heavenly / L'Arc~en~Ciel | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

heavenly/L'Arc~en~Ciel

 

1. Still I'm With You

2. Vivid Colors

3. and She Said

4. ガラス玉

5. Secret Signs

6. C'est La Vie

7. 夏の憂鬱

8. Cureless

9. 静かの海で

10. The Rain Leaves a Scar

 

1995年にリリースされた、L'Arc~en~Cielのメジャー2ndアルバム。

通算では、3枚目のフルレンス作品となります。

 

白系サウンドに特化した「DUNE」、「Tierra」という2枚の名盤を経て、ポピュラリティを確立するためのブレイクスルーとなったのが、この「heavenly」。

全体的にバンド感が強まっていて、キャッチー性も見られるようになりました。

前作の面影を残した「Still I'm With You」から、シングルとして発表された「Vivid Colors」へと繋げられる導入部分は、本作における彼らの変化を端的に象徴していると言えるでしょう。

 

では、所謂"初期ラルク"としての魅力がなくなっているのかと問われると、決してそんなことはなく。

動と静のコントラストを壮大なスケールに昇華した「ガラス玉」であったり、月に取り残された月面探査機の視点で、広大な宇宙の中での孤独を描いた「静かの海で」であったり、"らしさ"は踏襲。

幻想的あるいは神秘的と言うべき非現実性を、手を離せば風に飛ばされてしまうぐらいの繊細さで表現した楽曲たちには、大きなロマンチシズムを感じずにはいられないのですよ。

 

後に「夏の憂鬱 [time to say good-bye] 」としてシングルカットされる「夏の憂鬱」も、この段階ではサビにあたる部分が挿入されておらず、メランコリックな雰囲気モノとして存在。

これがあんなにもキャッチーに生まれ変わるのかと驚くほどで、ある意味、アルバムの世界観を膨らませるためのアクセントとしては、贅沢な楽曲の使い方をしていたのだな、と。

 

また、「C'est La Vie」などのポップさを押し出したナンバーについても、歌詞に目を通せば、ナイーブさが顔を出す。

歌謡曲要素が強まったとはいえ、これが"メジャーに進出した途端に大衆化を狙った、よくある路線変更"とは一線を画していた理由。

没個性化するどころか、"ポップで聴きやすさがあるのに、アルバム全体に翳りが見える"というアンニュイな作風が、新たなL'Arc~en~Cielの道筋を切り開いていました。

インディーズ時代の楽曲を再構築した「Cureless」が聴けることも、新たなリスナーを獲得しつつ、従来のファンもしっかりついてきたひとつの要因だったりして。

 

アルバムは、哀愁を帯びたハードチューン「The Rain Leaves a Scar」でクロージング。

壮大な楽曲で締める機会が多い彼らだけに、この選曲は意外な気もします。

インパクト強めの歌謡ロックで、派手に終わらせてみせる。

聴いてみるとしっくりくるから面白いものですね。

四半期世紀前の作品となるのだけれど、まだまだ現役感のある1枚。

 

<過去のL'Arc~en~Cielに関するレビュー>

25th L'Anniversary LIVE

Don’t be Afraid

BUTTERFLY
P'UNK IS NOT DEAD(P'UNK~EN~CIEL)
DUNE 10th Anniversary Edition
SMILE
The Best of L'Arc~en~Ciel c/w
ray
HEART
True

Tierra