>オリジナルフルアルバム

>タイトル:IT'S A WONDERFUL WORLD

>アーティスト:Mr.Children

>リリース日:2002年 5月 10日

>記事作成日:2022年 5月 1日






久しぶりに聴きました!


ミスチルの、デビュー30周年イヤー!…という事で、過去作を改めて聴き直している最近です。

本作、デビュー日にリリースされてたんですね! しかも2002年リリースという事は、デビューからジャスト10年でリリースされた作品。尚且つ、リリースから今年でジャスト20年! つか、本作、20年も前の作品なの⁉︎   最近『Discovery』『Q』と立て続けに聴き直していて、その都度思うんだけど…ミスチルの作品って、「色褪せない」にも程があり過ぎるでしょ!(笑)20年って、新生児が大学2〜3年生ですよ? 新卒入社のペーペーが管理職になる頃ですよ?? 生まれた時に植えた記念樹は、もうきっと立派な木陰を提供してくれますよ???(笑) 20年というのをそういう尺度で捉えるともう“時代”レベルで入れ替わったような感覚になりますが、「この作品が20年前のもの」と聞くと、20年なんてのはほんのこの間みたいな錯覚に陥る程ですよ。




『overture』

イントロダクション。小林武史Pのセンスがのっけから炸裂。これからとんでもないものが始まるというワクワク感を、あくまでもクールでスタイリッシュなサウンドが煽ってくるから不思議。


『蘇生』

なんかもう慣れっこになっちゃってる感は否めないけれども、ヒットチャートを賑わすようなポップチューンの曲タイトルが『蘇生』って、まぁそこそこあり得ないですよね(笑) フツーはもっと、スカした横文字にするでしょうに。これとか『擬態』とか『皮膚呼吸』とか…言葉のチョイスがほんと独創的。言葉は独創的なのに、中身は普遍的。つまり最強。

メロディはキャッチー、アレンジはドラマチック、そして歌詞は希望と力強さが迸っている…スルー出来る要素がない。どんなに批判的な眼差しで聴いたって、好意的な感想しか出てこないレベルの完成度。


『Dear wonderful world』

凄くアダルティな雰囲気。大人の色気というか、ガツガツしてないスタイリッシュさ。対を成す『It's a wonderful world』よりも音数が少ない分、よりビターでアダルティな雰囲気が強調されている感じ。歌詞には申し訳ない(笑)けれど、こっちの曲はカプチーノってよりはブラックコーヒーな感じ。『It'sー』のほうが、よりカプチーノ感があるかなー(詳しくは後述)。


『one two three』

この曲、初めて聴いた瞬間から現在に至るまで、変わらず大大大好きなんだよな〜。歌詞の内容にしろアレンジにしろボーカルにしろ、適度に肩の力が抜けていてラフな感じ。このアルバムは、キッチリカッチリ組み上げられたフォーマルな印象の強い曲が多いけれど、この曲はカジュアルな雰囲気。

でも、ラフにユル〜ンとしているばかりでは当然なくて(そこはミスチルですからね)、ハッとするようなフレーズが散見。基本的には失恋ソングなんだけれども、生活する中でこの歌詞にダブる景色、思い当たる感情、共感出来る思考が沢山あるんだな。

そして、アウトロにてタイトルの“伏線回収”(笑) この辺の遊び心には、前作『Q』の名残りを感じます。


『乾いたkiss』

とにかく、圧倒的に洒脱でこの上なく洗練されたアレンジが印象的。歌詞は、しっくり来ているとは言えない男女の、“物語”の終盤のお話…だと思う。「だと思う」というのは、オケがあまりにもスタイリッシュ過ぎて、“音だけで、完成した世界観を表現してしまっている”感じなので、歌詞が表現する世界観とサウンドが表現する世界観という2つの世界観を、同時並行的に見せられているような気になっちゃって。ぼくは後者のほうに注目が向きがちなので、未だに歌詞のほうのストーリーを飲み込みきれていない感触があるんですよねぇ。

取り敢えず、『クラスメイト』とか『Heavenly kiss』の世界観が好きな人なら、間違いなく好きだろうなーという曲。


『youthful days』

これもまたスタイリッシュな、流れるような心地良い軽快さと爽快さが特徴的なポップチューン。

シングル曲だったこの曲は、確か新ドラマの告知CMでサビが流れているのを聴いたのが最初だった気が。声は桜井さんなんだけど、曲調がちょっとそれまでのミスチルとは違う感じがしたので、「ミスチルなのか?ミスチルっぽい別人なのか⁉︎」と半信半疑だった記憶があります。多分、当時のぼくはミスチルに対して、もっと分かりやすくてコッテリした作風のイメージを持ってたんだと思います。例えるならばマックのハンバーガー的な。対してこの曲(というかこのアルバムの収録曲は全体的に)は、表参道沿いのお洒落なカフェで出てくる(量が物凄い少ない)カフェメシっぽさがあって、だから半信半疑だったんです。結果ミスチルだったし、ぼくはこの曲やこのアルバムをもって「ミスチルったら、お洒落なカフェメシも出せるんだ」と知るに至った訳ですが。


