ソフトバンクCDO(総括)
ソフトバンクの財務について近日また書いてみようと思っているうちに例のCDOがデフォルトしてしましました。まあ、予想の範囲内ですが。この案件はす
でに信託に現金を拠出済みですので、CDO自体が全損とはいえキャッシュフローには影響がありません。また償還可能性についても、みずほCBが債務履行引
受をしていますから社債権者にも影響しませんね。それでも、ウェブを眺めると本件は不透明だとかよく分らないといったコメントも散見されるようですから、
仕組みの絵を挙げておきます(この件についての四半期報告書の注記や決算資料のPPTは個人投資家には確かに不親切です)。
(ソフトバンクのリーガルディフィーザンスのしくみ:まとめ)
若干解説をしておきます。
(1)ソフトバンクはWBSによるファイナンスを実行する際に、金融機関からの要請で公募社債750億円の債務を実質ベースで減らす必要がありました。
(2) しかし公募社債の買戻しは実務上困難なので、リーガルディフィーザンスを選択しました。リーガルディフィーザンスはBS上の負債圧縮はではありませんが、 債務の履行義務を実質的に外出しする効果があります。ここでの方法としては、「信託型デットアサンプション」を利用しました。
(3)外部者に債務を移転するには、
イ 免責的債務引受
ロ 重畳的債務引受
ハ 債務履行引受
ニ 地位の譲渡
の いずれかの形態になります。イはこの場合ソフトバンクに代わってみずほCBが全面的に償還義務者になるものですが、おそらく公募社債の条件として社債権者 集会でも開いて可決されないと無理でしょう。ロはソフトバンクとみずほCBが重畳的(併存的)に償還義務を負うものです。これも手続的に選択は困難です。 ハはソフトバンクが社債権者に償還義務を負うのですが、みずほCBはソフトバンクに対してその履行を保証するというものです(社債権者に直接保証している わけではない)。ニは債権債務関係自体をみずほCBに譲渡するもので、この選択も手続的にほぼ無理でしょう。したがってハしか使えないのです。
(4) しかし履行引受契約をしたからといって、ディフィーザンスが実現するわけではないので(履行の保証を受けたにすぎない)、ソフトバンクは償還資金を外部に 積み立てておく必要があります。そこで現金を拠出して解約不能な他益信託を設定することでディフィーザンスを実現するとともに、信託ではCDOを買うこと により、元利弁済に充当するわけです。
(5)ただし、購入するCDOはハコにすぎないケイマンSPCが発行するので、SPCとしては担保 資産を買い、自分の信用補完をしています。これがAAの債券というわけです。SPCの発行するCDOは、見合いの資産はAAの担保債券になりますが、これ だけでは低クーポンなのでCDOのリターンを確保できません。そこでスワップカウンターパーティとクレジット・デフォルト・スワップ契約(CDS)契約を 結びます(クレジットのセラー=売り手になる)。スワップカウンターパーティは、本件全体をアレンジした金融機関(ゴールドマン・インターナショナル)の 場合もあれば、他の金融機関の場合もありえます。何も問題が起きなければ、SPCはプレミアムを受取り、CDOのリターンに充てます。高めのリターンを実 現するためには高いプレミアムが必要ですが、そのためには後述する参照資産のうちメザニンまたはエクイティ部分のリスクをとることが避けられなくなりま す。なお今回利用したCDOはシンセティックCDOといいますが、これはクレジットのある資産を直接SPCで購入せず、スワップを使ってクレジット資産の リスク部分だけを取り出していることと、そのクレジットが単一の社債やローンのリスクではなく、合成された資産プールのリスクになっていることの2点が特 徴です。この点をもう少し。
上記で、リターンを上げるにはリスクテイクが避けられないと言いましたが、単にハイイールド債などを買っていたの では危険です。そこでスワップカウンターパーティは複数の銘柄(100~200銘柄)に分散した資産のプールを作り、それを裏づけとして、安全度によって 上から「シニア」「メザニン」「エクイティ」などと切り分け、それぞれ異なるリターンで投資家に売るわけです。当然、エクイティの信用度はシニアなどより 低いのですが分散が効いているので(倒産リスクの相関係数が小さい)、単一銘柄よりロスになる可能性を抑えられるというわけですね。
