ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ザングウィル、

ガボリオ、

金子郁夫/小林進>

 

1864「ビッグ・ボウの殺人」

イズレイル・ザングウィル
長編   吉田誠一:訳  早川文庫
 
 
12月初めのその朝、
ロンドンのボウ地区で下宿屋を営むドラブダンプ夫人は、
いつもより遅れて目をさました。
 
下宿人のモートレイク氏は労働運動指導のため、
すでに出かけてしまったと見える。
 
霧深い冬の朝だというのに。
 
夫人はモートレイク氏の友人の下宿人を起こしに
二階へ上った。
 
ドアには鍵がかかり、
いつまで経っても返事はなかった。
 
それから数時間後、
新聞売りの少年が威勢よく叫んでいた
――ボウ地区で身の毛もよだつ自殺事件、
博愛主義者、喉を掻っ切る!
 
ポオの『モルグ街の殺人』の衣鉢をつぐ
密室ミステリの古典的傑作。
 
改訳決定版!
 
<ウラスジ>
 
1892年刊。
 
密室テーマを扱った長篇では、
世界最古のものと思われる。
 
<新保博久:世界の推理小説・総解説>
 
ちなみに
* 『ルルージュ事件』 ガボリオ 1866年 (未読)
世界最初の長篇探偵小説
* 『月長石』 コリンズ 1868年
イギリスにおける最初の長篇探偵小説
 
とにかく、次の『ルコック探偵』と同じく、
19世紀、まだポーやディケンズが闊歩してた時代の作品。
(中生代の恐竜みたいだな)
 
カー、乱歩、
それにウルサ型のヴァン・ダインまでが推奨する一品。
 
この作品以前にも、
密室状況をテーマにしたものは、
ポオの「モルグ街の殺人」(1841)等いくつかあるが、
いずれも「物質的トリック」ないし
「機械的トリック」によるものであり、
「心理的錯誤の原理」を応用して
密室テーマに新風を吹き込んだのは、
このザングウィルなのである。
 
<吉田誠一:あとがき>
 
もう一つ共通して言われているのが、”ユーモア” 。
 
結末の意外性や全篇にちりばめられたユーモアに特色があり、
創意と滋味において古典の名にふさわしい。
<新保博久>
この小説がこんにちなおおもしろく読めるのは、
当時の世相のユーモラスな活写、
戯画化した巧妙な性格描写によって
読者を引っ張って行く作者の非凡な筆力によるのであろう。
<吉田誠一>
 
に、しても、簡単な殺人法だこと。
 
<余談>
名前から窺い知れるように、
イズレイル・ザングウィルはコテコテのユダヤ人で、
バリバリのシオニストということ。
 
そしてザングウィルは、
近代シオニズム運動の創始者であるヘルツルとともに、
どこに「ユダヤ民族」の祖国を建設しようか、と
話し合ったという事ですが――
 
その候補地のいくつかが、
ウガンダ、メキシコ、オーストラリア
(ほかにアルゼンチン、キプロスなど)
 
現在のシナイ半島北部に位置するイスラエルとは
ほど遠い場所(キプロスはわりと近いか)ばかり。
 
これ、それなりの下準備とかするつもりだったんでしょうか。
それとも、ある日突然、
ズカズカと乗り込んでいくつもりだったのでしょうか。
 
安部公房の『友達』レベル。
 
そんなんじゃ揉めるのは当たり前。
 
そこに、二枚舌(三枚舌)外交が加わって……。
 
コーカソイドの国じゃないし、
日本は大丈夫だったのか?
 
 
 
 

1865「ルコック探偵」

エミール・ガボリオ
長編   松村喜雄:訳  旺文社文庫
 
 
居酒屋≪ポァヴリエール≫で、
恐ろしい悲鳴と共に三発の銃声が響き渡った。
 
それが不思議な殺人事件の発端だった。
 
パリ警視庁の刑事ルコックの捜査によって浮かんだのは、
ナポレオン時代にさかのぼる貴族たちの
流血の歴史だったのだが……。
 
史上初めての長篇推理小説といわれるガボリオの傑作。
 
<ウラスジ>
 
1860年刊。
 
ルコック。
 
デュパンとホームズの間を埋める、
”ミッシングリンク”のような存在か。
 
いくつかの先駆け、先達であるにも関わらず、
後輩のホームズ譚に存在感を薄められ、
同国の後輩ルールタビーユの後塵を拝すことにもなったよう。
 
 
デュパンは素人探偵であったが、
つぎに生まれたのは職業探偵であった。
一八六六年、エミール・ガボリオによって発表された
「ルルージュ事件」にルコックが登場する。
 
ルコックは警視庁の刑事です。
 
顔色はあお白いが、くちびるは赤く、
ゆたかな頭髪はちぢれていた。
こがらではあるが、きんせいのとれたからだで、
するどい頭脳と観察眼にめぐまれていた。
 
さすがバルザックを生んだ国。
 
ルコックの探偵法は、犯罪が起こると、
重要なものでも、そうでないものでも、
あらゆる事実を収集し、分類し、順序づける。
 
ガボリオがポーに学んだ「分析演繹法」がこれ――
色々集め、どんどん消去し、最後に残ったものが、
たとえどんなに不可思議なものであれ、それが答え――
って、ミステリでよく言われる言い回し。
 
