G / minus(-) | 安眠妨害水族館

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G/minus(-)

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1. Descent into madness
2. Peepshow ※guest vocal:J
3. Maze ※guest vocal:Picorin
4. Dawn words falling
5. The Victim ※guest vocal:kate / u crack irigaru

SOFT BALLETの藤井麻輝と森岡賢によるユニット、minus(-)の2ndミニアルバム。
前作同様、格好良いのかダサいのか判別つきにくいコラージュ風のジャケットとなっています。

前作のアンビエント的なアプローチとは打って変わって、EDMに特化したような作風に。
モリケンワールドが全開と言ったところでしょうか。
エレクトロサウンドにビートを混ぜて、ボーカルラインにキャッチー性が出ているのが特徴的。
だいぶガラっと変えてきたな、と。

全体的には、アッパーな楽曲が多く取り揃えられました。
トップバッターの「Descent into madness」が象徴的で、はっきりと前作の延長線ではないのだぞ、と線を引かれる感覚。
それは、突き放すようでもあり、常に進化しているのだという安心感もあり。
もっとも、今の森岡さんのマイブームがEDMだというだけで、深い意味はないのかもしれませんが、彼らの自由なスタンスが、ここに表明されている気がします。

その中で、注目せざるを得ないのは、やはり「Peepshow」である。
LUNA SEAのJさんがボーカリストとしてゲスト参加。
80年代ディスコ風にアレンジされたサウンドに、Jさんの低音ボイスが重なって、なんとなくSOFT BALLETの面影を想起したリスナーも少なくなかったのでは。
歌メロとしてはワンパターンであるのだが、サウンドの変化によりドラマ性を構築していく面白味。
現代シーンのセオリーとは逆行しているようにも見えるが、これで格好良いのだから、納得せざるを得ないのですよ。

また、「Dawn words falling」は、「No_5」として前作に付属したDVDにのみ収録されていた楽曲の音源化となるのかな。
確かに、前作に入れるよりも、この流れで投入したほうがしっくりきます。
アッパーに攻めきったところで、kateさんをゲストボーカルに迎えた「The Victim」で締めるあたりもニクい演出ですね。
ウィスパーボイスの女声ボーカルで、透明感や神秘性を帯びており、最後の最後で、どっぷり精神面に沈んでいく楽曲を持ってきました。
アクセントとして使うこともできただろうに、ラストへの抜擢は見事な選択である。

前作「D」とは、まったく異なる手法。
特に、音楽性に関しては森岡さんの色が前面に押し出されているので、藤井さんの音楽性が好きなリスナーには、物足りなさが残っても否めない部分はあるのでしょう。
EDMという比較的普及しきった感のあるジャンルへの挑戦だったことも、斬新さが際立った前作と比較してしまうと、いまひとつ衝撃が大きくならなかった要因であるとも考えられます。

ただし、個人的にはアーティスト然としすぎていない、このくらいの聴きやすさがあってもいいのかと。
もちろん、藤井さんがコンポーズに絡む楽曲も増えてきてほしいというのは前提として、ある程度の方向感として、きっかけになるようなサウンドはあって然るべき。
たまには、こういう振り切れた作品が出来上がってきても、悪くはないはずです。
次回作があるとすれば、どんな仕上がりになるか。
評価については、それを見てから結論付けても遅くないのかも。

<過去のminus(-)に関するレビュー>
D