さ て、社債の満期まで何事も起こらなければ償還しておしまいです。一方、スワップカウンターパーティが参照している資産に信用自由(デフォルト)が生じれ ば、その程度に応じてクレジットリスクが実現して、SPCは相手方にロスの補填をしなければなりません。参照資産というのは耳慣れない用語ですが、クレ ジット・デリバティブにおける原資産に該当します。この場合、原資産に価格変動が生じてインザマネーになったため、オプションが行使されるわけです。荒く いえば損害保険の事故が発生したのと同じ状況です。ソフトバンクは160銘柄中8銘柄のデフォルトで全損ですから、メザニン以下の水準を参照していたこと になると思われます。
本件は、以前に書いたように既に償還資金を手当てしたものであるし、キャッシュフローにも影響しないのでいま さら取り立てて騒ぐものではありません。またこのような仕組みを利用したことについても、参照資産のリスクがここまで悪化するとの予想は不可能だったで しょうから、危険だったという指摘をむやみにしても当らないと思います。もちろん、今後の取組みでは参照資産でCDOスクエアード(CDOをプールしてト ランシェ化して再度CDOとして再組成されたもの)などがあれば中身の見立てにはより注意が必要ですし――まあ、そういう資産を使うことは当面無理でしょ うが――、そうした仕組みを利用する際の説明のわかりやすさの確保も不可欠でしょう。
(ソフトバンクのリーガルディフィーザンスのしくみ:まとめ)
若干解説をしておきます。
(1)ソフトバンクはWBSによるファイナンスを実行する際に、金融機関からの要請で公募社債750億円の債務を実質ベースで減らす必要がありました。
(2) しかし公募社債の買戻しは実務上困難なので、リーガルディフィーザンスを選択しました。リーガルディフィーザンスはBS上の負債圧縮はではありませんが、 債務の履行義務を実質的に外出しする効果があります。ここでの方法としては、「信託型デットアサンプション」を利用しました。
(3)外部者に債務を移転するには、
イ 免責的債務引受
ロ 重畳的債務引受
ハ 債務履行引受
ニ 地位の譲渡
の いずれかの形態になります。イはこの場合ソフトバンクに代わってみずほCBが全面的に償還義務者になるものですが、おそらく公募社債の条件として社債権者 集会でも開いて可決されないと無理でしょう。ロはソフトバンクとみずほCBが重畳的(併存的)に償還義務を負うものです。これも手続的に選択は困難です。 ハはソフトバンクが社債権者に償還義務を負うのですが、みずほCBはソフトバンクに対してその履行を保証するというものです(社債権者に直接保証している わけではない)。ニは債権債務関係自体をみずほCBに譲渡するもので、この選択も手続的にほぼ無理でしょう。したがってハしか使えないのです。
(4) しかし履行引受契約をしたからといって、ディフィーザンスが実現するわけではないので(履行の保証を受けたにすぎない)、ソフトバンクは償還資金を外部に 積み立てておく必要があります。そこで現金を拠出して解約不能な他益信託を設定することでディフィーザンスを実現するとともに、信託ではCDOを買うこと により、元利弁済に充当するわけです。
(5)ただし、購入するCDOはハコにすぎないケイマンSPCが発行するので、SPCとしては担保 資産を買い、自分の信用補完をしています。これがAAの債券というわけです。SPCの発行するCDOは、見合いの資産はAAの担保債券になりますが、これ だけでは低クーポンなのでCDOのリターンを確保できません。そこでスワップカウンターパーティとクレジット・デフォルト・スワップ契約(CDS)契約を 結びます(クレジットのセラー=売り手になる)。スワップカウンターパーティは、本件全体をアレンジした金融機関(ゴールドマン・インターナショナル)の 場合もあれば、他の金融機関の場合もありえます。何も問題が起きなければ、SPCはプレミアムを受取り、CDOのリターンに充てます。高めのリターンを実 現するためには高いプレミアムが必要ですが、そのためには後述する参照資産のうちメザニンまたはエクイティ部分のリスクをとることが避けられなくなりま す。なお今回利用したCDOはシンセティックCDOといいますが、これはクレジットのある資産を直接SPCで購入せず、スワップを使ってクレジット資産の リスク部分だけを取り出していることと、そのクレジットが単一の社債やローンのリスクではなく、合成された資産プールのリスクになっていることの2点が特 徴です。この点をもう少し。
