ハイブリッド証券 : 基礎(8)経済学的な意義③
誘因不整合の問題としては次の「過少投資」の問題も重要です。
(2)過少投資
ある企業に正の現在価値を持つ投資計画があるとし ます。しかし負債が多くその残存期間が短いため、投資の結果得られたリターンは大半が負債の元利返済に回ってしまい経営陣(株主)には十分なリターンが見 込めないとしましょう。しかし投資に失敗すれば経営陣はクビです。このような場合、経営陣はあえてリスクをとって投資しようとは思わず、正の価値を持つ投 資さえ実行されない可能性があります。すなわち投資が過少となってしまうのです。
この問題を緩和するためにハイブリッド証券が役に立ち ます。事業投資のリターンの回収期間より負債の満期を長くするとともに、債権者に株主と同じインセンティブを付与することで求めるリターンの水準を揃える わけです。ハイブリッド証券は期間が長く、配当が業績に連動する場合も多いですから、上記のニーズを満たすことができます。また資産代替の例と同じように 普通株への転換権を付与することでより直接的に株主と利益相反を抑制することが可能となるからです。
なお、資産代替が新興企業や業績悪化企業 で多いとされる一方、過少投資の問題は一般的に成熟した産業の大企業などで起こりやすいといわれます。成熟産業で資本の蓄積も進んでいる大企業では魅力的 な投資機会に乏しく、リスクテイクする誘因に欠けるからです。この場合、魅力的な投資案件を創り出すこと自体がもっとも大事なのですが、それはもっとも難 しい仕事でしょう。ハイブリッド証券以外の解決策としては、自社株買いや配当増額で使われていないキャッシュを株主に還元することも一法です。ただし、株 主還元は資本の厚みを減らすので債権者にとっては信用リスクが増加します。これは新たなエージェンシー問題を引き起こすことになるかもしれません。
ここで、やや脇道にそれますが債権の価値や株式の価値が変わってしまうことと、MM理論との関係を整理しておきます。よく知られているように、MM理論で は「企業価値は資本構成の変更から影響を受けない」とされています。しかし資産代替や過少投資の問題をみていると調達方法の選択によって、資金提供者の持 ち分の価値はいろいろと変化してしまうように見えます。これらの関係はどう理解したらよいでしょうか?
これは、MM理論でいう資本構成の決定と投資の決定において、
・時間の経過
・情報の非対称性を背景とした経営陣の行動誘因
を 考慮していないことに原因があります。負債と株式の和としての企業価値全体(バランスシートでいう借方)は調達手段(貸方)の影響を受けないものの、経営 陣の意思決定により、貸方の価値の配分は変わってきてしまうということなのです。したがって企業価値決定においては資本構成問題は大した話ではないという 結果論は正しかったとしても、個々の投資家にとっては自分の持ち分の価値が影響を受けるわけですから大問題です。業績や経営陣の行動に疑念が持たれる際に は、二つ返事で調達の依頼に応じることはできないことになります。
(2)過少投資
ある企業に正の現在価値を持つ投資計画があるとし ます。しかし負債が多くその残存期間が短いため、投資の結果得られたリターンは大半が負債の元利返済に回ってしまい経営陣(株主)には十分なリターンが見 込めないとしましょう。しかし投資に失敗すれば経営陣はクビです。このような場合、経営陣はあえてリスクをとって投資しようとは思わず、正の価値を持つ投 資さえ実行されない可能性があります。すなわち投資が過少となってしまうのです。
この問題を緩和するためにハイブリッド証券が役に立ち ます。事業投資のリターンの回収期間より負債の満期を長くするとともに、債権者に株主と同じインセンティブを付与することで求めるリターンの水準を揃える わけです。ハイブリッド証券は期間が長く、配当が業績に連動する場合も多いですから、上記のニーズを満たすことができます。また資産代替の例と同じように 普通株への転換権を付与することでより直接的に株主と利益相反を抑制することが可能となるからです。
なお、資産代替が新興企業や業績悪化企業 で多いとされる一方、過少投資の問題は一般的に成熟した産業の大企業などで起こりやすいといわれます。成熟産業で資本の蓄積も進んでいる大企業では魅力的 な投資機会に乏しく、リスクテイクする誘因に欠けるからです。この場合、魅力的な投資案件を創り出すこと自体がもっとも大事なのですが、それはもっとも難 しい仕事でしょう。ハイブリッド証券以外の解決策としては、自社株買いや配当増額で使われていないキャッシュを株主に還元することも一法です。ただし、株 主還元は資本の厚みを減らすので債権者にとっては信用リスクが増加します。これは新たなエージェンシー問題を引き起こすことになるかもしれません。
ここで、やや脇道にそれますが債権の価値や株式の価値が変わってしまうことと、MM理論との関係を整理しておきます。よく知られているように、MM理論で は「企業価値は資本構成の変更から影響を受けない」とされています。しかし資産代替や過少投資の問題をみていると調達方法の選択によって、資金提供者の持 ち分の価値はいろいろと変化してしまうように見えます。これらの関係はどう理解したらよいでしょうか?
これは、MM理論でいう資本構成の決定と投資の決定において、
・時間の経過
・情報の非対称性を背景とした経営陣の行動誘因
を 考慮していないことに原因があります。負債と株式の和としての企業価値全体(バランスシートでいう借方)は調達手段(貸方)の影響を受けないものの、経営 陣の意思決定により、貸方の価値の配分は変わってきてしまうということなのです。したがって企業価値決定においては資本構成問題は大した話ではないという 結果論は正しかったとしても、個々の投資家にとっては自分の持ち分の価値が影響を受けるわけですから大問題です。業績や経営陣の行動に疑念が持たれる際に は、二つ返事で調達の依頼に応じることはできないことになります。