ULTIMA / lynch. | 安眠妨害水族館

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ULTIMA/lynch.

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1. ULTIMA

2. XERO

3. BARRIER

4. EROS

5. ALLERGIE

6. IDOL

7. ZINNIA

8. IN THIS ERA

9. RUDENESS

10. MACHINE

11. ASTER

12. EUREKA

 

 

結成15周年というタイミングで制作された、lynch.のフルアルバム。

サイバーパンクがモチーフとして採用されており、近未来的なアートワークが特徴的です。

 

"究極的なもの"というタイトルが示すとおり、本作で提示されたものは、lynch.の集大成でした。

前作「Xlll」までの作品には、どこに変化を加えるか、という点に焦点が当たってきた経緯があり、強調すべき方向性を絞って特徴的に仕立てるアプローチが多く見られた彼ら。

一方で、ラウドでメロディアスという基本線は大きく変えずにここまで来ており、その変化がライト層にまで伝わり切っていなかったのも事実。

フェスへの参加等で、地道に評価を高めつつあるとはいえ、「GALLOWS」以来のブレイクスルーを起こして、もうひとつ上のステージに行きたいというのが本音でしょう。

 

その中で彼らが決断したのは、大幅なテコ入れとは真逆、過去の作品を踏まえた純粋な上位互換を制作するという選択。

ポイントとなるのは、王道的な楽曲を並べて、らしい作品を生み出すということに留まらず、すべてにおいて過去を越えようとする意識なのではなかろうか。

類似性のある楽曲は確かにあったのだけれど、それよりもハードさが増している、表現力が高まっている、重さが段違い…と、客観的にレベルアップしているなと思わせる上積みがあるのです。

 

例えば、ド頭の「ULTIMA」から圧力を増した重低音のパンチ力に驚かされるし、「BARRIER」は、ライブ感のシミュレーション精度が圧倒的に高められ、どのように盛り上がるかが手に取るようにわかります。

「EROS」におけるダンサブルなリズムと官能的な世界観の融合も、もはや彼らの王道と言えるレベル。

マンネリ化が課題であったラウド系の楽曲については、「ALLERGIE」にてガテラルなどの新たなシャウトパターンを習得するなど、まさに正当進化になっているなと。

 

また、手に取ってもらうきっかけ作りにもこだわっていて、リードトラックである「XERO」には、河村隆一さんがコーラスで参加。

せっかくMVを制作するなら、こちらにも出てほしかったとは思ってしまいますが、lynch.の音楽性ともマッチする絶妙なコラボレーションでしたね。

更には、大衆向けなキャッチーさを敢えての武器とした「IDOL」、歌モノとしての美しさを追求した「ZINNIA」、ハードコアなヴィジュアルチューンである「RUDENESS」、「MACHINE」のコンボなど、守備範囲の広さによってアルバムとしてのバランス感覚も確保。

既視感的な意味でインパクトはそこまで強烈ではないものの、「EUREKA」での大団円まで、隙のない作品に仕上がっているのでは。

 

最後に、コンセプチュアルとは言わないまでも、至る部分に施された近未来的なエッセンスが効いていた。

スリーブケースから取り出すと、ブックレットが下半分だけの特殊サイズで、CDの盤面がアートワークを担っているというギミックもたまりません。

視覚からも聴覚からも、世界観を表現するのがヴィジュアル系の矜持。

エンタメの弱体化が暗い影を落とす昨今ですが、本作の魅力が広く周知され、シーンを爆発させるための起爆剤になってほしいものです。

 

<過去のlynch.に関するレビュー>

Xlll

SINNERS-no one can fake my bløod-

SINNERS-EP

AVANTGARDE

D.A.R.K. -In the name of evil-
GALLOWS
EXODUS-EP
INFERIORITY COMPLEX
I BELIEVE IN ME
THE AVOIDED SUN

underneath the skin

greedy dead souls