上記で、リターンを上げるにはリスクテイクが避けられないと言いましたが、単にハイイールド債などを買っていたの では危険です。そこでスワップカウンターパーティは複数の銘柄(100~200銘柄)に分散した資産のプールを作り、それを裏づけとして、安全度によって 上から「シニア」「メザニン」「エクイティ」などと切り分け、それぞれ異なるリターンで投資家に売るわけです。当然、エクイティの信用度はシニアなどより 低いのですが分散が効いているので(倒産リスクの相関係数が小さい)、単一銘柄よりロスになる可能性を抑えられるというわけですね。
さ て、社債の満期まで何事も起こらなければ償還しておしまいです。一方、スワップカウンターパーティが参照している資産に信用自由(デフォルト)が生じれ ば、その程度に応じてクレジットリスクが実現して、SPCは相手方にロスの補填をしなければなりません。参照資産というのは耳慣れない用語ですが、クレ ジット・デリバティブにおける原資産に該当します。この場合、原資産に価格変動が生じてインザマネーになったため、オプションが行使されるわけです。荒く いえば損害保険の事故が発生したのと同じ状況です。ソフトバンクは160銘柄中8銘柄のデフォルトで全損ですから、メザニン以下の水準を参照していたこと になると思われます。
本件は、以前に書いたように既に償還資金を手当てしたものであるし、キャッシュフローにも影響しないのでいま さら取り立てて騒ぐものではありません。またこのような仕組みを利用したことについても、参照資産のリスクがここまで悪化するとの予想は不可能だったで しょうから、危険だったという指摘をむやみにしても当らないと思います。もちろん、今後の取組みでは参照資産でCDOスクエアード(CDOをプールしてト ランシェ化して再度CDOとして再組成されたもの)などがあれば中身の見立てにはより注意が必要ですし――まあ、そういう資産を使うことは当面無理でしょ うが――、そうした仕組みを利用する際の説明のわかりやすさの確保も不可欠でしょう。
不景気:前回と今回(不動産流動化事業)
不動産業界の苦境が続いています。昨年から「新興不動産会社」とか「不動産流動化銘柄」とされる先を中心に上場不動産会社が続々と法的手続に入ったり上場廃止になったりしています。地価の下落やオフィスビルの空室率の上昇も続いていますね。
前 回の回復局面から私募不動産ファンドでAMや再生案件にも関わっていた私にも感慨深いものがあります。今日は前回の不良債権時代(90年代末~)と今回の 不景気の違いと今後をざっくり考えてみます。マクロ的な要因や国際的動向などを捨象して国内の状況に限ってみると以下の感じです↓
1.不良債権時代
(1)銀行の不良債権が激増し、その正確な定義や額も曖昧だった。
(2)巨額案件には損失を出さないように追い貸しが続いていた。中小案件には貸し渋りや回収が目立った。
(3)金融再生委員会や金融監督庁がやっと整備された時期で、稼動は遅れていた。
(4)証券化やノンリコースローンなどの金融技術が不足していた。
(5)倒産法制や倒産手続が使いにくく、処理を遅らせていた。
(6)調達金利はゼロ近辺だった。
2.今回の不況
(1)銀行の不良債権は、前回に比べて(おそらく)はるかに少ない。
(2)追い貸しをしているという話はほとんど聞かない。貸し渋りも前回ほどひどいとは聞かない。
(3)金融監督体制はかなり整備され、対応も迅速化している。
(4)証券化、ノンリコースロン、REIT、DCF評価法などの金融の基礎技術が普及した。またオフバランス会計や連結会計などの穴も塞がれた。
(5)民事再生法や会社更生法、会社法、金商法など規制が刷新され、倒産手続が迅速化されたり投資家保護が厳格化された。
(6)調達金利は引き続きゼロ近辺にある。
こうして眺めると今回の不況時の方が景気回復に向けての環境条件ははるかにマシのようにも思います(※個別の会社様にとっては今回だろうが前回だろうが大変なことには違いないですが、それはさておき)。しかし一方で、
(ア)前回には買い手として登場していた外資系のファンドやアレンジャーが資金不足で沈黙。
(イ)当時証券化や流動化で取れていた裁定利益がほとんど取れなくなった。金融技術全体がコモディティ化した結果、「タテをヨコにすれば儲かる」ような図式が成り立たなくなった。
