C/minus(-)
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C(CD)
2,420円
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1. Glass work
2. ツバメ
3. 内側に向かう
4. この話の続きを聞きたいか
5. ヨハネインザダーク
SOFT BALLETの藤井麻輝さんによるソロプロジェクトとなったminus(-)。
本作は、前作「R」から2年ぶりとなるミニアルバムです。
ダンスビートは影を潜め、どっぷり沈み込むようなダークな音像へ。
森岡賢さんの急逝以降、音楽性という意味での形は変わってきていますが、考えてみれば、統一された音楽性なんて持ち合わせていないのがminus(-)ではなかったか。
ゲストヴォーカルを迎えながら自由に音楽を展開するというスタンスは、本作でも不変でした。
本作の特徴としては、全曲において石川智晶さんが作詞とヴォーカルを担当していることが挙げられるでしょう。
その結果、minus(-)としては珍しく全編が日本語での歌詞となっており、メロディにも、どこか和を感じさせる部分あり。
藤井さんの浮遊感のある楽曲と、透明度の高い女声ヴォーカル。
大枠での方向感が近いこともあって、SUILENに物語性を加えたような雰囲気に仕上がっているのかな。
とにかく、サウンドの重なり方が秀逸。
ひとつひとつの音の鳴りを注意深く聴いてみると、違和感なく自然体で聴いていたものが、実は不協和音の組み合わせだった、という仕掛けがいくつも登場するのですよ。
特に面白いのは、「内側に向かう」で見せたコーラスワーク。
どちらかがメイン、どちらかがコーラスという役割分担ではなく、それぞれで別の歌メロを、どちらもがメインと言わんばかりに歌い上げる。
その結果、どちらを耳で追えばよいのかで脳が混乱するのだけれど、不思議と心地良さもあるのだよな、と。
「この話の続きを聞きたいか」なども同様で、呻き声にも似た声の重なりが、効果的な演出に。
これ、石川さんが能動的に持ってきたアイディアであれば、相当に藤井さんのサウンドとの相性が良いのではなかろうか。
また、ラストの「ヨハネインザダーク」が顕著ではあるのですが、ドラマティックな構成の楽曲が多くて、5曲しかないとは俄かに信じがたい。
捨て曲がなく、密度の濃いトラックを畳み込んでくるので、十分にボリュームは感じることができますね。
聴く人を選ぶのは事実だが、必ずしも聴きにくいわけではなく。
入り口は案外広く持っており、ハマってしまえば抜け出せない罠。
個人的には、1曲目の「Glass work」を聴いた時点で、完全に底なし沼に足を踏み入れてしまったわけで。
いつもではあるけれど、質の高いコンセプチュアルな世界を堪能できる1枚です。
<過去のminus(-)に関するレビュー>