『ファスナー』

のちにライブの常連曲になり、スガシカオさんを招いてのセッションが披露されたり、更にはそのスガさんのアルバムで“スガシカオの作品”として桜井さんがフィーチャーされたバージョンが音源化されたり…色んな展開が見られた曲(短編映画化もされてましたね)。スガさんとのセッションバージョンもスタイリッシュで好きだし、音源化されたものはアコギのみという武骨なアレンジがインパクト大だったりしたけれども、やっぱりアレンジとしてはこのオリジナルバージョンが一番好きかなぁ。好きというか、しっくり来るというか。

「こんなコード進行ってあるんだ〜」というコード進行や、“毒々しさ”を完璧なコーティングで“美しさ”に昇華させた歌詞など、本作収録曲の中でも特に完成度が高いと感じる曲。歌詞はスガさんの作風へのオマージュらしいですが、ぼくにはある意味で桜井和寿らしさの極北のようにも感じられるんですよね。

 

『Bird Cage』

ひんやりとした空気に背筋がゾクっとする曲。“秋の風が冷たいな”レベルではなく、ドライアイスのような圧倒的なひんやり感。やけどレベルの。近年のミスチルには見られなくなった、救いが無いというか取り付く島もないというかそういう感じの負のエネルギーに満ちた曲。

この曲は、歌詞もさる事ながら、リズム隊(特にドラムス)が印象的だと思います。あんなにアツいドラムを叩くJenさんですが、こんなに冷たくトゲトゲした音も出せるんだな〜という。なんか、一音一音が細くて鋭利な針のようになっていて、いちいち刺さってくる感じがするんです。最近のミスチルでは、まぁ出会う事のないタイプの音。


『LOVEはじめました』

曲タイトルのユーモラスな雰囲気とは裏腹に、シニカルでダークで猥雑で毒々しい曲。社会を風刺する側面もありつつ、でも批評的(=外側から対象を攻撃する立場)というよりは自嘲的というか、自分も含めた社会全体の混沌を嘲笑うような、諦めるような、揶揄するような曲。

この曲もライブの常連ですが…サッカー選手の名前がその時々で変遷していくところに、桜井さんの桜井さんらしさを感じたりする(笑) この方は、どこまでサッカーが好きなんだろうか。映像や照明等の演出も含めたライブでのパフォーマンスが、凄く好きです。


『UFO』

急に「ミスチルっぽい」曲に切り替わって驚く(笑) 爽やかで、耳馴染みが良くて、恐ろしく人懐っこい。それでもやっぱりそこはかとなくシニカルで、ニヒルで、笑って済ませられないレベルのシリアスさを隠し持っている側面もあって…そういうのが内包されているところまでも含めて、凄く「ミスチルっぽい」。


『Drawing』

本作随一のスローバラード。音数が少なく、なおかつ音像が淡いオケ。そこに、呟くようなボーカルが重なるところから曲がスタート。オケの雰囲気は終始淡く繊細でメロウに展開する反面、ボーカルはサビで叫びにも近いエモーションを発揮する。それは悲痛なようにも聴こえるし、高らかな宣告のようにも聴こえるから不思議。

去年の夏、ap bank関連のライブ『ワン・バイ・ワン・プラス』にて桜井さんと小林武史Pという編成によるこの曲を聴いたんですが…その時、この曲と再度“出逢った”感覚があるんですよね。元から好きな曲ではあったんだけれども、家族が出来てその家族と一緒にこの曲を聴いた時に、なんかこう新しい曲に出会ったみたいな新鮮な衝撃があって。守りたい人(そして守ってもらいたい人)と一緒にこの曲を聴いた時に、なんかもう歌詞のワードひとつひとつにいちいち同意してしまって。涙を堪えるのがしんどかったんですよ。

大切な人たちを想いながら、聴きたい曲。そして、余裕がなくなって独りよがりな思考になってきた時に、これを聴いて改めて大切なものを再認識したい曲。


『君が好き』

シングル。MVには窪塚洋介さんが出てましたねぇ。例えば『口笛』のように、また『Sign』のように…ミスチルが時おり繰り出してくる、「ミスチルらしいシングル曲」。ライト層のリスナーが「これこれー!」と言うような。

非常にマイルドな味付け(アレンジ)。親しみやすくて、可愛らしくて、ほんのちょっとだけほろ苦さもあって。メロディも分かりやすくて、ボーカルも優しくて、演奏はもっと優しい。リリース当時、まだまだガキンチョだったぼくはちょっぴり「甘ったるいな」くらいに思ってたフシもあるんですが、今聴いたらフツーに良い(笑) そもそも、このアルバムにおいてこういう曲がある事で、凄く全体のバランスが良くなってるなぁと思った。


