涼風文庫堂の「文庫おでっせい」458 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<野田秀樹、

庄司薫、

三浦綾子>

 

1381「少年狩り」 野田秀樹戯曲集

野田秀樹
中編   加藤松次郎:解説  角川文庫
収録作品
 
1.少年狩り  末はあやめも知れぬ闇
2.赤穂浪士 昆虫になれなかったファーブルの数学的帰納法
 
 
登場人物――
西田幾多郎、護良親王、サン・テグジュペリ、
少年1,2,3,あんあん、のんの、立の木リサ、
その他――
をいちいち説明してもはじまらない。
 
南北朝時代から600年をへだてた世紀末、
すなわち現代の、たとえば、
「人に刃物を持たせると危ない」ような暑い夜、
愛の絆などが問題になるのではけっしてなく、
「うつつの世は夢、夜の夢こそまこと」
である現世において、
「月の光と鏡のいたずら」
によって事が起き、鎮まり、ついに
「鏡の海の果ては、行く先々で千夜一夜」
という言葉で果てる、
烈しさのあまり人の手を焼く、
華麗不遜な、失われゆくものの物語。
 
                        <ウラスジ>
 
才気煥発、東大出身の役者兼劇作家――
登場したての頃(1980年代半ば)、
確かそんな紹介がありました。
 
そして、<劇団 夢の遊眠社>への賛辞。
 
小劇場における、
”全米No.1ヒット” に類する、
”行列”&”チケット入手困難” 。
 
まあ色々喧伝されていたこと。
 
「言葉遊び」と「古典のリメイク」がその特徴とされ、
併録作品の『赤穂浪士』なんかには、
それが如実に表れています。
 

登場人物は、

大石内蔵助

赤垣源蔵
小野寺十内
岡野金右衛門
杉野十平次
この辺まではまともですが、
ジャン・ヘンリイ・ファーブル(アンリ・ファーブル)
アガサ・クリスティ
と来て、
山崎晃嗣 (光クラブ)…東大の先輩ゆえの配役か?
そしてざっくりとした
東京人
関西人
長州人
薩摩人
とどめは、人間ですらない、
オオミズアオ(蛾の仲間)
 
 
これらの登場人物が融合して、
いかなる世界観を創り上げるのか?
 
<余談 1>
寺山修司 (天井桟敷)
唐十郎 (状況劇場)
つかこうへい (つかこうへい劇団)
 
と、劇作家の書いたものの多くは
本になっていますが、
(唐十郎さんを別にして)、
なぜか文庫まで降りてくると、
肝心の<戯曲作品>そのものが
あまりない。
 
唐さんは芥川賞を、
つかさんは直木賞を、
小説で獲ってる。
 
野田さんなんかは、まだいい方で、
 
ゼンダ城の虜、走れメルス』 (角川文庫)
……A・ホープ、太宰治
『怪盗乱魔』 (新潮文庫)
……快刀乱麻のモジりか
『野獣降臨』<のけものきたりて> (新潮文庫)
……エアロスミスのファースト・アルバム
『野獣生誕』との関わりやいかに
 
等が文庫化されています。
 
寺山修司さんはエッセイ集、
つかこうへいさんは小説ばっかしだもんな。
 
ああ、天井桟敷関連でいうと、
東由多加さん(東京キッドブラザース)、
も、
少し若い世代での
鴻上尚史さん(第三舞台)
とかも戯曲集が出てないなあ……。
 
<岸田國士戯曲賞>なんかの受賞作もあるのに。
 
<余談 2>
……て言うか、
”岸田賞” の文庫化確率、
異常に低くない?
 
”演劇界の芥川賞” 
なんでしょう?
 
<余談 3>
そんな日本の事情にくらべ、
海外と言えば、
ギリシアの昔(三大悲劇にアリストファネス)から、
シェイクスピア、
モリエール、
テネシー・ウィリアムスまで、
国・時代を問わず、
万遍なく戯曲集が文庫化されています。
 
最近(?)だと、
ニール・サイモンのも出てたよな。
 
 
 
 

1382「ぼくの大好きな青髭」

庄司薫
長編   山崎正和:解説  中公文庫
 
 
若者の夢が世界を動かす時代は終ったのか。
 
月ロケット・アポロ11号の成功の蔭で
沈んでいった葦舟ラー号……。
 
熱気渦巻く新宿を舞台に
現代の青春の運命を描く、
薫くんシリーズ完結篇。
 
改稿新版。
 
                        <ウラスジ>
 

 

 

 

 

 

 

 
 
赤……『赤頭巾ちゃん気を付けて』
白……『白鳥の歌なんか聞えない』
黒……『さよなら怪傑黒頭巾』
青……『ぼくの大好きな青髭』
 
四色完結編。
 
「赤・緑・青・群青色」

となったら、アンディ・ウォホール。

「きでい」

 

 

 