(ウ) にもかかわらず、SPCや組合等のハコを使えば与信がとれることを皆が理解したため、物件の先行取得と私募ファンドやREITを出口とする回転型ビジネス が不動産会社で加速してしまった。逆にいえば、物件はハコによって会社本体から倒産隔離されていたので、銀行側も本体側へ支援する必然性を感じなくなって いた。
という新たな特徴が浮き彫りになりました。
今後、不動産業と金融業は再び別れていく予感があります。つい2年前まで頃は 「不動産と金融の融合」が叫ばれていました。しかし金商法でファンド事業全般に網がかぶせられたので中小不動産会社が流動化を直接手がけるのは格段に面倒 になりました。また経済的にもREITのM&Aの可能化などが進んでいけば、REITと国債のイールドギャップも米国のように縮小していくでしょう。必然 としてEXITの際のキャピタルゲインでファンド収益を組み立てる事業が難しくなります。
不動産会社の流動化事業は「出口を押さえた上でいちはやく安値で物件を仕込み、どれだけ高いレバレッジを利かせるか」が勝負です。そのためにはエクイティ投資家の背を押し、かつ自分も儲かるために自らもポジションを取っていくという構図で、業界用語でいう
「同じ船に乗る(Same Boat)リスク」
を 取り過ぎてしまいました。このリスクは資金繰り難となって瞬時に会社を追い詰めます。今後、裁定利益がとれなくなる中で従来の流動化事業は終息していくで しょう。そこで、不動産会社は証券化ビークルも一般の顧客と同様クライアントの一つとしながら、物件の目利き・仲介・管理というもともとの得意分野に特化 していくと予想しています。
今回の景気までに良くなった点を違った角度から1つ挙げると、不動産・金融業界で多くの新しい仕事が定着したことで しょうか。デューディリ、ストラクチャリング、ローンアレンジ、AM、PMといった業種や職種が生まれ、ブティック型のアドバイザリー会社やファンド会 社、会計事務所などの関連産業やそこに従事する人が増えました。ファンドバブルが終わってもこうした仕事がなくなるわけではないし、今後中国やアジア圏で 不動産証券化やファンド事業がもっと拡大するときにビジネスとして拡張していけることになります。これは10年前に外資系が日本に上陸した構図といっしょ です。むしろそういった「市場インフラの層の厚み」の構築が日本版金融ビッグバン(古い)の意義だったともいえます。
なお、不動産その ものに目を向ければ、10年前のように「適正な収益価格がつかない」という状況にはもう戻りません。物件は個別性が強いとはいえ、キャップレートが業界で 共有されていますし上場REITの市場データをベンチマークとして判断する素地があるからです。その意味では90年代のように「処理できない不動産が根雪 のように固まる」といった事態にはならないし、収益物件がいつまでも放置されるといったことにもならないと思います。実体経済の悪化が下げ止まり、アジア や中東圏の資金が流入し買取りファンドなどの活動が水面下で本格化すれば(もう一部では動意もあるようですが・・・)、持ち直しにひどく時間はかからない のではないでしょうか。
前 回の回復局面から私募不動産ファンドでAMや再生案件にも関わっていた私にも感慨深いものがあります。今日は前回の不良債権時代(90年代末~)と今回の 不景気の違いと今後をざっくり考えてみます。マクロ的な要因や国際的動向などを捨象して国内の状況に限ってみると以下の感じです↓
1.不良債権時代
(1)銀行の不良債権が激増し、その正確な定義や額も曖昧だった。
(2)巨額案件には損失を出さないように追い貸しが続いていた。中小案件には貸し渋りや回収が目立った。
(3)金融再生委員会や金融監督庁がやっと整備された時期で、稼動は遅れていた。
(4)証券化やノンリコースローンなどの金融技術が不足していた。
(5)倒産法制や倒産手続が使いにくく、処理を遅らせていた。
(6)調達金利はゼロ近辺だった。
2.今回の不況
(1)銀行の不良債権は、前回に比べて(おそらく)はるかに少ない。
(2)追い貸しをしているという話はほとんど聞かない。貸し渋りも前回ほどひどいとは聞かない。
(3)金融監督体制はかなり整備され、対応も迅速化している。
(4)証券化、ノンリコースロン、REIT、DCF評価法などの金融の基礎技術が普及した。またオフバランス会計や連結会計などの穴も塞がれた。
(5)民事再生法や会社更生法、会社法、金商法など規制が刷新され、倒産手続が迅速化されたり投資家保護が厳格化された。
