ほうき星/シド
1. ほうき星
2. Siren
3. 声色
「delete」以来、約1年ぶりとなったシドのシングル。
どことなく切なさのあるジャケットのイラストがたまりません。
2020年11月より、バンド初となった配信シングルを連続して発表。
その3曲を1枚のCDにパッケージした作品として、同年12月にリリースしたのが本作となります。
それぞれ、コロナ禍を意識しているようですが、作曲者はバラバラ、曲調もまったく異なるタイプの楽曲に。
ひとつのテーマからアイディアを広げていくというチャレンジを、コンパクトに成し遂げたと言えるでしょう。
Gt.Shinjiさんが担当した表題曲「ほうき星」は、彼らのポップセンスを前面に押し出したナンバー。
入りの部分で、ゆるやかなJ-POPに仕上げたのかなと思わせつつ、徐々にスピード感をアップ。
パンキッシュに疾走するアッパーチューンとして、苦境の中でも希望を描けるように、リスナーの背中を押す役割を担っています。
続く「Siren」は、Ba.明希さんによるシリアスかつダークな楽曲。
ヒップホップのトラックようなリズムで淡々と刻みながらも、歌メロは彼ららしい歌謡曲的な要素も帯びている。
シドらしくもあり、新機軸でもあり、間を突いてくるような新鮮味がありました。
「ほうき星」の"希望"に対して、こちらは"現実"を歌った楽曲のようで、彼らなりの痛みの表現と受け取れるのかな。
ラストは、Dr.ゆうやさんが作曲した「声色」。
こちらは、イントロのピアノの音色が美しく響くバラードです。
Vo.マオさんの感情を込めた歌声が、冬の空気に凛と映えるようで、あたたかさと冷たさが同居している感覚。
少しずつ音数や重なりが増えていくアレンジも面白いな、と。
リリースの方式を踏まえても、CDはファンアイテム、コレクターアイテムという位置づけと割り切っていそうな本作。
なんだか寂しい気もしますが、逆に考えれば、今でも彼らにはそれだけのニーズがあるということ。
時代や行動様式が変わったとしても、曲の強さは変わっていないのです。
まだまだ第一線でシーンを引っ張っていけるぞ、ということを示した1枚。
<過去のシドに関するレビュー>