M.E.T.A./vistlip
1. PW:Invitation
2. BGM「METAFICTION」
3. “TOXIC"
4. CRACK&MARBLE CITY
5. ENTRY MODEL
6. Act
7. 無音
8. ID:ID [Extend Song]
9. 蟻とブレーメン
10. アンサンブル
11. STAR TREK
12. RED LIST [Extend Song]
13. PW:ReAct
結成15周年、vistlipが新機軸として提唱する7thアルバム。
フルレンスとしては、3年4ヵ月ぶりのリリースとなりました。
Master Edition、vister盤、lipper盤の3種類でのリリース。
11曲を収録したDVD付きのvister盤、エンドロール後のエピローグとして「Sunday」を追加収録したlipper盤に加え、内容違いのDVDと、ディレクターズカット的に「ID:ID」と「RED LIST」を差し込んで新たな解釈を示すMaster Editionが存在。
全曲を網羅したパッケージがないのはもどかしいですが、マルチエンディングのような仕様は、それはそれでワクワクさせてくれるのも事実で、彼ららしい工夫だなと感心させられます。
「M.E.T.A.」というタイトルは、必ずしもひとつの意味合いに縛られてはいないとのこと。
リードトラックが『BGM「METAFICTION」』であることを踏まえると、"メタフィクション"の性質が込められているのは間違いないのですが、"ID"や"PW"などのワードは"メタバース"を意識。
仮想世界の入り口として「PW:Invitation」を配置したことで、フィクションでもあるけれど、しっかりと現実にも作用する音楽の役割を、感覚的なメッセージとして伝えることに成功していました。
ミニアルバム「No.9」に、原点回帰のコンセプトが込められているとしたら、本作は新たな原点の創出。
ここにきて、再び新しいスタンダードを作り出そうとするvistlipの意気込みが表現されており、それまでに王道とはしてこなかったサウンドが主軸に加えられています。
『BGM「METAFICTION」』は、大人びたクールなアレンジが印象的。
続く「“TOXIC"」も、ジャジーな展開にキャッチーさをもたらす彼らとしては新鮮なアプローチ。
アルバムのアクセントにするならともかく、セオリーでは勢い付けとなるスタートダッシュに、これらのアダルトな楽曲を据えたことで、新しいvistlipを強調していますね。
一方で、「CRACK&MARBLE CITY」、「Act」といったシングル曲を、間をあけずに放り込む。
異質さだけが先走らないようにコントロールするバランス感覚は、さすがの一言です。
テーマのうえで、『BGM「METAFICTION」』と並んでメッセージ性が強いのが「無音」。
音楽という手法で、音楽の意味を問う、まさにメタフィクション的な視点を、歌詞だけでなく、ファンタジーの中にリアリティや生々しさを求めるシリアスな演奏が、楽曲の世界観を浮き彫りにしているのですよ。
"Extend Song"である「ID:ID」がここに挿入されるのも意味深で、本作でもっとも濃厚なのは、ここではないかと思えるほど。
ノーマルエンドとなる「STAR TREK」は、パンキッシュなポップチューン。
ストレートに突き抜ける明るさでエンディングを迎えるストーリーは、このご時世的に求められているもので気が利いているなと思いつつ、だからこそ、重厚な「RED LIST」がMaster Editionには追加されているのが、より重要さを増していくのです。
"新たな原点"とはよく言ったもので、なるほど、サウンド的にも、物語的にも、これで終わりじゃないぞ、という映画のラストシーンのような続編への含みも感じさせる。
これがトゥルーエンドだとして、ログアウトして現実に戻ってくるlipper盤のアナザーエンドも聴きたくなってしまうよな。
クオリティの高さは今にはじまったことではありませんが、とにかく奥深い。
V系シーンにおいて、スタイリッシュなサウンドと、世界観の濃厚さが結びつかないと思っていたら大間違い。
彼らが第一線で走り続けている意味を再認識させられる1枚です。
<過去のvistlipに関するレビュー>