新約 鐘が鳴ったら事件が起きる / ベル | 安眠妨害水族館

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新約 鐘が鳴ったら事件が起きる/ベル

 

1. 人間交差点

2. 「返して。」

3. 踏切の街

4. ミッドエンドナイト

5. 真っ赤な嘘

 

 

ex-KraのGt.タイゾが加入し、5人編成となったベル。

本作は、現体制では初のアルバム作品となったミニアルバムです。

 

バンド結成以降、ずっと4人編成だったベルですが、ここにきてツインギターに移行。

"鐘が鳴ったら事件が起きる"シリーズも、"新約"として再出発となりました。

タイトル的に、前体制の楽曲のリメイク作かと想像したものの、しっかり未発表曲で構成していますね。

はやくフルメンバーでの新曲を、というニーズに応えた形。

過去の楽曲も、アレンジの変更は必須でしょうし、いつかセルフカヴァーも聴いてみたいところですけれど。

 

本作のポイントとなるのは、5曲とも作曲者が異なることでしょう。

前作「解体新書」では、Ba.明弥さんをメインコンポーザーに据えた中でバリエーションを増やすアプローチを試みていましたが、この「新約 鐘が鳴ったら事件が起きる」では、作曲者の選択肢を増やしながら、ベルの真髄を突き詰めていくスタイルを採用。

ある種、真逆のスタイルで、外から、内から、ベルの音楽をより強固なものにしていくぞ、という気概を感じます。

 

明弥さんによる「人間交差点」は、ベルのど真ん中。

各人1曲であれば、王道的な哀愁歌謡で、というのは想像の範疇だったのですが、面白いのは、ここからの流れでした。

タイゾさんによる「返して。」に、ルミナさんによる「踏切の街」。

そこに続く、新加入組のギターコンビの楽曲まで、レトロ感が強いナンバーを持ってきているのですよ。

こういう引き出しを持っていたのか、という意外性と、だからベルに加入したのだな、という納得感。

幅を広げるための全員コンポーザー体制かと思いきや、多角的な視点からの昭和歌謡ロックを体現しています。

 

Dr.正人さんが作曲した「ミッドエンドナイト」は、艶やかさが前面に押し出された懐メロ風のロック。

アバンギャルドなシンセの使い方が、アクセントとなっています。

ラストに据えられたVo.ハロさんの「真っ赤な嘘」は、疾走感のあるストレートなヴィジュアルロック。

ギターが2本になったことで、こういう正統派のメロディアスチューンも映えるようになったのでは。

さすが、オリジナルメンバーの風格といったところで、アレンジ次第では、もっと攻撃的にも、現代的にも料理できる楽曲たち。

ここまで踏み込んでも、ベルの王道として刺さるよな、というラインをよく理解しているな、と。

 

"鐘が鳴ったら事件が起きる"を冠しているだけあって、これぞベルといった内容。

ただし、ギターの本数が増え、新しいアイディアが加わり、といった付加要素はきちんと見受けられ、時計の針を戻したのではなく、螺旋階段でひとつ上の階に進んだのだ、と捉えるほうがしっくりくる原点回帰です。

令和の世に解き放たれた昭和レトロ。

現在進行形で、このノスタルジーを奏でるバンドの存在は、改めて貴重だなと感じさせる1枚でした。

 

<過去のベルに関するレビュー>

解体新書

続々・鐘が鳴ったら事件が起きる

JUKE BOX

ルフラン

歌謡サスペンス劇場
続・鐘が鳴ったら事件が起きる
午前3時の環状線
ノンフィクション