ソフトバンクCDO(総括)
ソフトバンクの財務について近日また書いてみようと思っているうちに例のCDOがデフォルトしてしましました。まあ、予想の範囲内ですが。この案件はす
でに信託に現金を拠出済みですので、CDO自体が全損とはいえキャッシュフローには影響がありません。また償還可能性についても、みずほCBが債務履行引
受をしていますから社債権者にも影響しませんね。それでも、ウェブを眺めると本件は不透明だとかよく分らないといったコメントも散見されるようですから、
仕組みの絵を挙げておきます(この件についての四半期報告書の注記や決算資料のPPTは個人投資家には確かに不親切です)。
(ソフトバンクのリーガルディフィーザンスのしくみ:まとめ)
若干解説をしておきます。
(1)ソフトバンクはWBSによるファイナンスを実行する際に、金融機関からの要請で公募社債750億円の債務を実質ベースで減らす必要がありました。
(2) しかし公募社債の買戻しは実務上困難なので、リーガルディフィーザンスを選択しました。リーガルディフィーザンスはBS上の負債圧縮はではありませんが、 債務の履行義務を実質的に外出しする効果があります。ここでの方法としては、「信託型デットアサンプション」を利用しました。
(3)外部者に債務を移転するには、
イ 免責的債務引受
ロ 重畳的債務引受
ハ 債務履行引受
ニ 地位の譲渡
の いずれかの形態になります。イはこの場合ソフトバンクに代わってみずほCBが全面的に償還義務者になるものですが、おそらく公募社債の条件として社債権者 集会でも開いて可決されないと無理でしょう。ロはソフトバンクとみずほCBが重畳的(併存的)に償還義務を負うものです。これも手続的に選択は困難です。 ハはソフトバンクが社債権者に償還義務を負うのですが、みずほCBはソフトバンクに対してその履行を保証するというものです(社債権者に直接保証している わけではない)。ニは債権債務関係自体をみずほCBに譲渡するもので、この選択も手続的にほぼ無理でしょう。したがってハしか使えないのです。
(4) しかし履行引受契約をしたからといって、ディフィーザンスが実現するわけではないので(履行の保証を受けたにすぎない)、ソフトバンクは償還資金を外部に 積み立てておく必要があります。そこで現金を拠出して解約不能な他益信託を設定することでディフィーザンスを実現するとともに、信託ではCDOを買うこと により、元利弁済に充当するわけです。
(5)ただし、購入するCDOはハコにすぎないケイマンSPCが発行するので、SPCとしては担保 資産を買い、自分の信用補完をしています。これがAAの債券というわけです。SPCの発行するCDOは、見合いの資産はAAの担保債券になりますが、これ だけでは低クーポンなのでCDOのリターンを確保できません。そこでスワップカウンターパーティとクレジット・デフォルト・スワップ契約(CDS)契約を 結びます(クレジットのセラー=売り手になる)。スワップカウンターパーティは、本件全体をアレンジした金融機関(ゴールドマン・インターナショナル)の 場合もあれば、他の金融機関の場合もありえます。何も問題が起きなければ、SPCはプレミアムを受取り、CDOのリターンに充てます。高めのリターンを実 現するためには高いプレミアムが必要ですが、そのためには後述する参照資産のうちメザニンまたはエクイティ部分のリスクをとることが避けられなくなりま す。なお今回利用したCDOはシンセティックCDOといいますが、これはクレジットのある資産を直接SPCで購入せず、スワップを使ってクレジット資産の リスク部分だけを取り出していることと、そのクレジットが単一の社債やローンのリスクではなく、合成された資産プールのリスクになっていることの2点が特 徴です。この点をもう少し。
上記で、リターンを上げるにはリスクテイクが避けられないと言いましたが、単にハイイールド債などを買っていたの では危険です。そこでスワップカウンターパーティは複数の銘柄(100~200銘柄)に分散した資産のプールを作り、それを裏づけとして、安全度によって 上から「シニア」「メザニン」「エクイティ」などと切り分け、それぞれ異なるリターンで投資家に売るわけです。当然、エクイティの信用度はシニアなどより 低いのですが分散が効いているので(倒産リスクの相関係数が小さい)、単一銘柄よりロスになる可能性を抑えられるというわけですね。
さ て、社債の満期まで何事も起こらなければ償還しておしまいです。一方、スワップカウンターパーティが参照している資産に信用自由(デフォルト)が生じれ ば、その程度に応じてクレジットリスクが実現して、SPCは相手方にロスの補填をしなければなりません。参照資産というのは耳慣れない用語ですが、クレ ジット・デリバティブにおける原資産に該当します。この場合、原資産に価格変動が生じてインザマネーになったため、オプションが行使されるわけです。荒く いえば損害保険の事故が発生したのと同じ状況です。ソフトバンクは160銘柄中8銘柄のデフォルトで全損ですから、メザニン以下の水準を参照していたこと になると思われます。
本件は、以前に書いたように既に償還資金を手当てしたものであるし、キャッシュフローにも影響しないのでいま さら取り立てて騒ぐものではありません。またこのような仕組みを利用したことについても、参照資産のリスクがここまで悪化するとの予想は不可能だったで しょうから、危険だったという指摘をむやみにしても当らないと思います。もちろん、今後の取組みでは参照資産でCDOスクエアード(CDOをプールしてト ランシェ化して再度CDOとして再組成されたもの)などがあれば中身の見立てにはより注意が必要ですし――まあ、そういう資産を使うことは当面無理でしょ うが――、そうした仕組みを利用する際の説明のわかりやすさの確保も不可欠でしょう。
