しばりやトーマスの斜陽産業・続 -4ページ目

野蛮人以下の男たち『バーバリアン』

 邦高洋低が続く昨今の日本の映画館では本国アメリカで大ヒットした映画がズッコケたり(『28年後・・・』など)しているため、配信やDVDのみになったりするケースが起きています。

 なんでこんなことになるのかというと、日本の観客ってどうしても「誰もが飛びつく話題作」ばかり観に行って「流行ってるモノの話題だけしたい」病の人たちが多い。そういう人たちはパッと見ただけでわかるような話じゃないと理解できないので、洋画の「見えない部分にもうひとつのテーマが隠されている」ような作品に客が来ないんだよね。

 

 アメリカおよび全世界で大ヒット中の映画『Weapons』は未だに日本公開が決まっていない。先日、公開決定したという画像がSNSに流れていたが、これが悪質なデマであったことが判明。しょうもないことすんなや!僕もRTしたけど。

 

 悔しかったので同作の監督、ザック・クレッガーの前作『バーバリアン』が配信されているので観てみた。これが・・・とにかく恐ろしく、これを観たら『Weapons』は絶対に期待できるね。

画像の説明

 

 Airbnbで部屋を借りた女性のテス(『ザ・ウォッチャーズ』のジョージナ・キャンベル)はその部屋にすでにキース(『IT』『ボーイ・キルズ・ワールド』のビル・スカルスガルド)という男性が住んでいた。どうやらダブルブッキングされていたようで、テスは就職面接を明日に控えており、他に泊められるホテルが見つからなかったため、キースの善意で部屋に泊るのだが部屋の扉が勝手に開けられたり、夜中にキースがうなされていたりとなんだかこの家は怪しい。

 翌日面接を受けたテスは「デトロイトのブライトムーア地区に部屋を借りてる」というと「あんな危険なところに?悪いことは言わないから早く引っ越したら?」と心配される。確かに家の周りは廃墟と化したボロ屋ばかりで人の気配さえない。さらに帰宅したテスはホームレスみたいな風体のおっさんに「おい!お前!その家から出ていけ!」と追いかけられたりして、確かに治安悪すぎ!

 家を出ようとしたテスは偶然見つけた地下室に入ろうとして閉じ込められてしまう。仕方なく奥へ進むと汚れたベッドだけの部屋には壁に手形、ビデオカメラにバケツ一つと明らかになんにか如何わしい部屋にしか見えない。帰ってきたキースによって救い出されたテスは一緒に部屋を出ようというが、キースは地下室を確かめると下に降りていき、戻って来なくなる。

 後を追ったテスは檻だらけの部屋の通路奥で傷ついて怯えているキースを発見。

「何かがいる!オレはそいつに噛まれたんだ!早く逃げよう!」

 二人の前に突然全裸の女が現れキースを捕まえ・・・

 

最初、キースが何か怪しいと思ってみてたらすごい勢いで裏切られたので驚き。この後も観客の予想を軽く超えていく、全く先の読めない描写に振り回されること間違いなし。

 背景として語られるのはデトロイトの荒廃ぶりだ。かつて自動車産業の街として栄えたデトロイトはあっという間に衰退し、高級住宅街は叩き売られスラムと化した。ギャングとホームレスが溢れかえり全米で最も治安の悪い街になった。だからロボコップが登場したのだ(ロボコップの舞台はデトロイト)。

『バーバリアン』の舞台となる屋敷はかつて高級住宅だったが持ち主がこの家を売り払い、隠し部屋をつくることで住み慣れたこの町から出て行かなかったという描写がある(『のぞき魔!バッド・ロナルド』みたいな展開だな)。家の持ち主、フランクとTVプロデューサーのAJ(『ギャラクシー・クエスト』『ドッジボール』『ジーパーズ・クリーパーズ』のジャスティン・ロング)はともにミソジニストで、自分の行為で醜悪な化け物を生み出してしまう。虐待されたものがさらに虐待を繰り返すという連鎖状態の話でもある。テスも男性に何かを我慢させられた女性なのだ。

 男性優位社会でバーバリアン(野蛮人)にまで貶められた女性たちの叛逆というテーマがホラー描写の裏に込められていたりする。男性は野蛮人以下!金を持っていようがいまいが。

 

 

 