(6)調達金利は引き続きゼロ近辺にある。
こうして眺めると今回の不況時の方が景気回復に向けての環境条件ははるかにマシのようにも思います(※個別の会社様にとっては今回だろうが前回だろうが大変なことには違いないですが、それはさておき)。しかし一方で、
(ア)前回には買い手として登場していた外資系のファンドやアレンジャーが資金不足で沈黙。
(イ)当時証券化や流動化で取れていた裁定利益がほとんど取れなくなった。金融技術全体がコモディティ化した結果、「タテをヨコにすれば儲かる」ような図式が成り立たなくなった。
(ウ) にもかかわらず、SPCや組合等のハコを使えば与信がとれることを皆が理解したため、物件の先行取得と私募ファンドやREITを出口とする回転型ビジネス が不動産会社で加速してしまった。逆にいえば、物件はハコによって会社本体から倒産隔離されていたので、銀行側も本体側へ支援する必然性を感じなくなって いた。
という新たな特徴が浮き彫りになりました。
今後、不動産業と金融業は再び別れていく予感があります。つい2年前まで頃は 「不動産と金融の融合」が叫ばれていました。しかし金商法でファンド事業全般に網がかぶせられたので中小不動産会社が流動化を直接手がけるのは格段に面倒 になりました。また経済的にもREITのM&Aの可能化などが進んでいけば、REITと国債のイールドギャップも米国のように縮小していくでしょう。必然 としてEXITの際のキャピタルゲインでファンド収益を組み立てる事業が難しくなります。
不動産会社の流動化事業は「出口を押さえた上でいちはやく安値で物件を仕込み、どれだけ高いレバレッジを利かせるか」が勝負です。そのためにはエクイティ投資家の背を押し、かつ自分も儲かるために自らもポジションを取っていくという構図で、業界用語でいう
「同じ船に乗る(Same Boat)リスク」
を 取り過ぎてしまいました。このリスクは資金繰り難となって瞬時に会社を追い詰めます。今後、裁定利益がとれなくなる中で従来の流動化事業は終息していくで しょう。そこで、不動産会社は証券化ビークルも一般の顧客と同様クライアントの一つとしながら、物件の目利き・仲介・管理というもともとの得意分野に特化 していくと予想しています。
今回の景気までに良くなった点を違った角度から1つ挙げると、不動産・金融業界で多くの新しい仕事が定着したことで しょうか。デューディリ、ストラクチャリング、ローンアレンジ、AM、PMといった業種や職種が生まれ、ブティック型のアドバイザリー会社やファンド会 社、会計事務所などの関連産業やそこに従事する人が増えました。ファンドバブルが終わってもこうした仕事がなくなるわけではないし、今後中国やアジア圏で 不動産証券化やファンド事業がもっと拡大するときにビジネスとして拡張していけることになります。これは10年前に外資系が日本に上陸した構図といっしょ です。むしろそういった「市場インフラの層の厚み」の構築が日本版金融ビッグバン(古い)の意義だったともいえます。
なお、不動産その ものに目を向ければ、10年前のように「適正な収益価格がつかない」という状況にはもう戻りません。物件は個別性が強いとはいえ、キャップレートが業界で 共有されていますし上場REITの市場データをベンチマークとして判断する素地があるからです。その意味では90年代のように「処理できない不動産が根雪 のように固まる」といった事態にはならないし、収益物件がいつまでも放置されるといったことにもならないと思います。実体経済の悪化が下げ止まり、アジア や中東圏の資金が流入し買取りファンドなどの活動が水面下で本格化すれば(もう一部では動意もあるようですが・・・)、持ち直しにひどく時間はかからない のではないでしょうか。
ソフトバンクのCDO:その後(再)
Googleで
「ソフトバンク+CDO」
で検索すると、このBlogがなぜがトップにきます。記事自体はもう半年近く前のもんなんですが( ソフトバンクCDOの分析 )。ただ、この記事自体は背景まであまり踏み込んでいないので、その後数日間にわたって断続的に書いたソフトバンク関連の素描と併せて見ないといろいろ分りにくいです↓。
ソフトバンクCDO(その後)
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収の件:概要
ボーダフォンLBOの収支
