BitterSweet / vistlip | 安眠妨害水族館

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BitterSweet/vistlip

BitterSweet(lipper) BitterSweet(lipper)
3,240円
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1. BABEL

2. Antique

3. 星一つ灯らないこんな夜に。

4. Walking Dead

5. COLD CASE

6. WIMP

7. MONOGRAM

8. CONTRAST

9. BLACK BOX

10. Snowman

11. BitterSweet Ending

12. Credit

13. Underworld

 

結成10周年を迎えるvistlipの2年ぶりとなるフルアルバム。

4形態でのリリースとなります。

 

ミニアルバム「SENSE」では各メンバーが楽曲を持ち寄り、個性を際立たせた彼ら。

本作は、それによって得た感覚を全13曲に落とし込んだといったところでしょうか。

「BitterSweet」というタイトルの通り、解釈によって甘くもあり、苦くもあり、というストーリーで統一。

一方で作曲面は、だいぶフラットになった印象です。

 

飛び抜けて激しい楽曲もなければ、インパクト重視のヘンテコな楽曲もない。

かといって安定感に終始した大人しいアルバム、というイメージもない。

きっちりとテーマに沿って丁寧に楽曲を構築しながらも、過剰に意識してメンバーの個性を捻じ曲げることのない、自然体で聴くことができるアルバムに仕上がったのでは。

個々の楽曲にも個性があり、その中でのプレイにも個性があり、全体のバランスだって良い。

「SENSE」を作ったことで深まった音楽性への信頼が、ここでひとつ形になったと言えますね。

 

軸となっているのはシングル5曲だけれど、リードトラック「星一つ灯らないこんな夜に。」のキラーチューンっぷりにも感心させられる。

メロディアスな楽曲で、サウンドだけを切り取っても良質なのだけれど、歌詞の世界観が秀逸なのです。

これを優しいと見るか、残酷だと見るか、歌詞的にもテーマにぴったりで、とにかく切なさが炸裂。

表題曲ともいえる「BitterSweet Ending」を差し置いてこのポジションに置かれただけありますよ。
歌詞には描かれていないストーリーにまで想像が膨らむのだもの。

 

個人的には、2曲目に持ってきた「Antique」がお気に入り。

繊細なギターワークがポップなメロディと絡み合い、緩急をつけてドラマティックに展開していきます。

ここから「星一つ灯らないこんな夜に。」に繋がっていくなんて、贅沢すぎるでしょ、という。

「WIMP」や「BLACK BOX」のような演奏陣に見せ場が多いアグレッシブな楽曲も効いていて、「Snowman」を皮切りにスタートする歌モノ中心の終盤戦に向けて流れを作っていました。

なお、"lipper"盤にのみ、「Underworld」が追加収録されています。
温かさのある「Credit」でクロージングした後で、まさかもうひとつ聴かせるタイプのミディアムナンバーを持ってくるとは。
ラストが歌モノだった場合は、ボーナストラックはアッパーチューンというのがセオリー。
美しく、前向きに締めくくる正攻法が、意外性のある天邪鬼に見えてくるから面白いものだ。

 

トータルプロデュース能力がとても高いと思わせる1枚。

節目の年に、更なる躍進が期待できそうです。

 

<過去のvistlipに関するレビュー>

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