1.「合格者数」に惑わされないために
私の周囲の中学受験組には子どもに行ってほしい大学に「最低でもMARCH」を掲げる人が多いように感じます。上位層は別にして、多くの中学受験家庭が(せっかく時間とお金をかけて中学受験をさせるのであれば)このような思想を抱いているのではないでしょうか。
中学受験をするにあたり様々な中学校のHPを見ますが、一番気になるのはやはり進学実績です。
何校か見てみて思うのは、「中高一貫校の進学実績はどこも素晴らしい」ということです。
例えば、とある中高一貫校(サピ偏差値40前半)の進学実績を抜粋すると、以下のような感じです。(数字は丸めています)
もちろんこの「合格者数」は、合計が卒業生数を超えていることからわかるとおり、「合格延べ人数」です。1人の生徒が複数の合格を獲得しているということですね。
それはわかっていつつも
国公立大学→30、早慶上理ICU→175、MARCH→190
を見ると、
「この中学に入れば現役MARCH確定、あわよくば現役早慶」
という風に見えませんか?
これは完全にまやかしで、これを信じて入学すると「こんなはずではなかった」となりかねないです。
残念ながら、ほとんどの中高一貫校ではこのような「合格実績」だけ開示しており、延べ人数ではない「進路状況」を開示している学校はかなり少数派なのです。
そんな少数派の(とても誠実な)学校のうち14校について分析し、以下の2つの進学率を計算してみました。これを使えば、見せかけの合格者数に惑わされることなく、偏差値から概ね「MARCH以上進学率」を類推することができます。
「早慶上理以上進学率」:卒業生のうち、現役で国公立・早慶上理ICU・医歯薬に進学した人の割合。
「MARCH以上進学率」:卒業生のうち、現役で国公立・早慶上理ICU・医歯薬・GMARCHに進学した人の割合。
☆2023年度卒業生(一部2024年度卒業生)の数字から作成しています。手集計なので間違いはご容赦ください。
※1サピックス小学部2025年度用80%偏差値。初日AM入試。
※2進学準備(浪人)も含む。
※3学芸大世田谷(49)、学芸大竹早(47)、学芸大小金井(44)
例えば偏差値40付近の3校に着目すると、
「学年の上位30%に入っていれば現役で早慶上理以上を狙える」ということになります。この辺は「あわよくば現役早慶」という印象どおりなのかなと思います。
注目してほしいのは、「MARCH以上」が50%近辺であることです。
これは「学年の上位50%に入っていれば現役でMARCH以上を狙える」ということ、つまり裏を返すと、「学年の半分は現役MARCHは厳しい(表中の「左記以外」))」ということになります。
これって冒頭取り上げた、とある偏差値40前半の中高一貫校の合格実績に抱く「この中学に入れば現役MARCH確定」の印象とだいぶかけ離れていないでしょうか?
