UMBRA/NICOLAS
1. UMBRA
2. INSANITY NIGHTMARE
3. VITAL SIGNS
4. 因果応報
5. MURDER IMPULSE
6. 罠
7. モザイク
8. ブリリアントワールド
9. Begonia
10. ネオン
満を持してリリースされた、NICOLASの1stフルアルバム。
通信販売、ライブ会場に加え、ヴィレッジヴァンガードの一部店舗にて販売されています。
あのクソッタレたちが帰ってきた。
公式にアナウンスはされていないものの、ex-ゴシップのメンバーが再集結。
"暗黙の了解"を前提としたプロモーションを展開し、主だった流通作品がない中で、じわじわと勢いを加速させています。
前身バンド、およびそのまた前身バンドのときに見られたthe GazettEのフォロワー的な要素は、かなり薄まった。
ある種の方便として、あるいは事務所の戦略として、そのようなスタンスを取っていたのだと思われますが、いよいよ、本来やりたかった音楽と向き合い、自由度を増してきたということなのでしょう。
内容としては、月並みではあるが、バラエティ豊か。
激しい楽曲があれば、お洒落なナンバーもあり、ポップネスに振り切ったと思えば、哀愁たっぷりの歌モノも。
要するに、ヴィジュアル系という枠組みの中ででき得ることを、思う存分に取り組んでいるといった印象ですね。
1曲1曲でガラっと趣が変わったりするので、一言でNICOLASらしい楽曲はこれ、という決め打ちができないと言いますか。
一方で、ゴテゴテとした装飾過剰なサウンドには陥っておらず。
必ずしも、90年代のお手本をオマージュたっぷりに再現するのを目的としていないのがポイントで、血となり肉となっている音楽性を、素直に現代というフィルターを通して還元したような、スマートさが感じられるのですよ。
削ぎ落としすぎてシンプルになったわけではなく、ストレートすぎてつまらないということでもなく。
衝動性を、すっきりコンパクトに詰め込んで、突き抜ける勢いと、アルバムとしての流れの良さを両立。
これこそが、彼らがキャリアを積み重ねてきた成果だったりするのかな、と。
表題曲「UMBRA」は、ミディアムテンポの哀愁ロック。
シンガロンガ的なフレーズもあり、壮大に幕を開けると、ハードな演奏の中に、レトロさと近未来感が交互に押し寄せる「INSANITY NIGHTMARE」、「VITAL SIGNS」というコンボが待ち受け、流れを生み出します。
ヘヴィネスを意識し、ドロっとした肌触りの「因果応報」を挟んで、話題性も持ち合わせていたのが「MURDER IMPULSE」。
同じ事務所で切磋琢磨していた経歴があるMuzzleの碌さんが作曲を担当し、当時を知るリスナーにとってはたまらないコラボレーションとなりました。
序盤~中盤で、ハードさ、ヘヴィーさを示すと、終盤に向けての盛り上がりは、極端に振れ幅を広げ、"何でもアリ"を徹底することで実現。
大人びた煌びやかなアレンジが特徴的なのは「罠」。
アダルティーな世界観を作り出すと、続く「モザイク」では一転して爽やかなソフト・ヴィジュアル調の歌モノポップロックを繰り広げます。
更には、ダンサブルなリズムで、エレクトロにも食指を伸ばす「ブリリアントワールド」、気合いの入ったロッカバラード「Begonia」を畳み込み、ラストはキャッチーな「ネオン」で大団円。
ギターリフが耳に残るアッパーチューンで、強引さのある後半戦の流れを、より強いパワーでまとめてしまう。
この雑多さも、ゴシップ時代からの味だと捉えたら面白いのでは。
手放しに名盤と呼ぶほどには洗練されていないのかもしれませんが、強烈な衝動性を、客観的に聴かせる作品としてのクオリティで包み込む絶妙なバランスは、作ろうと思って作れるものではないはず。
販路が限定されているのがもったいないほど、成長が感じられる作品でした。