80年代のUK Soul Sceneは本当に充実していた。なんといってもJazzie B率いるSoul ii Soulが女性Reggae TrioのBrown SugarからAfrodiziakを経たCaron Wheelerを擁して“Keep On Movin'”を89年にリリースした時の衝撃は大きかった。彼らの同年にリリースされた1stアルバム『Club Classics Vol. One』は、多様性を持った、この時代の輝かしいUK Soulの象徴であり金字塔であろう。また、88年にデビュー・アルバム『So Good』をリリースしたMiica ParisやThe Jamの82年のTourに参加したSteve NicholとCarl McIntosh、Jane EugeneのTrioであるLoose Ends、70年代から活動してきたT.C. CurtisやPhil FearonのGalaxy、Jellybeanにも抜擢されたSteven Dante、そして米国からやってきたTerence Trent D'Arbyなど、今思えば90年代そして現在へと連なる音楽性も人種も玉石混合の、そして英国らしさを失わない多様性に満ちたUK Soulは、この時代に一気にClubに集まる若者やDJらも巻き込んで花開いていく感があった。勿論、そのBackgroundには60~70年代に英国のSoul Musicを追求していった音楽家たちによって培われてきたものであった。華やかにSceneに登場した彼らの裏方には、そういったMusicianの名前を見つけることができ、それを目にした時になるほどと思わせられたものだ。本日ご紹介するThe Pasadenas、80年代後半に鮮やかに登場した英国の5-Piece Vocal Groupである。彼らのデビュー・アルバムに鍵盤奏者として参加し、楽曲も提供し、半数の曲でProducerを務めるPete Wingfieldもまた、60年代から活動してきた英国の燻し銀の音楽家である。69年にJellybreadというバンドの鍵盤奏者として登場し、The Keef Hartley BandやZombiesのColin Blunstone、Chris Rea、Bryn Haworth、そしてOlympic Runnersらの大好きなアルバムで、その名を目にしてきた才人である。本作はThe PasadenasというSoul、Funk、R&B、 Doo Wopに強く影響を受けた若者たちの生命感に満ちた勢いとバックの演奏者も含めたMusicianshipが融合した80年代UK Soulの知られざる名盤である。このアルバムには入っていないけどThe Jackson Sistersの“I Believe In Miracles”も彼らのCoverで知ったのであった。
『To Whom It May Concern』はThe Pasadenasが88年にリリースしたデビュー・アルバム。
アルバム1発目の“Funny Feeling”。この時代にはありがちなSynthesizerの出だしではあるが、Soulfulな歌声が期待をも出せる。高らかに鳴らされるHorn隊とCoolに呼応しながら徐々に登りつめていくかのような歌いっぷりが良い。そしてChorusもじわっと来る感じが良い。
The Chi-Litesの“Living In The Footsteps Of Another Man”もBritishなLovers Rockな香りが微かに感じられる鍵盤のバッキングとChorusが気持ち良い。
Doo Wopな“Enchanted Lady”は彼らの実力が感じられる息のあった見事なChorusに注目。
イントロから惹きこまれる“New Love”。バックの演奏も素晴らしいが特にJulian CramptonのFunkyにウネリまくるベースが最高。キレの良いHorn隊と爽やかにビシバシとキメるChorusも素晴らしい。
躍動感に満ち溢れた“Riding On A Train”、この勢いは文句なしに素晴らしい。ここでもJulian CramptonのベースとChorus、Horn隊が最高。
“Give A Little Peace”はSoulfulなVocalとChorusのかけ合いにゾクゾクさせられるMidium Tune。
Pete WingfieldとPasadenasとの共作“Tribute (Right On)”は激カッコイイ全英チャートTop 5獲得の名曲。特にベースが唸りをあげながらMotownのMusicianの名前が読み上げられる後半は鳥肌モノ。
Tempoを落として雰囲気タップリの“I Really Miss You”。
ヤンチャで男気漲るメンバーの魅力炸裂の“Justice For The World”。
最後をシメるのは高揚感に満ちたイントロからBassブリブリのFunkに展開する“Something Else”。キレキレのHorn隊やChorus、短いながらHammondソロもカッコイイ。しかし何といってもJulian Cramptonのベースに尽きるのだ。
◎Riding On A Train/The Pasadenas
◎Tribute (Right On)/The Pasadenas
(Hit-C Fiore)