『いつでも微笑みを』

フレンドリーで可愛らしく、小ぢんまりとしていて愛らしく、ハンドメイド感があって愛おしい曲(“愛”ばっかりだな 笑)。イメージ的には、女の子がこぞって持つファンシーグッズみたいな曲(笑) それでも歌詞には、「急な不幸」「命は果てるもの」「もし僕がこの世から巣立って逝っても」など、割と直接的に死を思わせる表現が多用されていて。そう考えると、曲調をポップでキュートにしないと過度に重苦しくてただただ“苦い”だけの曲になっちゃうという懸念があったのかもなーとか邪推してみたり。

自分に子どもが出来て以降、「もし今ぼくがポックリ逝っちゃったら…」とか「自分が逝く時までに家族のために出来る事は…」みたいな事を考えてしまってどうしようもない不安と混乱に苛まれる瞬間が出来てしまったんですが、今回改めてこの曲を聴いてみて、なんかその不安と葛藤に1つの答えを貰ったような気がしました。ぼくも、「そう思えば何とかやっていけそうだよ」


『優しい歌』

今回久しぶりにこのアルバムを聴き直してみて、前曲からこの曲という曲順が凄く素敵だなぁと初めて思いました。生と死に想いを馳せる前曲のあとに、パワフルで力強く自身を鼓舞するような歌詞のこの曲が聴こえてくる事で、頭の中で沸き起こっていた葛藤とか不安とか悲観的な予測とかを、プラスのエネルギーに変えて発散する事が出来るようになるというか。「四の五の言ってても始まらん、やるっきゃない!!!」に出来る感じがして。だから、この流れが好き。

キャリアと共にどんどんスケールアップを続けていたそれまでのミスチルの音楽ですが、この曲はそれを一旦リセットするように、非常にシンプルで単純明快なアレンジになっていると感じました。極論すれば、サポートミュージシャンやシーケンスが無くても、メンバー4人だけでプレイしても“目減り感”がゼロというか。キーボード、ストリングス、ブラス、打ち込み、そしてライブでは映像などの舞台演出も含めて“トッピング全部乗せ”みたいなバリエーションの豊かさがミスチルの音楽の特徴だとは思うんですが、お品書きが“ラーメン”のひとつのみみたいな職人気質なラーメン屋みたいな良さをこの曲からは感じて、一周回って新鮮だった記憶があります。それから更に時を経て、今ではそのどちらのアプローチでも違和感なくやれる強靭なバンドになったとも思いますが。


『It's a wonderful world』

ラストチューンにしてタイトルチューン。3曲目の『Dearー』は、この曲の言わば予告編みたいな感じ。こちらは、サビや大サビが加わった“完全版”。

『Dearー』のところで「『It'sー』のほうがカプチーノ的)と書きましたが、それはこの曲が、苦味を煮詰めたような濃厚な大人っぽさを湛えていて、だけど同時に世代を問わない耳馴染みの良さやキャッチーさも併せ持っている気がするからです。ちょうど、高濃度で抽出したコーヒーに泡立てたミルクを足して飲む、カプチーノのように。

だって、この曲、サビのメロディのキャッチーさとかって相当なモノですからね。サウンドがエスプレッソコーヒーで、メロディラインは泡立てミルク。




そんな、計15曲。


ミスチルの各アルバムに年齢を当てがっていくなら、このアルバムはだいぶ年齢が上だと思うんですよねぇ。“青年期”って感じ。最新作『SOUNDTRACKS』で一気に高齢期手前くらいまで行った感じはありますが、それまでの作品で言うと、もしかしたらこのアルバムが一番オトナなアルバムだったかもしれない(ちなみに児童期が『Everything』で、ハイティーンが『REFLECTION』で、、、※異論は認める)。


当時はあんまり気にならなかったけど、今振り返ると結果論として、このアルバムだけなんかちょっと、他のアルバムとの相関が感じられない異色の佇まいを感じない事もない。

例えば『HOME』と『SUPERMARKET FANTASY』には何となくだけど連続性を感じる(更に言うと、その次の『SENSE』にはその2作に対するアンチテーゼ的な意味合いでの相関を感じる)し、『シフクノオト』と『I ❤︎ U』には反対に“表と裏”的な意味合いでの因果関係を感じる。でも、この作品にはそういうのがあまり感じられないというか。強いて言うなら同時期に出たベスト盤(『』『』)と結びつきがあったりするのかな?とは思いました。今度、30周年の記念に出るベスト盤は『Mr.Children 2011-2015』と『Mr.Children 2015-2021 & NOW』だそうですが、この“& NOW”と同じような位置付けが、当時のこのアルバムだったのかなぁ〜なんて。






お気に入りは、

#02 『蘇生』

#04 『one two three』

#06 『youthful days』

#07 『ファスナー』

#09 『LOVEはじめました』

#11 『Drawing』

#13 『いつでも微笑みを』

#14 『優しい歌』






この作品が好きなら、

・『TIME』/スガシカオ

・『Documentary』/秦基博

・『Young Love』/サザンオールスターズ 

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/

















ぼくの、もう1つのブログもご贔屓に!