OUTSIDER / シド | 安眠妨害水族館

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OUTSIDER(初回生産限定盤A)(DVD付)/シド
¥4,500
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1. laser
2. CANDY
3. V.I.P
4. 赤い手
5. MUSIC
6. サマラバ
7. 恋におちて
8. 迷路
9. darling
10. hug
11. ANNIVERSARY

シドのメジャー4thアルバム。
通産では8枚目のオリジナルアルバムということで、リリースされた作品の数からも、10年間の年月を感じます。

ベスト盤の発表や、10周年のアニバーサリーライブ等を経験しての作品ということで、これまでの彼らの総集編といった印象。
まったく同じ質感ではないにせよ、初期を匂わせる楽曲があったり、しっかりとメジャーデビュー後のシドらしいポップロックチューンもある。
何かに突き詰めたような作品ではありませんが、幕の内弁当的な美味しさがある作品に仕上がっていると言えるでしょう。

幕開けにふさわしい広がりのあるミディアムロックの「laser」でスタートし、荒っぽいロックンロールテイストを強めた「CANDY」で、勢いを加速。
本作に収録されたシングルの中では、もっとも疾走感を押し出している「V.I.P」に繋げていきます。
シリアスで、アダルティーに攻めていくのかと思い始めるところで、ちょうど良い塩梅のポップさを注入。
ここまで、どの曲も3分程度でまとめており、流れがとてもスムーズですな。

アクセントが欲しいところで収録された「赤い手」は、歌謡曲色が強い初期の香り。
シンセの使い方などに垢抜けた感じはありますが、ダークにじっとり、昭和なメロディを歌い上げるVo.マオさんの歌声に、鳥肌が立った人も少なくないのでは。
一転して、「MUSIC」ではエレクトロな雰囲気になり、さらっと聴いただけであれば同じバンドとはとても思えないのですが、これはこれで、シドのサウンドだと納得させられるから感心する。
この組み合わせで、進行が不自然じゃないと感じさせることができるアーティストなんて、そうはいないでしょうね。
ピコピコしたサウンドに、ブリブリと響かせるベースが気持ち良い。

「サマラバ」、「恋におちて」と、その後はシングルが続く。
ベタベタなポップソングと、80年代歌謡ロック。
これまた、どういう流れだ、と言いたくなるのだけれど、文字にするほど違和感がないのですよ。
聴き慣れているから、では片付けられないシドの魔法。
シングルだけ切り取っても、それぞれタイプが違っていて、面白いです。

少し切ないミディアムナンバーである「迷路」、ノリの良い「darling」と、終盤にかけても、足りないピースを埋めていこうとするアプローチ。
特に、「darling」は、ライブ感のある曲が足りないな、中毒性がある曲が足りないな、という、ふたつのニーズを同時に満たすナンバー。
ダンサブルでキャッチーなサビではあるのですが、じわじわ深みにハマるようなアクの強さが癖になる。

バラードである「hug」、ある種、雑多さのあるアルバムをまとめるにはこの曲しかないという「ANNIVERSARY」という最後の2曲は、お約束といったところだろうか。
さすが、綺麗に収束させていきます。

総合的に、バラバラなようで、一体感があるというか。
色々な方向から、シドらしい音楽を表現している。
どの楽曲を聴いても、シドの音楽であるとわかる。
新鮮さと、懐かしさが共存していて、捨て曲らしい捨て曲はありません。

個人的には、これに激しい曲、ぶっ飛んだ歌詞の曲があっても良かったかなぁ、とは感じました。
その辺、メジャー路線ということなのかもしれませんし、最近では見せてない一面ではあるのですけれど、終盤にその手の楽曲が入っていたら、いっそう引き締まったのでは。
11曲中、シングルが5曲ということで、アルバム曲がもう1曲くらいあってもいい気がしたのですよね。

まぁ、たらればを言っても仕方ない。
そういう欲が出てしまうくらい、安定感のある一枚ということで。
10周年の軌跡を紡ぎあげた彼らが、次にどういう方向性を目指していくのか、とても楽しみになりました。

<過去のシドに関するレビュー>
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