さて、

同級生の高橋くん。
そのお母さんからの電話。
ショーペンハウアーまみれの中での高橋くんの自殺未遂。
そこに、<青髭>。
 
三つの青年像。
 
解説の山崎正和さんの見事な分類を参考にすると――。
 
 
まず、物語の中心には自殺未遂で病床に伏した高橋青年がいて、
その謎の動機が、ほかのすべての人物の視線を
一身に集める仕掛けになっている。
この青年は理想家であり情熱家であって、
したがって見るまえに行動する人間であるから、
彼だけは他の人物を横から眺める立場に立っていない。
 
だが、彼のすぐ傍らには、

現代における理想の有効性が信じられず、

いっさいの情熱を冷笑する青年の群があって、
これは当然、高橋青年のような人物を
憐憫をこめた眼で見つめている。
彼らは、理想の十字架を掲げた隣人をたんに侮蔑するだけでなく、
そういう人間を狂熱から救い出すことに使命観を覚え、
積極的に情熱のむなしさを説いて歩くところから
戯れに
「十字架回収委員会」
と呼ばれている。
 
ところが、この揶揄的な呼び名が暗示するように、
彼らの背後にはまた別の青年の一群があって、

十字架回収の使命観

それ自体を冷やかなまなざしで眺めている。
この第三群の青年たちにとっては、
情熱に冷水を浴びせたがる情熱そのものが滑稽に見え、
現代心理の一症候群として映るのであって、
それを高所から観察しようとする彼らは、
みずから
「十字架回収委員会研究会」
と名のることになる。
 
                 <山崎正和:解説より>
 
この分類、アレンジをちょっと変えるだけで
現代にも合致しそう。
 
スノッブ、バンドワゴン、みたいな経済用語にも
一脈通じてるような。
 
<余談 1>
なんか村上春樹さんとの類似点を言う人もいるけど、
ぼく的には<黒>の所でも書いた、
島田雅彦さんの初期作品に
それを感じてしまうんだよなあ。
 
若者というよりも ”学生” っていう感じ。
 
<余談 2>
庄司薫 ≒ サリンジャー
村上春樹 ≒ ヴォネガット
では、
サリンジャー ≒ ヴォネガット
は成立するか?
 
 

1383「積木の箱」 (上)

三浦綾子
長編          朝日文庫
 
旭川の中学に着任する五月の朝、
杉浦悠二は、雑貨店で、中学三年生の一郎と出会う。
 
彼は、北海道の観光王と称される
実業家・佐々林の長男だったが、
姉と慕っていた奈美恵と父の秘密を目撃し、
自暴自棄になっていた。
 
担任となった杉浦は、荒む一郎を気遣うものの、
彼は心を開かない。
人は、罪をどこまで赦せるのか? 
妻妾同居を背景に、真実の愛と赦しを描く、もう一つの「氷点」。
 
邸宅に潜む、禁断の愛。
涙から生まれた幼子。
人は、どこまで赦せるのか――。
68万部突破! 
もう一つの『氷点』。
【『氷点』50年記念新装版】
 
                  <新潮社:書誌情報>
 

1384「積木の箱」 (下)

三浦綾子
長編   高野斗志美:解説  朝日文庫
 
広壮な佐々林邸で、父の部屋の鍵穴を覗き、
姉と信じていた奈美恵と父の秘事を知ってしまった一郎。
 
だが、彼は、奈美恵の誘惑に抗しきれない自分も赦せない。
 
唯一、雑貨店の久代と幼子・和夫と過ごす時間が、
慰めになっていた。
 
しかし、母子もまた、父の犠牲者だと知った時、
一郎の人間不信は遂に爆発する……。
 
人間を見据える、冷徹な眼差し。
 
罪と罰、愛と赦しを描く、永遠の文学。
 
妻妾同居、異母弟。
料亭の忌まわしい一夜。
愛は、どこまで救えるのか――。
新潮文庫累計1200万部! 
ますます輝き続ける、永遠の文学。
【『氷点』50年記念新装版】
 
                  <新潮社:書誌情報>
 
お断り。
朝日(新聞社)文庫に<ウラスジ>がなかったため、
新潮文庫のためと思しき、<新潮社:書誌情報>を
掲載しておきました。
 
あしからず。
 
という訳で、原点を。
 

 

 

 

う~。

どろっどろっ。

 

立原正秋か丹羽文雄か、

いずれにせよ、典型的な ”風俗小説” の構成。

 

山崎豊子さんの『華麗なる一族』も含まれているような。

 

一作で満腹。

ただし、消化不良を起こしそう……。

 

<余談>

これもテレビドラマをチラ見した記憶があります。

『氷点』以上に距離感がありました。

 

ただ、主題歌が耳に残って――。

 

♫ 積木の箱は~こわれやすいわ~ ♫

 

とか何とか。

アンニュイなシャンソン風歌唱で、

調べてみると加藤登紀子さんだったようです。