潮騒と春雪 / カラビンカ | 安眠妨害水族館

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潮騒と春雪/カラビンカ

 

1. 潮騒と春雪

2. 寄生虫

3. 青年の蹉跌

4. 路傍の花

 

カラビンカのライブ会場&オフィシャル通販限定でリリースされたシングル。

表題曲を含む、4曲が収録されています。

 

白塗りで学ランというバンカラなヴィジュアルイメージ。

エグみのある生々しい歌詞と、土着的でアングラな世界観。

それがカラビンカのパブリックイメージだと思っていたのだけれど、代表曲やシングル曲を並べてみると、春をテーマにした楽曲が多くなってきたことに気付く。

 

この「潮騒と春雪」も、そのひとつ。

テーマ性としては、相変わらず死がつきまとう重苦しさはあるのだけれど、その中に、なんとも言えない切なさを纏っていて、素直に美しいメロディをもって歌われているのですよ。

普段、こういうことは口にしないのだろうな、と思われる主人公のストレートな心境。

硬派さ、武骨さの裏に垣間見える脆さや弱さ。

Vo&Gt.工藤鬼六さんの芯のある歌声は、そんな歌詞世界のイメージと重なり、胸を締め付けるのです。

抽象的な言葉だけでも、ここまでグッとくる情景が描けるものなのだなぁ、と。

 

その他の3曲は、ドロドロと生々しく描写したイメージどおりのカラビンカ。

「寄生虫」は、Ba.松島ティルさんが作曲を担当。

"密室系"的な雰囲気をカラビンカに持ち込み、上手く昇華している印象ですね。

艶めかしく、妖しいリズムが癖になっていきます。

 

立ち直れないぐらいにどん底まで落とすのは「青年の蹉跌」。

夢に破れた絶望。

死に向かうしかない暗澹たる気持ち。

それらをサウンドでも表現するために、ひたすら暗い展開が続くのですが、終盤はエモーショナルに展開していきます。

声が掠れながらも、感情最優先で歌い上げるさまは、一気に曲の主人公とリスナーとの距離を縮めてしまう。

これによって、絶望は僕らのすぐそばにあるんだよ、と自分に囁かれているような錯覚に陥り、ゾッと鳥肌が立ちました。

 

「路傍の花」は、作曲クレジットがカラビンカ名義のハードチューン。

歌メロは歌謡曲チックなのだけれど、Dr.悠介さんのタイトなドラムが象徴するように、攻撃性も帯びている。

どす黒い歌詞とは裏腹、聴きやすい1曲に仕上がっており、締めくくりとしての機能も果たしています。

こういうギターリフ、カラビンカにはありそうでなかったのでは。

 

表題曲のオルタナロック感がたまらなくツボなのですが、それ以外の楽曲もらしさと新鮮味がほどよく混在しており、なかなかの完成度。

ボリュームについても、4曲入りと過去のシングルと比べても十分で、充実した作品と言えるでしょう。

歌詞におけるアングラ耐性があるのであれば、完売する前に手にしておきたい1枚。

 

<過去のカラビンカに関するレビュー>

残片 弐

残片

春を哭く人

三千世界に鴉鳴く

春を逝く人
ひとでなし