OSCAR / KAMIJO | 安眠妨害水族館

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OSCAR/KAMIJO

 

DISC 1

1. AGENDA

2. Habsburg

3. SHADOW OF OSCAR

4. Symbol of The Dragon

5. Beautiful Rock'n Roll

6. Behind The Mask

7. fairytale

8. Persona Grata

9. Eye of Providence

10. TEMPLE 〜真夜中に咲いた薔薇〜

11. OSCAR

12. Avec toi 〜君と共に〜

13. NOBLESS OBLIGE

 

DISC 2

1~13のインストゥルメンタル

 

 

VersaillesのVo.KAMIJOによる、4年半ぶりとなったフルアルバム。

 

北欧神話において"神の槍"を意味するアルバムタイトルですが、KAMIJOさんの作品となると、「ベルサイユのばら」の登場人物を思い浮かべてしまうのも仕方ないでしょう。

史実上は10歳で亡くなっているルイ17世を主人公に、彼がヴァンパイアとなって現在に生きているという世界線でのストーリーテリングは継続。

自然エネルギーが枯渇した時代、死者を蘇らせて、その血液で発電する"Emigre"制度の大本となるヴァンパイアの通称となっているのが、その牙を槍に見立ててネーミングされた"OSCAR=ルイ17世"ということで、過去から張り巡らされてきた伏線をいよいよ回収するのが本作であると言えるのかもしれません。

 

前作以降に発表されたシングルは、すべてリテイクしたうえで収録。

ドラムが生音になり、それに引っ張られてかヴォーカリゼーションにも力強さが増した印象で、ルイ17世の決意や前向きな姿勢を表現する本作へのカスタマイズはばっちりです。

音楽性として、耽美色の強いシンフォニックメタルを徹底しているのは言わずもがな。

ここで外さないのが、積み重ねてきたKAMIJOブランドなのですが、その中に、新しいアプローチや懐かしい香りも織り交ぜているのが、3枚目となるフルアルバムにて提示する成長の部分ですね。

クラシカルなサウンドワークにキャッチーなメロディを綴る「SHADOW OF OSCAR」であったり、フレンチポップ風の質感がある「fairytale」であったり、LAREINE時代を彷彿とさせるポップ感重視の歌声を再現する一方で、歌唱力、表現力が大幅に増しているのがはっきりと見て取れる。

エピックメタル的なストーリー性と、徹底された世界観のアウトプットの相乗効果によって、一度聴いただけで、最高傑作を超えてきたなと直感できる爆発力を誇っていました。

 

「AGENDA」、「Habsburg」でのスタートダッシュにて、重厚さ、難解さを匂わせているのもポイントで、リードトラックである「SHADOW OF OSCAR」までの導入で、既に没入感は十分。

全13曲のうち、一番の見せ場であろう「TEMPLE 〜真夜中に咲いた薔薇〜」を10曲目に配置したのも絶妙ですよ。

そこからのエピローグを単なる余韻として消費するのではなく、更なる盛り上がりへと誘っていく。

締めくくりである「NOBLESS OBLIGE」に漂う、ヴィジュアル・メタルの源流であり、真骨頂でもある王道感には、すっと沁み込んで、未来への活力になるほどのパワーすら感じるのです。

 

完全生産限定盤は、特殊パッケージで、全曲のインストゥルメンタルが収録されたボーナスディスクが付属。

ブックレットも充実しており、CDが売れない時代、ここまで世界観にこだわってブックレットを作り込んでくれるアーティストという意味でも、2022年のシーンにおける重要な1枚となったのでは。

 

<過去のKAMIJOに関するレビュー>

Sang -Another Story-(KAMIJO&初音ミク)

Sang

Royal Blood ~Revival Best~

Heart
闇夜のライオン
Moulin Rouge
Symphony of The Vampire
Louis~艶血のラヴィアンローズ~