆるゆず”が炸裂。数多あるゆずさんの楽曲の中でも、特に好きな曲です。

『何処』
おどろおどろしく、毒々しく、トゲトゲしいこの曲。声にはエフェクトがかかりまくり…というかメロディの無い“語り”だし。かと思うと、サビでは絶叫。当時の北川さん、“いわゆるゆず”が相当嫌だったんだろうなぁ。でも、こんなにトリッキーな曲にも合わせてくる…というよりむしろその雰囲気を率先して醸し出している岩沢さんのブルースハープさばきが圧巻です。

『ねぇ』
“カッコつけた”バラード、『ねぇ』。カッコつけたというのは別に悪い意味ではなく、単に、他の表現が見当たらなかっただけです。
前述のように“半径5メートル”でやってきたゆずが、その枠を大きく飛び越えた…ある意味、J-POP然としたものに敢えて飛び込んだかのような曲。ゆずに“バラード”はあったけど、レパートリーに“ロックバラード”が加わったのはこの曲くらいからではないでしょうか。

『嗚呼、青春の日々』
クレジットには無いけど事実上のアルバムバージョンでこの曲。イントロにちょいと一手間加えられてます。
これをシングルで切るというのが、当時のゆずの決意表明だったんでしょうね。MVで、初めて、北川さんがエレキ担いでましたしね。その事からしても、それがよく分かる。“ゆず的なもの”からの脱却。
ぼくは、“ゆず的なもの”が大好きだったのに、この曲にも一瞬で悩殺されましたけどね(笑)。

『気になる木』
岩沢さんらしいユーモアが炸裂。緊張感の高い曲が並ぶ本作にあって、一服の清涼剤とも言うべき肩の力の抜けた曲。なんだか、この曲を聴くとホッとするんです。

『シャララン』
北川さんのポップセンスが炸裂。過去作でいうなら『シュビドゥバー』のように、キャッチーでパンチの強いフレーズを軸にして展開する歌詞が特徴的。アコギメインのサウンドも、タンバリンやリコーダー等の簡易楽器を添えた構成も、何だか“狙ったゆずっぽさ”な気がします(笑)。

『新しい朝』
しっとりと、優しく。メロディはこんなに優しいのに、サウンドはこんなにまぁるいのに、なんでこんなに切ないんだ…いや、音が柔和だからこそ切ないのか。
確かに、新しい始まりというのは嬉しいだけでも悲しいだけでもないですよね。色んな気持ちがない交ぜになった、言うなれば機微のようなものが、上手に表現されたミドルバラード。

『心のままに』
シングル曲。これもまた、「よくこれをシングルで切ったなぁ」という感じの曲。アコギの音が中心ではあるものの、その硬質な空気感はそれまでのゆずとは明らかに異なる。書き殴ったような歌詞、叫ぶようなボーカル。その荒々しさは、それまで“近所の優しいお兄ちゃん”感満点だったゆずのイメージと真逆。
しっかしこの曲、8分の6拍子をギターでかき鳴らす感じも絶叫するように歌うボーカルも、すっごい気持ち良いんだよなぁ。いっとき、ひたすら毎日この曲をコピーしてた(笑)。

『午前九時の独り言』
前曲が「書き殴ったよう」だとすればこちらは「ひたすら書き連ねたよう」な曲でラスト。毒っ気は綺麗さっぱりに抜かれて、ただただ呟くような歌詞、そして曲調。アルバムのラストに配置されたこの曲は、どちらかというと何となく後奏のような雰囲気があります。
世相を反映させた歌詞は、だけど特定の誰かを追求したり糾弾するような風でもなく。自分自身と向き合うような曲。



そんな、計13曲。

ゆずの、最初のターニングポイントとなった作品だと思います。白か黒か、0か100かで考えてしまいがちなぼくにとっては、この振り切れ方は全く嫌じゃなくて、むしろ「おぉ~」って感じでした。比較論でしかありませんが、“半径5メートル”が新鮮であり特色だったゆずの、その反対側に振り切れた本作もまた独創的で唯一無二だったように感じます。
ゆずの話になると毎回言及している気がしますが…この時のゆずに比べて、最近のゆずはJ-POPというフィールドに埋没しちゃったような気がしてならないんだよなぁ。普遍的なアレンジも壮大なテーマの歌詞も、もちろんそれはそれで素晴らしくはあるんだけど…先人としてはミスチルでありサザンであり、後進からもコブクロであったりレミオであったり、そういう人たちがすでに切り込んでいるフィールドに飛び込んでいっているようで。もちろん、ライバルの多いフィールドに飛び込んでいくチャレンジングな姿勢も大事だと思うけど、ゆずはもっとゆずらしく、ゆずにしか拓けない道を進んでいって欲しかったんだけどなぁ。
いや、今でも新譜が出ると必ずチェックしてるんですけどね(笑)。

話が大いにそれました。
とにかく、このアルバムは、名盤。賛否両論分かれるところでしょうけども、ぼくの中では完全に名盤扱い。





お気に入りは、
#01 『幸せの扉』
#03 『仮面ライター』
#05 『ガソリンスタンド』
#07 『ねぇ』
#08 『嗚呼、青春の日々』
#12 『心のままに』





この作品が好きなら、
・『深海』/Mr.Children
・『Porkey Pie』/岩瀬敬吾
などもいかがでしょうか。





CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/










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