評価の整合性が高い人事制度
「評価結果を本人にフィードバックする。評価の理由を丁寧に説明する。」ためには、フィードバックに耐えうる評価の整合性が不可欠である。
そのためには、次の3点をしっかり行うことが必要である。
1. 合理性のある人事考課の仕組みやルール・基準を作成して、事前に公表する。
2. 人事考課する人がしっかり勉強して、事実に基づいて、ルール・基準通りに人事考課を行う。
3. フィードバック面接で丁寧に面接を行う。
中途半端な人事考課が、会社に悪影響を及ぼす人事上の一番の問題である。
見える化できる人事制度
「昇給のルール、賞与配分のルールを明確にして、公表する。」するためには、公表に耐えうる制度にする必要がある。
すなわち、企業経営の観点から合理性があるということと、働く人(従業員)の観点から納得性がある制度になっているということである。
企業の論理があまり強すぎると従業員はやる気を失い定着しないであろうし、従業員の論理が強すぎると企業経営が行き詰ることになる。
どちらにとっても都合の良い制度をつくり上げることが大事である。
ここで注意したいのは、どのような従業員の納得性を重視するかということである。
会社には色々な従業員がいる。それらすべての従業員が納得するような制度を作ることは非常に難しい。
やはり、前向きな従業員、努力している従業員に報いることができる制度にすることが大切である。
「正直者が馬鹿をみる」ことのない仕組みを作ることである。
不満を解消する人事制度
● 賃金の不満、評価の不満、人間関係の不満を解消するためには、少なくても次のような人事制度にすることが不可欠である。
・ 昇給のルール、賞与配分のルールを明確にして公表する。
・ 評価結果を本人にフィードバックする。評価の理由を丁寧に説明する。
・ 評価の方法は絶対評価にする。処遇上の評価区分は相対区分にしない。
社員が定着する人事制度
社員が定着しない理由は次の3つである。
したがって、この3つが発生しないような人事制度が必要である。
1.賃金に不満がある
最初は納得して入社する。昇給や賞与の支給の時に他人と比較して不満を感じる。
自分の昇給額や賞与の金額の理由がわからないから他人と比較せざるを得ない。
他人の比較により、評価に疑問を持つようになる。
2,評価に不満がある
評価結果が分からないから、勝手に想像して不満を持つ。
相対評価、相対区分を行うことにより、同僚と比較するようになる。
3.人間関係に不満がある
相対評価、相対区分をしていると、同僚や後輩に良い方法を教えなくなる。秘訣を教えなくなる。
足をひっぱったほうが得をする。他人を蹴落としたほうがよい。人間関係が悪くなる。
したがって、この様な問題が起きないような人事制度にすることが不可欠である。
よい循環を作る人事制度
よい人事制度(賃金制度や評価制度など)を導入すれば、社員は定着し成長する。
社員が成長すれば、業績も良くなり、処遇も向上し、ますます社員が成長する。
よい循環を作ることが大事である。
人事考課は人の評価ではない
人事考課の研修をしていると、「人が人を評価するのは難しいですよ」という話を聞くことがある。
確かに「人を評価する」ことは難しいと思うが、人事考課は「人を評価する」ことではない。
人事考課は、「人を評価する」ことではなく、「人が行った仕事上の行動や成果を評価する」ことである。
上司が部下の仕事上の行動や成果を評価することであり、部下本人を評価することではない。
したがって、人事考課をしっかり行うためには、部下の仕事上の行動や成果をしっかり把握することが必要である。
これらをしっかり把握していないと、全体的な「人の評価」になってしまう。
人事考課の回数
人事考課の回数について、ホームページ「評価の疑問 」や「成果向上型人事制度の作り方 」には年2回行うとありますが、年3回(通期=行動評価、半期=成果評価)で行う方法で対応しようと考えておりますがいかがでしょうか?
