act/Vogus Image
1. act
2. 焦点_再録
3. jukebox
2005年に解散するも、2010年以降、不定期でライブ活動を行っているVogus Image。
本作は、2011年にリリースされた会場限定シングルです。
当時、10周年記念という名目で、期間限定での復活となっていた彼ら。
その年に開催された2度のワンマン公演にて、それぞれシングルを発表しているのですが、その2枚目にあたるのがこの「act」。
以後、15周年となる2016年までは沈黙することになるので、実施的なラストシングルという意味合いもあったのかもしれません。
「act」は、Vo.sho-kaさんが作詞・作曲を担当したミディアムナンバー。
後期Vogus Imageの延長線上といった趣があり、優しく、瑞々しさを感じます。
透明感があるという点については、これも当時と同じと言えるのだけれど、強いて違いをあげるとすれば、現役当時は空虚さの中にある氷のような透明感を持っていたのに対し、復活後は、しゃぼん玉のような透明感。
その向こうに、鮮やかな虹色を感じ取ることができるのですよ。
近年、sho-kaさんのソロアルバム「Making our world」にてセルフカヴァーされたことでも話題になりましたが、バンドだからこその化学反応を堪能するには、やはりこちらのオリジナルヴァージョンも押さえておきたいところでしょう。
「焦点_再録」は、アルバム「絶対零度」に収録されていた楽曲のリメイク。
直接的に過去の楽曲を比較できるというのも、コアなリスナーの興味を刺激します。
誤解を恐れずに言えば、当時にあったヒリヒリとした緊迫感のようなものは薄れている印象。
その分、優しさが足されていて、人間の温かみが宿ったとでも例えましょうか。
後期の延長線上、という前言を撤回するわけではないのだけれど、変わった部分、進化した部分というものは確かにあって、大人になったVogus Imageというのも、なかなかどうして、捨てたものではないのです。
最後の「jukebox」は、会場限定シングル第一弾のリードトラック。
第一弾は、表題曲以外は過去の楽曲のリテイクだったため、これをもう一度収録したというのは、救済策の意味合いが強いのかな。
あるいは、「jukebox」は先行的にドロップしたデモCD的な位置づけで、この「act」が完成版ということなのかもしれないですね。
サウンド的には、もっとも現役時代のVogus Imageに近いイメージ。
清涼感があって、シンプルな演奏に、無限に広がる世界観を想像できる。
テンポとしてはミディアム調だが、骨太なバンドサウンドが前面に押し出されているので、テンポ以上の勢いを感じることもできます。
こうして聴いてみると、シーンの中におけるVogus Imageの音楽性の異質さが、はっきりとわかる。
古き良きを懐かしむでもなく、現代音楽に媚びるでも流されるでもなく、Vogus Imageは、Vogus Imageでしかない。
10代の頃から第一線で活躍していて、誰かのフォロワーだった時代も知っているからこそ、この着地の仕方は感慨深いものがありますよ。
もっとも、今の彼らの活動スタンスであれば、この作品がラストにならない可能性も捨てきれない。
ひょっこりVogus Imageの新曲が聴ける日を夢見て、軌跡を辿りつつ彼らの音楽を再評価してみるのも良いのでは。
<過去のVogus Imageに関するレビュー>
輪廻
絶対零度