ボーダフォン買収は高かったか?:同業他社比較
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収後の償還能力
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収:買収ストラクチャー選択について
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収:WBSの利用
地味な当Blogにしては世間のお役に立っているのであろうと勝手に解釈(勘違い?)し、「続きを書け」というご託宣かも、と思いつつあるところです。
ということで、最近はハイブリッド証券についての細かい解説が多かったのですが、またソフトバンクについて近々眺めてみようと思っています。
「ソフトバンク+CDO」
で検索すると、このBlogがなぜがトップにきます。記事自体はもう半年近く前のもんなんですが( ソフトバンクCDOの分析 )。ただ、この記事自体は背景まであまり踏み込んでいないので、その後数日間にわたって断続的に書いたソフトバンク関連の素描と併せて見ないといろいろ分りにくいです↓。
ソフトバンクCDO(その後)
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収の件:概要
ボーダフォンLBOの収支
ボーダフォン買収は高かったか?:同業他社比較
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収後の償還能力
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収:買収ストラクチャー選択について
ソフトバンク⇒ボーダフォン買収:WBSの利用
地味な当Blogにしては世間のお役に立っているのであろうと勝手に解釈(勘違い?)し、「続きを書け」というご託宣かも、と思いつつあるところです。
ということで、最近はハイブリッド証券についての細かい解説が多かったのですが、またソフトバンクについて近々眺めてみようと思っています。
ハイブリッド証券 : 基礎(8)経済学的な意義③
誘因不整合の問題としては次の「過少投資」の問題も重要です。
(2)過少投資
ある企業に正の現在価値を持つ投資計画があるとし ます。しかし負債が多くその残存期間が短いため、投資の結果得られたリターンは大半が負債の元利返済に回ってしまい経営陣(株主)には十分なリターンが見 込めないとしましょう。しかし投資に失敗すれば経営陣はクビです。このような場合、経営陣はあえてリスクをとって投資しようとは思わず、正の価値を持つ投 資さえ実行されない可能性があります。すなわち投資が過少となってしまうのです。
この問題を緩和するためにハイブリッド証券が役に立ち ます。事業投資のリターンの回収期間より負債の満期を長くするとともに、債権者に株主と同じインセンティブを付与することで求めるリターンの水準を揃える わけです。ハイブリッド証券は期間が長く、配当が業績に連動する場合も多いですから、上記のニーズを満たすことができます。また資産代替の例と同じように 普通株への転換権を付与することでより直接的に株主と利益相反を抑制することが可能となるからです。
なお、資産代替が新興企業や業績悪化企業 で多いとされる一方、過少投資の問題は一般的に成熟した産業の大企業などで起こりやすいといわれます。成熟産業で資本の蓄積も進んでいる大企業では魅力的 な投資機会に乏しく、リスクテイクする誘因に欠けるからです。この場合、魅力的な投資案件を創り出すこと自体がもっとも大事なのですが、それはもっとも難 しい仕事でしょう。ハイブリッド証券以外の解決策としては、自社株買いや配当増額で使われていないキャッシュを株主に還元することも一法です。ただし、株 主還元は資本の厚みを減らすので債権者にとっては信用リスクが増加します。これは新たなエージェンシー問題を引き起こすことになるかもしれません。
ここで、やや脇道にそれますが債権の価値や株式の価値が変わってしまうことと、MM理論との関係を整理しておきます。よく知られているように、MM理論で は「企業価値は資本構成の変更から影響を受けない」とされています。しかし資産代替や過少投資の問題をみていると調達方法の選択によって、資金提供者の持 ち分の価値はいろいろと変化してしまうように見えます。これらの関係はどう理解したらよいでしょうか?
