SINNERS-EP / lynch. | 安眠妨害水族館

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SINNERS-EP/lynch.

 

1. SIN

2. TRIGGER feat. J

3. BLACK OUT DESTROY feat. 人時

4. KALEIDO feat. T$UYO$HI

5. DIES IRAE feat. YOSHIHIRO YASUI

6. SORROW feat. YUKKE

 

Ba.明徳さんが大麻取締法違反により逮捕されたという衝撃的なニュース。

明徳さんはそのまま脱退、バンドも活動自粛となり、2016年の最後の最後に受難を迎えたlynch.ですが、約半年の凍結期間を経て、遂に復活を告げるEP盤がリリースされました。

 

このような状況下で発表された作品のタイトルが"罪人"とは。

皮肉か、自虐か、あるいは不謹慎な挑発か。

いずれにしても、活動自粛には追い込まれたものの、バンドの在り方まで変えるつもりはないという心意気が垣間見えて、とてもlynch.らしいですよね。

 

ベーシストが不在となり、編成としては不完全。

しかしながら、本作においては、MVにも参加したLUNA SEAのJさんをはじめ、黒夢の人時さん、Pay money To my Pain、The BONEZのT$UYO$HI、OUTRAGEのYOSHIHIRO YASUIさん、MUCCのYUKKEさんと、豪華なベーシスト陣がゲストとしてプレイ。

このコラボレーションにより、マイナスを見どころに変えてしまいました。

 

この手法で思い出すのは、Dr.武井誠さん脱退後に、複数のドラマーを迎えてアルバムを制作したcali≠gariの「12」。

ただし、こちらはドラマーの個性を最大限に引き出して、これまでになかったサウンドを呼び込もうとしていたのに対し、本作は良い意味でゲストが目立たない内容になっており、聴いた感触は明確に異なります。

コラボレーションで化学反応を狙ってというよりも、あくまでlynch.の音楽を表現するための協力者的な存在としてゲストを迎えているのかな、と。

ある意味、贅沢なEPですよ。

 

音楽性としては、ダーク・メロディアス路線への回帰。

ゴリゴリと激しく迫ったり、デジタルサウンドを塗してダンサブルに、という楽曲ごとのメリハリはもちろんつけているのですが、lynch.の王道とは何か、という原点的なものに立ち返った感があります。

V系の流行に寄せるわけでもなく、邦ロックのスタンダードを目指すわけでもなく、lynch.としてやるべきことをわかっているという風格。

ある程度のバラエティが求められるフルレンスではなく、ボリュームを絞ったEP盤での復活となった背景には、余計なものを混入させないように、という配慮があったのかもしれません。

 

"止まらない"と"変わらない"を両立した作品。

邪悪で攻撃性の高い「DIES IRAE」と、壮大で美しさすらあるミディアムナンバーである「SORROW」が並んでいるのに、この流れが必然と思えるほど、すんなりと耳に入ってくる。

lynch.はまだまだ諦めていない。

それを音楽で示した未完成の完成品が、この「SINNERS-EP」なのでしょう。

 

<過去のlynch.に関するレビュー>

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