Another Dimension/Bo Diddley | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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  昨年の6月、天国へ召されてしまったBo Diddley。Bo DiddleyのJungle Beatともいわれる、あのBeat、あのギターは永遠に生き続けるだろうし、Boの名前も生みだされた曲の数々も人々の心にずっと残っていくだろう。いうまでもなく自分の大好きなRolling Stones英国勢に多大な影響を与えたので、個人的にはBo Diddleyに思い入れがありまくりだ。Jeff BeckにもEric ClaptonのギターにもBoのギターを感じる時がある。さらにJoe StrummerJohnny Marrのギターにも感じる事がある。英国の音楽シーンへの影響といえば、64年当時の英国では珍しい黒人音楽のCOVER満載のデビュー・アルバム『The Animals』の一発目“The Story of Bo Diddley”で、AnimalsEric BurdonBo Diddley Beatにのせて歌った。そこには黒人音楽、中でもR&Bに対する愛情と感謝の気持ちが感じられた。自分はStonesやPretty ThingsThe WhoによってBo Diddleyを知ったのだが、初めて聴いた時にあまりにPunkな音楽性に驚いてしまった。そのあまりにPrimitiveGarageFunkyな音楽性。Africaにまで遡るであろう人々を興奮させ踊り続けさせる音楽の持つ根源的なMagicを、その魅力をBo Diddleyは教えてくれた。African Americanの並外れた快感原則を身につけた人々が作り出した音楽が英国や、そのほかの国々にまで伝わり、その音楽の持つ計り知れないパワーが与えてくれるものがある。それは時代や人種やジャンルの壁を越えてCrossoverされた音楽の本当の楽しみなのかもしれない。


 本来であれば全盛期のBo Diddleyの音盤について書くべきだろう。60年代半ばまでにChessに残された作品は素晴らしい。しかし、あえて70年代初期の、しかも他人のCOVER中心のアルバム『Another Dimension』をあげてみる。一般的に60年代後半から、この時期のBo Diddleyは全盛期の勢いを失い、低迷していた頃といわれている。Live活動は続けていたけれど、かつての人気者Bo DiddleyはRock全盛時代の中でOldies扱いされて、もがいていた事は容易に想像できる。Plastic Ono Bandとツアーしながらも、ただの懐メロ大会に終わらせないぞと思っていたはずだ。

Another Dimension』は71年の作品。JBの仕事などで有名なBob GalloProduce。本作はNYで録音されている。 前作『Black Gladiator』でもRockやFunkを取り入れたBoが必死に踏ん張っていた。本作では、これが吉と出るか凶と出るか3曲以外はすべてCOVERで挑んできた。盟友Jerome GreenMaracasはもはやないけれどAl Kooperを従えてBo Diddleyは勝負に出た。正直COVERに選んだCCRの作品は微妙。CCRは大好きなグループだが、COVERしている3曲はBoには全然似つかわしくないC&W色の強いナンバーである。またCOVERよりオリジナル3曲の方が当然だが、Boらしさが出ていて出来が良い。これじゃ、普通だったら、とんでもない失敗作に終わってしまうはず。ところが、このアルバムは今聴くとFunky Rockとしてかなりカッコイイ出来になっているのである。ProducerのBob Galloという人が実はキモではないだろうか。白人ながらJames BrownBen E. Kingなどとも仕事をしているJazz出身のギタリストでもあり、ProducerとしてもEngineerとしても凄腕である。実に太くて黒いGrroovyなノリを出しているのは素晴らしい。この人のソロなんか聴くとPlayerとしてもスゴイのが良くわかった。

さて、しょっぱなのThe Bandの“The Shape I'm In”で重心の低いBottomを聴いたら納得の出来。

Al Kooper作の“ I Love You More Than You'll Ever Know”は素晴らしいCOVERだ。魂入ったVocalとKooperのOrganが泣ける。

Pollution”はFunkyで、このアルバムで1番気に入っている作品。

ジャム・セッション風の最後の曲“Go For Broke”はBo Diddleyは直接関与していないといわれている。それでも、あえて気持ち良くて腰が動き出すナンバーを収録したBo Diddley。

あのTremoloのきいたギターと、Bomp, ba-bomp-bomp, bomp-bompの精神は生きているのだろう。

(Hit-C Fiore)