介護離職を経験して復活した終活サポーター・行政書士の雪渕です
遺言書を作るにも、遺産分割協議をするにも、さらに成年後見申し立てをするにも、本人(遺言者、被相続人、被成年後見人/被保佐人/被補助人)の相続関係人の戸籍を集める必要があります。
特に遺言書、遺産分割協議においては、本人が生まれてから、現在(死亡)に至るまでのすべての戸籍を取る必要があります。
何故なら、本人の相続人を漏れなく洗い出す必要があるからです。
・お父さんの相続人は私達子供2人だけよ!
とは限らないことがあるのです。
そう、隠し子です。
隠し子がいて、お父さんの現在(死亡時)の戸籍謄本をとっても、記載されていないことがあるのです。
結婚する前の子供は通常は親の戸籍に入っているので、結婚前に認知した子がいれば、親の戸籍にその旨が記載されているのです。
そして、以外とよくあるのが、本人が養子/養女である場合。
この場合、実親が生きていれば、相続人になります。
日本人(日本国籍の人)であれば、必ず戸籍があります。
離婚後300日問題というのがあって、戸籍のない子供もいます。
法律上、婚姻中に妻が懐胎した子は、夫の子として推定されます。
*推定というのは、事実関係が明らかでない時に、本来そうでなくても、法律上そうだと扱うことで、確定ではありません。あとから異なる事実が出てくれば覆ります。
だったら、無戸籍の子供がいるのはおかしいだろうと思われることでしょう。
この場合、母親が出生届を出すと、自動的(強制的)に前の夫の戸籍に入り、その夫が父親欄に記載されてしまいます。
何故、無戸籍の子供ができるのか?
実際に前夫との間の子であれば、何ら法律上問題ありませんが、前夫からひどいDVを受けて離婚した場合、前夫の戸籍に入ることで、現住所が知られてしまうのです(理由はあとで説明)。
一方、前夫の子でないのならば、家裁へ親子関係不存在確認の訴えを起こし、それが認められたら、子は前夫の戸籍から消え、妻の戸籍に入れます。
この訴えには費用と時間が必要で、離婚した妻に収入がない場合、出生届けそのものが提出できず、その子は無戸籍となるわけです。
私が無戸籍の子供がいると知ったのは、
でした。
無戸籍の子供役が武井咲さん、その母親が木村佳乃さん。
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戸籍がある場所を本籍(本籍地)と言います。
戸籍はその本籍地を管轄する市区町村役場の市民課や戸籍係などで証明書として、戸籍謄本(その戸籍に掲載されている人全員)または抄本(特定の人)を請求できます。
ただし請求できるのは、
・ 請求する戸籍に入っている本人
・その配偶者
・その直系の卑属(子供、孫・・)
・その直系の尊属(父母、祖父母)
だけで、
それ以外の人が請求するには、本人の委任状があるか法律上請求ができる正当な理由を持つ人だけです。
つまり、本人の家族でもある兄弟姉妹であっても、委任状がなければ請求できないのです。
それだけ戸籍というのは重要なものだということです。
通常の戸籍の流れ
(1)出生
婚姻中に生まれると、父の戸籍(=母の戸籍)に入ります。
未婚の母の場合、母の戸籍に入ります。(父の欄は空欄)
婚姻外の子を父が認知した場合、父の戸籍に認知した旨、子の戸籍の父の欄に父親の名前が記載されます。
(2)結婚
それまでは親の戸籍に入っていましたが、婚姻届を出すことで、夫婦で新しい戸籍が作られます。
仮に親と同居をして、住民票上も同じ住所地であっても、同じ住所地を本籍地とした戸籍が作られます。
任意の場所を本籍地とすることもできます。
実は私もこの仕組を知りませんでした。
生まれは奈良県でその後、隣の市へ引っ越しをした先の住所地が本籍地になったことは覚えていました。
さらに実家は引っ越しましたが、本籍地はそのまま。
そして、住所地は当時横浜で結婚しました。
ここで大きな勘違い!
