続・鐘が鳴ったら事件が起きる / ベル | 安眠妨害水族館

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続・鐘が鳴ったら事件が起きる/ベル


1. 鐘が鳴ったら事件が起きる
2. 涙傘
3. あの日の僕の君と雨
4. 厚化粧の女
5. 執着駅
6. 万華鏡
7. スローヱモーション
8. 地下室症候群
9. ワスレナグサ

会場限定でのリリースとなった1stミニアルバム「鐘が鳴ったら事件が起きる」が完売となったことを受け、2nd Press盤としてリリースされたのが、この「続・鐘が鳴ったら事件が起きる」。
SEと新曲1曲の2トラックが追加され、ジャケットも差し替えられています。

そもそも、このミニアルバムは、ライカエジソンで配布された「上」、ZEAL LINKで配布された「下」を1枚にまとめ、更に1曲追加して販売していたもの。
本作は、またも新曲「涙傘」が加わり、ほぼフルアルバムというボリュームになりました。
今からベルを知りたい新規リスナーにとっては、これ以上ない入門編と言えるでしょうか。

“歌謡サスペンス”をテーマにした歌モノを軸に置くスタイル。
それは、実態的に初期の音源集となる本作の時点で、既に確立されていますね。
昭和レトロの香り漂う哀愁メロディに、バンドサウンドでもあっと言わせようと企むスリリングなフレーズを紛れ込ませる。
一貫して、古くもあり、新しくもある音楽性を実現するアプローチでアルバムが構成されているので、現代シーンにおいて、本気で昭和歌謡系というジャンルに新規参入しようとしているのがわかります。

さて、やはり気になるのは、新曲の「涙傘」。
ひとつだけ制作時期が異なるわけですから、アルバムの中で浮いてしまうのが懸念されたのですが、これはこれは、心配無用でしたな。
ダンサブルなアレンジながら、懐メロ風の歌謡メロディにより、90年代初頭のJ-POPライクな雰囲気をもたらす。
Vo.ハロさんのファルセットを巧みに使っての丁寧な歌唱も噛み合っていて、これぞベルの真骨頂という内容に仕上がっています。
1st Pressを持っていても、この曲を音源で聴きたい…と購入に踏み切ったリスナーも多そうである。

その他も、粒揃い。
本来想定していなかったはずだが、「あの日の僕の君と雨」の昭和ポップス感は、「涙傘」とその後の楽曲を繋ぐブリッジとしてもピタリとハマる。
そこからは、Gt.明弥さんが作曲を担当した「厚化粧の女」、「執着駅」の王道の昭和歌謡系コンボに、レトロさの表現を雅な和メロに振り切った「万華鏡」など、的確にツボを突いた楽曲を連発。
「スローヱモーション」、「地下室症候群」と、ライブを意識した彼らとしては激しさを見せた楽曲でバランスを取り、締めくくりは壮大なバラードである「ワスレナグサ」と、捨て曲も無駄もない流れで、ほぼ寄せ集めの音源集でありながら、この完成形が見えて配布CDの楽曲も選んだのかな、と推測したくなるほど秀逸です。

余談ですが、夢人さんがコンポーズした「地下室症候群」には、なんとなく彩冷える時代の匂いもあり。
こういうナンバーをまたやってくれるということに嬉しさもありました。
歌モノが軸でありながら、しっかりV系バンドとして何をすべきかを理解しているバランス感覚の良さは、今後、大きな武器となることでしょう。

もったいぶらずに流通盤としてリリースすれば良いのに。
ライブ会場に販売経路が限られているのが惜しいと、素直に思うほどの充実した内容。
1st Pressを買いそびれていたファンは、この機会にライブに足を運んでみては。

<過去のベルに関するレビュー>
午前3時の環状線
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