世の中には何をやっても許されてしまう人がいるのかな。時として悪戯が過ぎるDaevid Allen翁も「まぁ、お爺ちゃん、またヤンチャな事して。」などと言われているのだろうか?オーストラリアに生まれ、Beat Generationに影響を受けて世界中を放浪してきた筋金入りの自由人。Parisに流れ着きBurroughsやSun Ra、そして運命のRobert Wyattとの出会い。Canterburyの連中の仲間入りを果たし、せっかくSoft Machineを結成したのにParis公演後にオイタが過ぎてイギリスに再入国拒否されて、やむなく脱退。Parisに戻ったDaevid Allenは、これまた、かつて運命の出会いを果たしたGilli Smythと活動する。そして68年の五月革命(May 1968)。資本主義や帝国主義を嫌い、古い価値観を破壊する学生や労働者達の運動に触発されたかのような活動を続けていたAllenは公安警察にマークされてしまう。Gilli Smythとスペインのマジョルカに逃れたAllen達はDidier Malherbeと出会う。彼らは69年にParisに戻りGongを結成する。
自由気ままに生きるDaevid Allen翁のようになりたいけれど、それは見果てぬ夢である事は先刻承知だ。だから、せめてGongを聴こう。
『Camembert Electrique』は71年のアルバム。このすべての制約から解き放たれたかのような浮遊感は一体何なんだろう?放り出された果てしない宇宙は翁のInner Spaceなのか?後に腕利きのMusisianを集めて完成度の高いJazzrockを聴かせる後期Gongも好きだけど、この時代のGongの魅力には敵わない。個人的にPip Pyleが参加しているのもポイントが高い。大好きなRadio Gnome Invisible3部作の祭りの準備って感じがたまらない。Samplerのない時代にTape CollageによりLoopさせる手法は名作『Continental Circus』でも存分に発揮された。重要なのは翁の子供のように天真爛漫な遊び心であろう。パートナーGilli姐さんのSpace Whisperが虚空を彷徨う。満月の夜に録音されたってホント?
いきなりテープ操作によりP-Funk真っ青な奇妙な声で始まる“Radio Gnome Prediction”からして貫禄充分。
Didier MalherbeとPipが活躍する“You Can't Kill Me”は切れ味鋭い演奏とオトボケ翁の脱力具合の対比が最高。
シドのシナトラな“マイ・ウェイ”も逃げ出す翁の自分探しTalk満載の“I've Bin Stone Before”は途中でFreeな雰囲気すら漂わせつつグシャグシャな展開をみせる涙とお笑いのGongワールド。Allenマジック炸裂。
“Wet Cheese Delirum”は、おフレンチなチーズ・ロックだ。Tapeの魔術師はノイズとSamplingの先取りか。
“Fohat Digs Holes In Space”はサイケでジャズでミニマルでアゲな雰囲気を、やっぱりオトボケ翁とSpace Whisperがかき回していく展開、最高。
“Tried So Hard”はフォーキーな中に人生をなめきってるのか、あきらめているのか、いや何も考えていない。Love&Peaceな翁と姐さんはサイケデリックなジョンとヨーコ状態、素晴らしい。
(Hit-C Fiore)