既に述べたとおり、この14校は「真実」を隠すことなく開示している、とっても誠実な学校です。
これらの情報のおかげで(多少のブレはありますが)あらゆる中高一貫校の偏差値から
「あわよくば早慶」や「最低でもMARCH」がどのくらいの確度で叶うのか?が類推できます。
ざっくり言うと、こんな感じ↓かなと。(四谷大塚・日能研は偏差値+10、首都模試は+20して見てください)
・偏差値50~55なら半分は早慶上理以上、7割がMARCH以上(下位3割はMARCH厳しい)
・偏差値40台なら3~4割が早慶上理以上、5割がMARCH以上。(下位5割はMARCH厳しい)
・偏差値30台なら2割が早慶上理以上、4割がMARCH以上。(下位6割はMARCH厳しい)
上記の計算上の「下位」には「浪人して早慶上理以上に合格する人」も含まれていますが、それは学校の力というよりは予備校の力と言えること、浪人率は近年かなり下がっていること、を踏まえて捨象しています。
中学受験される方々はぜひこの数字を参考にしていただき、「合格者数」に惑わされることなく学校選びをしていただけると嬉しいです。
2.進学校とMARCH付属校の比較
「MARCH確定」させるための確実な方法として、MARCHの付属校に入るという選択肢があります。7~9割が「MARCH確定」となる一方、「あわよくば早慶上理以上」の希望は一定捨てなければならなくなります。
このジレンマに悩む方も多いと思いますので、1.で作成した「進学率」を使用して、進学校とMARCH付属校の定量的な比較にトライしてみたいと思います。
進学先ごとのスコアを以下のように決めます。
・現役で国公立・早慶上理ICU・医歯薬に進学→2ポイント
・現役でGMARCHに進学→1ポイント
・それ以外→0ポイント
このルールに従って、偏差値50付近の以下3校のスコアを計算してみると・・・
サレジオ:56%×2+(64%-56%)×1+36%×0=1.20ポイント
頌栄女子:63%×2+(78%-63%)×1+22%×0=1.41ポイント
神大付属:44%×2+(68%-44%)×1+32%×0=1.13ポイント
のようになります。
これと同じことを同偏差値帯のMARCH付属校でもやってみます。
※男子48、女子50
中大横浜:24%×2+(96%-24%)×1+4%×0=1.20ポイント
法政第二:5%×2+(94%-5%)×1+6%×0=0.98ポイント
いかがでしょうか?このスコアリングの仕方だと、MARCH付属はやや劣勢にも見えますが、大学受験を気にせずに自分のやりたいことや本質的な学問に取り組める点は、MARCH付属の最もポジティブな点で、スコアに反映できていない要素になります。
進学校を選ぶのであれば、我が子が適応できるかが不透明な大学受験(英語が必須、難易度が上がり続ける大学入学共通テスト、対策がしづらい総合型選抜などの新形態入試…)に向けて、我が子が下位3割を回避できる算段があるのか、そのリスクを取れるのかどうかが判断のポイントかと思います。
頌栄女子は早慶上理以上が6割を超えており、MARCH以上もほぼ8割と、「MARCH以上ほぼ確定」を叶えてくれる学校です。(この点はスコアに表れていて、1.41ポイントと高いです)。ただし、難関国公立進学率はサレジオが高く「あわよくば東大など難関国公立」と考えるのであればサレジオがポジティブです(この点はスコアに反映できていないので、1.20ポイントと頌栄女子より低めに出ます。難関国公立は3ポイントとしてスコアリングしてみるとサレジオの方が優位になるかも?ぜひ試してみてください。)。
また、中大横浜はMARCH付属ながら国公立の進学実績も良好で、スコアもサレジオと同じ1.20なので、付属のメリットを活かしながらその上も目指せる点はかなりポジティブではないかと考えられます。
偏差値55付近も比べてみましょう。
吉祥女子:53%×2+(70%-53%)×1+30%×0=1.23ポイント
明大明治:14%×2+(100%-14%)×1+0%×0=1.13ポイント
この偏差値帯になると、MARCH付属校がポジティブと言える要素が薄れてくるように思えます。
偏差値40付近はどうでしょうか。
普連土:35%×2+(54%-35%)×1+46%×0=0.89ポイント
明大八王子:4%×2+(93%-4%)×1+7%×0=0.97ポイント
この偏差値帯ではMARCH付属校が優勢です。ただし、明大八王子はアクセス面の悪さが偏差値にも表れており、お得と言えるかどうかは判断が分かれるところでしょう。アクセスが良くなると偏差値も高くなるため、進学校対比の優位性は下がります。
分析は以上ですが、この論議では各校の教育理念や校風などは当然ながらスコアには反映できていません。
大切なお子さんが青春時代の6年間を過ごす場所なので、進学実績だけを見て決めるのではなく、各ご家庭のこだわりポイントも加味していただき(可能であればスコアに”加点”していただき)比較検討いただくのが、私が言うまでもなく大事なことだと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。


