(ソフトバンクのリーガルディフィーザンスのしくみ:まとめ)
若干解説をしておきます。
(1)ソフトバンクはWBSによるファイナンスを実行する際に、金融機関からの要請で公募社債750億円の債務を実質ベースで減らす必要がありました。
(2) しかし公募社債の買戻しは実務上困難なので、リーガルディフィーザンスを選択しました。リーガルディフィーザンスはBS上の負債圧縮はではありませんが、 債務の履行義務を実質的に外出しする効果があります。ここでの方法としては、「信託型デットアサンプション」を利用しました。
(3)外部者に債務を移転するには、
イ 免責的債務引受
ロ 重畳的債務引受
ハ 債務履行引受
ニ 地位の譲渡
の いずれかの形態になります。イはこの場合ソフトバンクに代わってみずほCBが全面的に償還義務者になるものですが、おそらく公募社債の条件として社債権者 集会でも開いて可決されないと無理でしょう。ロはソフトバンクとみずほCBが重畳的(併存的)に償還義務を負うものです。これも手続的に選択は困難です。 ハはソフトバンクが社債権者に償還義務を負うのですが、みずほCBはソフトバンクに対してその履行を保証するというものです(社債権者に直接保証している わけではない)。ニは債権債務関係自体をみずほCBに譲渡するもので、この選択も手続的にほぼ無理でしょう。したがってハしか使えないのです。
(4) しかし履行引受契約をしたからといって、ディフィーザンスが実現するわけではないので(履行の保証を受けたにすぎない)、ソフトバンクは償還資金を外部に 積み立てておく必要があります。そこで現金を拠出して解約不能な他益信託を設定することでディフィーザンスを実現するとともに、信託ではCDOを買うこと により、元利弁済に充当するわけです。
(5)ただし、購入するCDOはハコにすぎないケイマンSPCが発行するので、SPCとしては担保 資産を買い、自分の信用補完をしています。これがAAの債券というわけです。SPCの発行するCDOは、見合いの資産はAAの担保債券になりますが、これ だけでは低クーポンなのでCDOのリターンを確保できません。そこでスワップカウンターパーティとクレジット・デフォルト・スワップ契約(CDS)契約を 結びます(クレジットのセラー=売り手になる)。スワップカウンターパーティは、本件全体をアレンジした金融機関(ゴールドマン・インターナショナル)の 場合もあれば、他の金融機関の場合もありえます。何も問題が起きなければ、SPCはプレミアムを受取り、CDOのリターンに充てます。高めのリターンを実 現するためには高いプレミアムが必要ですが、そのためには後述する参照資産のうちメザニンまたはエクイティ部分のリスクをとることが避けられなくなりま す。なお今回利用したCDOはシンセティックCDOといいますが、これはクレジットのある資産を直接SPCで購入せず、スワップを使ってクレジット資産の リスク部分だけを取り出していることと、そのクレジットが単一の社債やローンのリスクではなく、合成された資産プールのリスクになっていることの2点が特 徴です。この点をもう少し。
上記で、リターンを上げるにはリスクテイクが避けられないと言いましたが、単にハイイールド債などを買っていたの では危険です。そこでスワップカウンターパーティは複数の銘柄(100~200銘柄)に分散した資産のプールを作り、それを裏づけとして、安全度によって 上から「シニア」「メザニン」「エクイティ」などと切り分け、それぞれ異なるリターンで投資家に売るわけです。当然、エクイティの信用度はシニアなどより 低いのですが分散が効いているので(倒産リスクの相関係数が小さい)、単一銘柄よりロスになる可能性を抑えられるというわけですね。
さ て、社債の満期まで何事も起こらなければ償還しておしまいです。一方、スワップカウンターパーティが参照している資産に信用自由(デフォルト)が生じれ ば、その程度に応じてクレジットリスクが実現して、SPCは相手方にロスの補填をしなければなりません。参照資産というのは耳慣れない用語ですが、クレ ジット・デリバティブにおける原資産に該当します。この場合、原資産に価格変動が生じてインザマネーになったため、オプションが行使されるわけです。荒く いえば損害保険の事故が発生したのと同じ状況です。ソフトバンクは160銘柄中8銘柄のデフォルトで全損ですから、メザニン以下の水準を参照していたこと になると思われます。
本件は、以前に書いたように既に償還資金を手当てしたものであるし、キャッシュフローにも影響しないのでいま さら取り立てて騒ぐものではありません。またこのような仕組みを利用したことについても、参照資産のリスクがここまで悪化するとの予想は不可能だったで しょうから、危険だったという指摘をむやみにしても当らないと思います。もちろん、今後の取組みでは参照資産でCDOスクエアード(CDOをプールしてト ランシェ化して再度CDOとして再組成されたもの)などがあれば中身の見立てにはより注意が必要ですし――まあ、そういう資産を使うことは当面無理でしょ うが――、そうした仕組みを利用する際の説明のわかりやすさの確保も不可欠でしょう。