結婚時に本籍地を選ばなかったので、
両親も私も同一の本籍だと思っていたのです。
しかし、母親が他界し、死亡届を出し、相続手続きのために、私自身の戸籍をとろうと市役所窓口で請求書を提出したら、
「筆頭者欄にお父さんの名前が書かれていますが、雄一さんは結婚されたので、雄一さんを筆頭者にした同じ住所で別の戸籍になっていますので。書きなおして下さい」
と言われたのです。
戸籍では筆頭者、住民票では世帯主という欄があります。
同居をしていても本籍地、筆頭者が違う家族が、世帯主だけはお父さんという事もありえるわけです。
(3)離婚
離婚すると、筆頭者でない妻(または夫)は夫婦の戸籍から除籍され、結婚前の戸籍に戻ります。親元から結婚したのであれば、親の戸籍へ。結婚により一度除籍されているので、消された身分欄が復活するわけではなく、復籍者は戸籍の末尾に再度入籍されます。ただし、前の戸籍がすでになくなっている場合(除籍簿に入っている)や本人が新しい戸籍を望んだ時には、前の戸籍には戻らず、その妻(または夫)を筆頭者とした新しい戸籍が作られます。
(4)転籍
生まれ故郷から遠く離れて暮らすようになったので(就職等)、新しい場所へ本籍地を移す場合に、そこで新たな戸籍が作成されます。
(5)死亡
死亡届けにより、生前の本籍地のある戸籍から死亡を原因として除かれます。
仮にその戸籍に入っていた人全員が死亡または転籍してしまった場合、その戸籍は除籍簿に入り、戸籍謄本の請求ではなく、除籍謄本の請求をする必要があります。
(6)その他
養子縁組をした場合、普通養子なら養親の戸籍に養子(男子)または養女(女子)として記載され、事実上転籍となります。
戸籍と住民票の関係
先ほど無戸籍の子供の件で、母親が現在の住所が知られてしまうので・・と言いましたが、何故でしょうか?
戸籍謄本などを請求する用紙の中に「戸籍の附票」という項目があります。
例えば、ある人が生まれてから就職で引っ越しや、結婚、離婚をして引っ越しをして本籍地も3度変わった(=本籍地が4箇所あった)とします。
それぞれの本籍地の戸籍がまだ除籍されていなければ、それぞれの本籍地を管轄する役所で「戸籍の附票」を請求すると次のように住所地が判明します。
A本籍地で交付してもらった戸籍の附票
住所A(出生時の住所)
住所B(引越し先の住所)
B本籍地で交付してもらった戸籍の附票
住所A(引越し前の住所)
住所B(引越し先)
住所C(結婚して引っ越した先の住所)
C本籍地で交付してもらった戸籍の附票
住所B(結婚による引越し前の住所)
住所C(結婚後の住所)
D本籍地で交付してもらった戸籍の附票
住所C(結婚して住んでいた時の住所)
住所D(離婚後の現住所)
どうですか?
すべての戸籍が現存して有効であれば、現在から遡って戸籍の附票をとることで、生まれてから現在までの住所を辿れるのです。
あらためて戸籍の重要性に気づかれたと思います。
相続手続きの現場
相続関係で相続人を確定する際に一番手間がかかるのが、子供や親がいない場合です。
この場合、本人の親の戸籍をとり、さらにその子供である本人の他の兄弟姉妹の戸籍をとります。
さらにその兄弟姉妹が死亡している場合は、その子供の戸籍をとります。
変な話、そこに至るまでに、隠し子が見つかれば、ラッキーです。
第一順位の相続人の登場ですから、兄弟姉妹、おいめいが存在しても、もう相続人ではありませんから、戸籍の取得をする必要がないからです。
これら相続人が一箇所に集まっているはずもなく、全国に散らばっていることがほどんどです。全国の市区町村役場に郵送で請求依頼します。そこにいると思っていたのに除籍されて転籍していることもあります。聞いていた本籍地が誤っていて、そんな戸籍は存在しないと連絡がくることもあります。
そして、すべての相続人の戸籍が確定し、存命している相続人に連絡を取ろうとしても、判明しているのは本籍地と名前だけです。
そのために現住所を調べて手紙を送るしかありません。
現住所を調べるには戸籍の附票をまた郵送で請求し、現住所を突き止め、最後にそこを管轄する市区町村役場に住民票の写しを請求します。
ということで、相続手続き等のための資料集めが大変だということがわかっていただけたと思います。
ご自分で遺言書を書きたい、相続が発生したけど、相続人確定が大変だと思われる方は、ご相談ください。