キラーチューンしかねえよ / ゴールデンボンバー | 安眠妨害水族館

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キラーチューンしかねえよ/ゴールデンボンバー

 

1. 口上

2. 燃やして!マイゴッド

3. やさしくしてね

4. やんややんやNighit ~踊ろよ日本~

5. 水商売をやめてくれないか

6. #CDが売れないこんな世の中じゃ

7. お前を-KOROSU-

8. スイートマイルーム

9. うれしいかなしい

10. 海山川川

11. 誕生日でも結婚式でも使える歌

12. あの日君を傷つけたのは

13. ドンマイ

 

ゴールデンボンバーの3枚目となるオリジナルアルバム。

約2年半ぶりにリリースされた本作は、先行シングル3曲を含む全13トラックを収録しています。

 

相変わらず、企画力は健在。

テレビ番組で突如無料ダウンロードができるQRコードをバラまいた「#CDが売れないこんな世の中じゃ」、全都道府県ごとの47種類を同時リリースした「やんややんやNighit」などの記憶も新しいところだが、「誕生日でも結婚式でも使える歌」について原盤使用料および著作権料の放棄を発表して、再び話題を振り撒きました。

また、テレビ番組"ミュージックステーション"の持ち時間である2分半で、アルバム全曲のダイジェストを披露したり、エアーバンドという特性を活かして、Vo.鬼龍院翔以外のメンバー全員がアルバム曲を初聴きの状態で臨む異例のライブを開催したり、アルバムと連動した試みも大成功。

一発屋でありながら、消えないバンドとなるべく、常にリスナーを驚かせ続けているのが印象的ですね。

 

ただし、この「キラーチューンしかねえよ」で主張したいのは、あくまで"曲の良さ"なのでしょう。

自信満々なタイトルとは裏腹、ネガティブでナイーブな、下から目線の叫び。

その結果、ネタっぽくなる歌詞もないわけではないが、"そんなことを歌詞にするバンドはいなかったよ"と、"だからこそ共感できる"を両立するキリショー節は、何か吹っ切れたように、好きな音楽に真摯に取り組んでいるといった趣を持っているのです。

 

ソロ名義での90年代ポップスのカヴァーアルバムを作成した影響もあってか、メロディ運びやサウンドメイクには、昔懐かしのレトロポップスの香りを漂わせているものが多いかな。

その意味で、ヴィジュアル系バンドとしての"キラーチューン"を期待しすぎてしまうと、肩透かしを食らうかもしれません。

疾走感があって、メロディアスで、コード進行はF→G→Am。

そんな感じのV系王道チューンが入っているわけではなく、あくまで、鬼龍院さんの好みど真ん中、わかりやすくキャッチーなポップスが詰め込まれている。

このタイトル、外に向けて自信のほどを伝えているのではなく、好きなものをやり切ったのだ、という自己暗示的な意味合いもあったりするのかも。

 

もちろん、実質的な1曲目に持ってくるのがこれか、と意外性で勝負する歌謡曲テイストの「燃やして!マイゴッド」、なんだかんだでこういうのがあると嬉しい、ハードに攻める「お前を-KOROSU-」、ナンセンスなタイトルの連呼に、いつの間にか中毒になっている「海山川川」などで見られる、ワンポイントを足してくれるサービス精神も素晴らしいのですが、本作において、やはり注目すべきはラストの「ドンマイ」。

素朴なアレンジだからこそ、耳に馴染む。

シンプルな言葉だからこそ、胸に響く。

良い曲を作るというストレートな欲求が、この楽曲に集約されているような気がして、大きなパワーを生んでいました。

 

情報量の多いサウンドが飽和した今、これからは素朴でシンプルな音楽が求められるようになるのかもしれない。

そう考えると、彼らはやはり流行を作る側、引っ張っていく側であり、シーンの歴史上前例のない、弱者のままカリスマになったバンドと言えるのでは。

ニッチな部分を攻めて、大きなムーブメントを構築するゴールデンボンバーのメソッド。

どこまで消えずにお茶の間を賑わせ続けることができるのか、ここまで来たら、最後まで見届けたいものです。

 

<過去のゴールデンボンバーに関するレビュー>

やんややんやNight ~踊ろよ大分~

#CDが売れないこんな世の中じゃ

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