これは、MM理論でいう資本構成の決定と投資の決定において、
・時間の経過
・情報の非対称性を背景とした経営陣の行動誘因
を 考慮していないことに原因があります。負債と株式の和としての企業価値全体(バランスシートでいう借方)は調達手段(貸方)の影響を受けないものの、経営 陣の意思決定により、貸方の価値の配分は変わってきてしまうということなのです。したがって企業価値決定においては資本構成問題は大した話ではないという 結果論は正しかったとしても、個々の投資家にとっては自分の持ち分の価値が影響を受けるわけですから大問題です。業績や経営陣の行動に疑念が持たれる際に は、二つ返事で調達の依頼に応じることはできないことになります。
(2)過少投資
ある企業に正の現在価値を持つ投資計画があるとし ます。しかし負債が多くその残存期間が短いため、投資の結果得られたリターンは大半が負債の元利返済に回ってしまい経営陣(株主)には十分なリターンが見 込めないとしましょう。しかし投資に失敗すれば経営陣はクビです。このような場合、経営陣はあえてリスクをとって投資しようとは思わず、正の価値を持つ投 資さえ実行されない可能性があります。すなわち投資が過少となってしまうのです。
この問題を緩和するためにハイブリッド証券が役に立ち ます。事業投資のリターンの回収期間より負債の満期を長くするとともに、債権者に株主と同じインセンティブを付与することで求めるリターンの水準を揃える わけです。ハイブリッド証券は期間が長く、配当が業績に連動する場合も多いですから、上記のニーズを満たすことができます。また資産代替の例と同じように 普通株への転換権を付与することでより直接的に株主と利益相反を抑制することが可能となるからです。
なお、資産代替が新興企業や業績悪化企業 で多いとされる一方、過少投資の問題は一般的に成熟した産業の大企業などで起こりやすいといわれます。成熟産業で資本の蓄積も進んでいる大企業では魅力的 な投資機会に乏しく、リスクテイクする誘因に欠けるからです。この場合、魅力的な投資案件を創り出すこと自体がもっとも大事なのですが、それはもっとも難 しい仕事でしょう。ハイブリッド証券以外の解決策としては、自社株買いや配当増額で使われていないキャッシュを株主に還元することも一法です。ただし、株 主還元は資本の厚みを減らすので債権者にとっては信用リスクが増加します。これは新たなエージェンシー問題を引き起こすことになるかもしれません。
ここで、やや脇道にそれますが債権の価値や株式の価値が変わってしまうことと、MM理論との関係を整理しておきます。よく知られているように、MM理論で は「企業価値は資本構成の変更から影響を受けない」とされています。しかし資産代替や過少投資の問題をみていると調達方法の選択によって、資金提供者の持 ち分の価値はいろいろと変化してしまうように見えます。これらの関係はどう理解したらよいでしょうか?
これは、MM理論でいう資本構成の決定と投資の決定において、
・時間の経過
・情報の非対称性を背景とした経営陣の行動誘因
を 考慮していないことに原因があります。負債と株式の和としての企業価値全体(バランスシートでいう借方)は調達手段(貸方)の影響を受けないものの、経営 陣の意思決定により、貸方の価値の配分は変わってきてしまうということなのです。したがって企業価値決定においては資本構成問題は大した話ではないという 結果論は正しかったとしても、個々の投資家にとっては自分の持ち分の価値が影響を受けるわけですから大問題です。業績や経営陣の行動に疑念が持たれる際に は、二つ返事で調達の依頼に応じることはできないことになります。