成果の評価と行動の評価は一緒に行うのが良いと思います。
成果の評価は単独でできますが、行動の評価は成果の評価を行うことでより正しく明確に判断できます。
実施に目で見た行動だけでなく、仕事の結果から目に見えない行動も判断できるからです。
良い成果が出たということは何ならかの良いこと(よい行動、良い能力、良い努力、ラッキー)があったとうことです。
そこを明確にし、評価に反映して、さらに成功のノウハウとして部内に知らせることが大事です。
悪い成果が出たということは何らかの悪いこと(悪い行動、低い能力、少ない努力、アンラッキー)があったということです。
そこを明確にし、評価に反映して、さらに指導することが大事です。
成果と行動の評価を一緒に行うことで、これらが可能になります。
また、昔は賞与用2回、昇給用1回と年3回行うケースもありましたが、いかにも処遇のための点数付けとなってしまうため好ましくありません。
ラインの目標とスタッフの目標
部門の特性により目標項目の内容やゴールが違ってくる。少なくても、ラインとスタッフでは求めるものが違うので、目標設定もその辺のところを考慮して設定する必要がある。
● ライン部門とスタッフ部門の違いは次の通りである。(表の通り)
1.Goo辞書による意味
(ライン部門) 企業で、生産・販売など直接的な活動に関する部門。
(スタッフ部門) 企業組織で、製作・販売に直接携わらず、その企画・助言・補佐を行う間接的部門。
2.業績指標
(ライン部門) 組織としての最終業績指標を売上や利益などの数値で明確に捉えることができやすい部門。
(スタッフ部門) 組織としての最終業績指標を数値で捉えにくい部門。
3.業績責任
(ライン部門) 利益責任、部署によっては収益責任
(スタッフ部門) 部門として費用責任、会社全体の業績責任
4.業績目標と遂行目標
(ライン部門) 部門単位での業績(最終成果)が明確であり、また、業務遂行の結果がストレートに業績に反映されるので、業績目標のウエイトが大きくなる。
(スタッフ部門) 部門の業績(最終成果)が判定しにくいため、会社全体の業績に対する責任と、それを達成するための遂行目標のウエイトが大きくなる。
● この辺の違いを最初から考慮して、目標管理制度を導入しないと、導入後の目標設定の時点で適切な目標設定が出来なくなってしまう。 注意が必要である。
人事制度を改定する時の注意点
新しく作った会社ではなくもうすでにある人事制度を(賃金制度)を改定する場合、目的にあった人事制度を構築するということと、導入しやすい人事制度を導入するということが、トレードオフ(二律背反)の関係になってしまうことがあります。
最初は、目的を強く意識して制度を考えていきますが、具体的になってくるとだんだんと導入しやすい制度へと流れてしまうのです。
導入しやすいということは今までとあまり変わらないということであり、制度改定の意味がなくなってしまいます。
そうかと言っていくら理論的に優れた制度(理論上は目的に合致した制度)であっても、導入時の抵抗が大きすぎて社員から受け入れられないのもでは意味がありません。
もう一度人事制度の改定の目的に照らし合わせて、その効果と導入のしやすさを確認する必要があります。
成果向上型人事制度導入後の変化
成果向上型人事制度を導入した会社の社長さんから、その後の状況について話を聞いた。
今まで明確な制度がなかったので、人事の仕組みを明確にして、
・ 欠勤や遅刻がほとんどなくなった。
・ 一部の人を除いて、仕事ぶりが目に見えてよくなった。
・ 会社の目標や状況について、関心を持つようになった。
・ 管理職や考課者が部下の仕事ぶりに関心を持つようになった。
・ 何よりも全体的に、職場が明るくなった。
とのことであった。
社員説明会はもちろん、被考課者訓練、考課者訓練をしっかり行い導入したので、誤解もなく導入できたのとのことだ。
また、これまで管理者は管理者としての意識が低く部下に関心がなかったが、人事考課をしっかりするために部下の行動に対して関心が高まり、考課者訓練で勉強したとおり、その場で「ほめる、叱る、注意する」を実践するようになった。
部下も、最初は不安げなものもいたが、目標面接でしっかり話をきいて、すっきりしているようである。また、面接で色々話ができてよかったと言う社員もいるそうだ。
まだ、導入して7ヶ月が過ぎたところであるが、社員の意欲や雰囲気がよくなってビックリしているとのことであった。
IT関係の若い社長さん(30代)で、最初はメリハリのある成果主義の人事制度を考えていたそうであるが、私のホームページを見て「社員満足の人事制度 」に共感していただき、相談を受けたわけである。
話を聞いていて思ったことは、「制度の内容はもちろん大事であるが、導入後の運用をいかに真剣に行うかがもっと大事なことだ」ということである。
せっかく良い制度を導入しても、その後の運用に関心がなく、機能していない会社もあれば、担当者が熱心ですごくうまくいっている会社もある。
やはり、自社に合った運用しやすい制度を導入し、しっかり運用することが一番大事なような気がする。