過剰過ぎる復讐アクション『ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳壊界流転掌列伝』

Boy Kills World 映画ポスター

 極悪非道の一族、ヴァン・デル・コイ家が支配する全体主義国家で育った少年“ボーイ”は母親、そして国家に反抗的な妹のミナとともにひっそりと暮らしていた。唯一の楽しみは薄暗いゲームセンターで遊ぶ格闘ゲーム「スーパードラゴンパンチフォース3」だ。まだ幼い妹はゲームで遊べないので兄ボーイのプレイを見ているだけ。

 

 そんな日々は突然終わりを迎える。ヴァン・デル・コイ家は自分たちの支配の象徴として定期的に無実の市民を12人殺すカリングという儀式を行っていた。そのカリングで母と妹を殺され、ボーイも聴力と声帯を奪われた。

 ヴァン・デル・コイ家に復讐を誓ったボーイは森で暮らすシャーマン(演じるは『ザ・レイド』のシラット達人、ヤヤン・ルヒアン)に拾われ、彼から格闘技と生き抜く力を教えられる。青年になったボーイ(『IT』の殺人ピエロ、ビル・スカルスガルド)はまたもカリングで市民が犠牲になるのを目の当たりにし「もう我慢ならん!」シャーマンの静止を振り切って走り出す。狙うはヴァン・デル・コイ家とその当主ヒルダ(ファムケ・ヤンセン)。時折現れるミナの幻影に惑わされながらもボーイは同じく政府に反抗するレジスタンスのバショ(アンドリュー・小路)、ベニー(イザイア・ムスタファ)らと共にカリングを勝ち抜く。彼らの前に立ちはだかるのは一家最強の殺し屋、6月27日!(そういう名前なの)

Boy Kills World ポスター、ビル・スカルスガルド主演

この人。ちなみに女性です。

 

 ヘルメットのゴーグルがデジタル表示になっていて「ぶち殺してやる!」とか出てきたりする。そんな女殺し屋らと死闘を演じつつ、ボーイはヒルダの元へとたどり着く。ボーイを待つ衝撃の運命は!?

 

 

 当初この作品、海外予告編やキーアートのイメージでは口が利けない、耳も聞こえない男のグロテスクな復讐劇が語られるハードアクション映画化と想像していた。「少年が世界を殺す」だもんね。サブカル臭さえ感じていた。ところが『爆拳壊界流転掌列伝』なる長ったらしくウザったい邦題にされてしまい、日本版予告編は千葉繁による過剰なナレーションが加えられた。

 

 作品に抱いていたイメージがガラガラと音を立てて崩れていった。ボーイは無口なんだけど心の中では格闘ゲームのボイスみたいな渋めの声で何を言っているのかがずっと語られるし(そりゃあアクション映画で無口じゃ盛り上がらないもんな)、これじゃあ口を利けなくされたって設定に意味がないのでは・・・?

 中盤以降に相棒として登場するバショ、ベニーがわけのわからないことを口走るのにツッコミを入れるんだけど(心の中で)話せないから伝わらず、延々と相手がボケ倒していく流れはキツかった。

 

 とはいえアクション面は目を見張るものがあり、ボーイが内なる格闘ゲームの声に導かれ、シラット風の激殺格闘技を繰り広げるところは設定上の不満を軽く吹き飛ばす。何度倒しても立ち上がってくる敵が出てきてラウンド性のように表示されるあたりはアクション映画よりも格闘ゲームのエッセンスを強く感じる。それも『モータル・コンバット』あたりの。特に6月27日は無茶苦茶カッコいいぞ!スピンオフでも観たい!

 

 一方後半になるにつれストーリーはどんどん無茶苦茶になり決壊したダムの水があふれていた。やりすぎ!過剰すぎる演出が災いになった気がして残念。千葉繁を起用した理由もわからなくはない。過剰すぎるナレーションが持ち芸の人なんだから。

 

 回想シーンでボーイの隣にいるミナが対戦に乱入する。対戦なんだから二人で勝負した方が面白いぜ!さあ君もコインを投入しろ!

 

 

 

 

2025年10月予定

10月予定

 

10月10日(金)

『僕の宗教へようこそ だいすき!アニメ』

会場:キイロイエイ

開演:19:00 料金:1000円+1D

出演:しばりやトーマス アシスタント・トモ

 

2025夏アニメの感想と秋アニメの注目作を語ろう

チケット予約

 

 

 

10月14日(火)

『旧シネマパラダイス』

会場:アワーズルーム

開演:20:00 料金:500円+1D

解説:しばりやトーマス

 

カルトを研究する若人の会。スパイ救出作戦発動だ!

