Bo Diddleyについては、以前も書いたように、50~60年代の全盛期のBo Diddleyは少々アルバムを量産し過ぎの感は有るけれど、TheBeatles、StonesやKinks、The Animals、Pretty ThingsやThe WhoといったBritish勢や米国のGarage Band勢に多大な影響を与えた偉大なるBlues、R&B、Rock and Rollを融合した独自の音楽のOriginatorとして存在していた。その後、60年代後半以降、目まぐるしく変化/多様化/発展していくR&B、Soul、Rockの大きな波に巻き込まれながらも試行錯誤を繰り返していくDiddleyは、その特異な存在感を発揮していく。James BrownやSly & The Family Stone、P-FunkといったFunk勢の台頭が目立つようになった70年代初頭に、Diddleyがぶっ放した傑作は、その後のDiddleyがFunky Rock路線へ舵を切るきっかけともなるFunkの傑作となる本作であった。単独名義のOriginal Albumとしては65年リリースの『500% More Man』から5年ぶりの作品となる本作では、Back Up Singerでもあった'Cookie V' (Cookie Vee)ことCornelia Redmondと当時DiddleyのPartnerだったKay McDaniel、Organ奏者のBobby Alexisの3人に楽曲は任せて、自らの楽曲は1曲もないのが潔い。そして本作は、68年にMuddy Watersがリリースした『Electric Mud』やHowlin' Wolfの『The Howlin' Wolf Album』といった賛否両論のChessがお膳立てしたPsychedelic Funk Bluesな問題作とは少々趣きが異なる作品かもしれない。なぜなら嫌々アルバムを作ったMuddyやWolfと違って、ここでのDiddleyは、OrganのBobby Alexis、ベースのChester Lindsey、ドラムスのClifton Jamesらと生き生きとFunkを演奏して漆黒のVocalを炸裂させているから。洗練や成熟を目指さず、ひたすら、土くさくてどす黒いFunkに向かうDiddley、それは必然であったのかもしれない。15年前にCheckerから世に出し、その名を知らしめた“Bo Diddley”はFunkの源であるSub-Saharan African Musicの伝統に由来するAfro-Cubanで一般的な3-2 Claveから発展したPrimitiveなBo Diddley Beatが鳴り響く名曲だったのだから。
『The Black Gladiator』はBo Diddleyが70年にCheckerからリリースしたアルバム。まずジャケットのMetalというか、Judas PriestのRob兄貴でっかみたいなCostumeでキメたBoさんに呆然。
アルバム1曲目は“Elephant Man”。ご機嫌なギターのRiffにBobby AlexisのOrganが唸りを上げる。DiddleyのVocalも気合入りまくりでどす黒いShoutもキマっている。
“You, Bo Diddley”はOrganをバックにDiddleyとCookie Veeの掛け合いがイイ感じ。
“Black Soul”もOraganが最高で、気怠い女性Chorusとイナタいギターも泥くささと共に、この時代らしいSwampな香りが漂うところが素晴らしい。
“Power House”は“Bo Diddley”と共にDiddleyが最初にCheckerに録音した“I'm a Man”をFunkyに再現したナンバーで、ここではBilly Boy ArnoldのHramonicaはないがBobby AlexisのOrganがCookieと共に盛り立てる。
“If The Bible's Right”は次作以降、顕著となるSwampな風が吹くFunky Rock路線。
“I've Got A Feeling”はイナタいギターのRiffと女性Chorusとの掛け合いがご機嫌なEarthyなFunky Rock。
“Shut Up, Woman”も“I'm a Man”の発展形でOrganが絶品である。
“Hot Buttered Blues”はLazyなSlow Bluesで、Maxwell Streetの時代に遡りChicago Bluesに捧げる貫録タップリの歌いっぷり。
これまたご機嫌なギターのRiffで始まる“Funky Fly”。コレだよ、コレのFunky Rockなインスト曲。
アルバム最後を飾るのは“I Don't Like You”。Opera風のVocalで始まりCookie Veeが絡むHumorousなナンバー。この辺もDiddleyお得意のパターンではある。
◎Elephant Man/Bo Diddley
(Hit-C Fiore)