ANTI-MATTER/キリト
1. ANTI-MATTER
ソロとしては久しぶりのリリースとなったキリトによるデジタルシングル。
1月の単独公演をもって、Angeloが無期限活動休止。
表舞台に姿を現すのは、もう少し先かな、なんて考えていたのですが、ほぼ動きを止めずに3連続リリースを発表してしまうのだから、なんとも天邪鬼な彼らしいですね。
その第一弾となるのが、発表と同時にMVが公開されて話題を集めた「ANTI-MATTER」。
"反物質"を意味するタイトルは、遺伝子工学的な知見にファンタジー色の強い新解釈を加えて構築するAngeloの世界観を踏襲しているようでもあり、彼が歌い続ける限り、彼の描く物語は終わらない、というメッセージを感じずにはいられません。
音楽性としても、ソロ活動だからといって大きくベクトルを変えようとはせず。
無機質なデジタルサウンドは、近未来的ではあるが退廃的。
ラウドに攻めるヘヴィーな演奏も、どこか重苦しく、背徳感のあるシリアスな歌詞を象徴しているようです。
ただし、サビのメロディには光を感じることもでき、そこに屈するのではなく、抗い続けるのだという意志の強さも見受けられる。
抽象的なシーンだけでも、とても具体的なイメージを与えるキリトさんの真骨頂、ここにありですよ。
なんとなく、コロナ禍における音楽シーンとシンクロしている部分もありそう。
さっと聴いただけでは、難解に響く部分もあるのでしょうが、実は、世相に合わせて、共感しやすいストーリーを紡ぐのが上手いアーティスト。
彼が長年、第一線で活躍できるのも、この戦略性や求心力があるからでしょう。
第二弾、第三弾では、どのようなアプローチが飛び出すか。
新曲も楽しみですが、全部出揃ったあと、改めて「ANTI-MATTER」を聴き返すことで、ようやく気付く驚きもありそうだから、なお楽しみ。
策士・キリトの動向には、バンドが止まったからといって、注目しない理由にはならないのです。
<過去のキリトに関するレビュー>