 

10月19日(日)

『アニつる 鳳凰編』

会場:なんば紅鶴

 

Act / ロビン前田、タカ・タカアキ、アメリカンバッドボーイ、あちゃぴん、ブリティッシュバタードッグ、マタムネ、しばりやトーマス、テラマンチャ寺田、ヒロキチ’78、AKATUYUTAKA

Special Live Paint / 吉田徹

 

火の鳥のように甦るアニソンDJイベント

 

10月21日(火)

『キネマサロン肥後橋』

会場:アワーズルーム

開演:19:30 料金:500円+1D

解説:しばりやトーマス

※終了後YouTuber配信アリ

 

深夜の映画番組みたいな研究会。70年ぶりに発掘された一本を解禁。

 

10月29日(水)

『スーパーヒーロートーク』

会場:アワーズルーム

開演:20:00 料金:1500(1d別)

出演:にしね・ザ・タイガー しばりやトーマス

 

東映・ニチアサヒーローについて語りすぎるトークライブ。

 

 

※10月の『アイドル十戒』はお休みです。

『M3GAN/ミーガン 2.0』前田有一の的外れ分析

 アメリカ本国でズッコケた映画『M3GAN/ミーガン 2.0』は当初日本公開が10月10日に決まっていたが、8月1日に公開中止、ビデオスルーになることが発表された。

 

 前作は日本を含め世界中で大ヒットし、1億8千万ドル(約270億円)を超える大ヒットを記録。しかし続編は3900万ドル(約59億円)と無残な失敗を遂げた。

 

 失敗の理由として挙げられたのは

 

・年末に公開にされた前作と違い、夏興行に変更されたためサマーシーズンの客の好みにマッチしなかった

全米の夏シーズンはブラピの『F1』、ユニバーサルの実写『ヒックとドラゴン』ディズニーアニメの『星つなぎのエリオ』実写の『リロ&スティッチ』などがファミリー向け映画として人気を博し、さらに超大作『ジュラシック・ワールド 復活の大地』『スーパーマン』といったシリーズ化作品が連続で公開されていて、それらと競り合うほどの魅力が作品になかった。

 

・ホラーからSFアクション、コメディ路線の変更に客がついてこれなかった

今回は正義と悪の立場が逆転する『ターミネーター2』みたいな話になっていて、ミーガンを怖い殺人ロボット少女から愛されキャラにチェンジしようとし、これが完全に失敗したとされている。

 

・ミーガンを演じたエイミー・ドナルドの出番が削られた

人気キャラ、ミーガンのモーションキャプチャーを担当し印象的なミーガンダンスを披露して前作人気の要因となったエイミー・ドナルドは今回出演しているシーンがほとんどなく、スタント・ダブルの方が出番が多いという有様で、プロモーション映像に出番もなく、インタビューも共演者と一緒に映らず別撮り。スタッフ、共演者らとトラブルでもあったのかと疑うような状況。主人公が変更されたら観に行く人間は減るだろう。

 

 本国での失敗を受け、制作会社のユニバーサルは早期の利益回収に舵を切り配信、ソフト販売を先行させることにしたのだろう。劇場公開すればソフト化やデジタルリリースの開始期間は遅れ、回収の機会が失われるからだ。Appleスタジオとソニー・ピクチャーズが製作し、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピット共演の話題作『ウルフズ』は全米で大規模公開直前にAppleTV+の配信に切り替わり、日本も公開一か月前に突然の配信、ビデオスルーに変更。これは同スタジオの『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』の興行的失敗のためとばっちりを受けたとも。

 ダーク・ユニバースシリーズが最初のスタートにつまずいたら構想を見直して完成した作品ですら平気でお蔵入りにするような利益回収に敏いのがハリウッドだ。

 

 で、たまたま眺めていたサイゾーオンラインのライター、町田シブヤの記事に『M3GAN/ミーガン 2.0』に関するものがでていたのだが、

 

 

 町田がまた、専門家の意見として自称批評家の前田有一に話を聞いていて、相変わらず的外れな意見を出していた。

 

>映画評論家・前田有一氏は、日本公開が見送られる洋画作品の共通項として、「ヒットしそうにない」という判断がシビア化しているのではないかと見る。

「『ファイナル―』シリーズはもともとティーン向けのバカバカしいホラー映画。死の運命を予知した若者が死から逃れようと奔走するストーリーで、ほとんどの登場人物が残虐な死を遂げていく。その様子を“騒ぎながら楽しむ”スタイルの作品です。一方で今や『映画館はお静かに』がマナーとされ、ともすれば“死”をおもしろがるなんて不謹慎だとされかねない日本では、そのコンセプトが合わない……という事情はあるかもしれません」(前田氏、以下同)

 

>「アメリカと日本では、売れるホラーの種類が異なります。日本人のホラーの好みは狭く、人気は都市伝説系。アメリカで人気のスプラッターホラーや“コメディ系”は動員が伸びにくい傾向にあります」

 

 

 前田有一の定番、「アメリカと日本では文化が違う」がはじまったぞ!こいつはコメディ映画が受けないのも「文化が違う」せいにするんだよなー。大体『ファイナル~』シリーズは今までずっと日本でスマッシュヒットしてきたし。

 例に出してるタイトルも『ムーラン』とか微妙に関係ないやつだし。そもそもユニバーサルが早期の利益回収に動いているという本筋の話に触れてない、駄文だよな。

 町田シブヤというどこの誰かわからんやつ(フォロワーがなぜかお笑い系だらけで、ああ・・・つまり・・・そういうことか)でなんで前田なんぞの意見を充てにするのかもわからん。前田有一の別名義(アナグラム)だったら笑えるけど。あいつにそんな起用なことできるわけないけど!

 

 

暴走する一方通行『ばっどがーる』完走

 夏のきららアニメ『ばっどがーる』が無事最終回を迎えた。

ばっどがーる アニメキービジュアル

 このアニメ化は大変期待していたが完走した今、期待通りの出来だったと満足。

 

 品行方正、優等生の高校1年生、優谷優(という名前)が学園のマドンナ的存在である風紀委員長・水鳥亜鳥に憧れ、なんとか先輩に振り向いてほしい一心で

「そうだ!不良になれば目をつけて・・・かけてもらえるかもしれない!」

 と懸命に不良の真似事をして泣く子も黙るワル、“ばっどがーる”を目指す物語である。しかし所詮は付け焼刃、根がごく普通の優等生に過ぎないので優の行動はすべて奇行と化す。しかし亜鳥の方も優を上回る自由奔放、常識はずれの行動をとる人物なので優の気持ちはほとんど伝わらず空回り。優の方も幼馴染の涼風涼(という名前)の気持ちに気づかないままなのだった。

 

『ばっどがーる』を一言で表すと「永遠に交わらない一方通行」といったところで全然伝わらない片思いに読者はひたすらモヤモヤさせられる。

 優の思いを独占する亜鳥に嫉妬心を燃やす涼は当然亜鳥のことを嫌っているのだが、生まれてこの方誰にも嫌われたことがない亜鳥ははじめて「嫌い」の感情を向けてくる涼に夢中になり、自称“学園のアイドル”“世界一かわいい配信者”の瑠璃葉るら(愛称・しじみ先輩)は面倒くさい性格なので友達がおらず、唯一仲良くなれた優と友情を育もうとするが空回りを繰り返す。亜鳥の妹、水花はお姉ちゃん大好きっ子だが当然妹以上の感情を持たれることがなく・・・

 

優→亜鳥

涼→優

亜鳥→涼

るら→優

水花→亜鳥

 

 てな感じで各キャラクターが一方通行の道を爆走し続けるのは従来のきらら漫画における日常系やソフトな百合モノとは一線を画す。それと

「日本から半径9000mはレバノン」

「芦ノ湖は日本で17番目の深さ」

「カイコウオオソコエビは一平方㎝あたり1tの圧に耐える」

 といった謎知識も得られる知育漫画なのだった。

 

 アニメは優と涼のイチャイチャぶりが描かれる番外編で幕となるのも、なんだかんだいいながら優が最後に本当に大切な相手がどこにいるのか気づくところで終わるんだろうな~と思わせてくれる最高のまとめ方でしたね。

 優よ!いいかげんに気づけ!よく考えるとこいつは大したばっどがーるだよな!