現場を念いりに調べ、石膏で足跡を型どり、
泥の中、雪の中に腹ばいになって、
証拠を手にいれる。
 
この辺、ホームズに近いのかも。
 
<中島河太郎:「推理小説の読み方」>
 
<本編>
作品は二部構成になっています。
第一章 捜索
第二章 貴族の名誉
エピローグ
 
第一章で事件の捜索と解決、
第二章でその事件の背景となる過去の回想、
エピローグで二つが合致する――。
 
この方式はガボリオの発明らしく、
ホームズの長編ものはこの方式を
借りてるみたい。
 
またルコックが行き詰ったときの相談相手の
タバレ老人(実はレギュラーっぽい)の存在。
 
これ、横溝正史御大の、
由利先生と三津木俊助のコンビっぽい。
 
蒼井雄の『船富家の惨劇』でもあったっけ。
 
さきの『ビッグ・ボウの殺人』も
二人の探偵が登場するっけ。
 
<余談>
さて、
フランスの推理小説事情についての考察が
訳者の松村喜雄さんが語るところによると――
 
 
さて、イギリスではホームズを皮切りに
探偵小説が隆盛をきわめたが、
フランスにおいてはせっかくガボリオが
世界最初の長篇探偵小説を書いたにもかかわらず、
のちにはその正統をはなれて、
いわば犯人側の小説である
悪漢小説ロマン・ピカレスク系統がさかえ、
ロカンボールの人気が後をひき、
ルパン、シェリ・ビビ、ファントマスなどの
冒険小説が主流を占めるに至った。
 
その源泉をたどれば、
警察小説と悪漢小説の二つの要素をもった
ヴィドックの「回想録」が大きく影響を与えたのである。
 
 
このリンク先で紹介した
「ヴィドック回想録」(1828~1829)
(脱獄と逮捕を繰返し、のちに自ら創設した
 国家警察パリ地区犯罪捜査局の初代局長となる)
 
が間接的に――
 
フランスにあっても<新聞小説>の隆盛に大いに貢献した。
 
新聞小説の内容は毎日毎日、スリルとサスペンス、
あるいはお涙頂戴式の家庭悲劇が主なもので、
ヴィドックの多彩で異常な生活の記録が
これらの小説の着想源となっていた。
 
これらの小説というのが、
『パリの秘密』 ウジェーヌ・シュー
『モンテ・クリスト伯』 大デュマ
『レ・ミゼラブル』 ユゴー
と錚々たる顔ぶれ。
 
また
ポーにデュパンを創造させ、
ドイルにホームズを書かせるきっかけを作ったのも、
ヴィドックの『回想録』。
 
その影響力たるや凄まじいもの。
 
ただ、ガボリオも当然、
ヴィドックの『回想録』に影響を受けたものの、
新聞小説ブームのさなかでは――
 
 
純粋の探偵小説的テクニックを使って書いた作家は、
エミイル・ガボリオ一人だけであった。
 
<松村喜雄:解説より>
 
<余談>
「江戸川乱歩の外国作品ベスト30」
 
Ⅰ.古典(第一次大戦前期) 1947年選定
 
1.ルルージュ事件 ガボリオ
2.月長石 コリンズ
3.リーブンワース事件 A=K=グリーン
4.二輪馬車の秘密 ヒューム
5.晩年のルコック ボアゴベ
6.ボウ町の怪事件 ザングウィル
7.バスカビル家の犬 ドイル
8.緑のダイヤ モリスン
9.螺旋階段 ラインハート
10.オシリスの眼 フリーマン
 
* ほとんど文庫で読めない……。
 
<余談の補足>
5位のボアゴベは借用の達人。
 
『晩年のルコック』
このルコックはガボリオの創造したルコック。
 
他にデュマに対抗してか『鉄仮面』も書いてる。
 
まあ、フランスには「エルロック・ショルメス」なんてのも
ありましたし、他人のものを「無断で」借りるのに
抵抗がないのかも。
 
『晩年のルコック』は乱歩が『死美人』の名で翻訳してるし、
黒岩涙香もお得意の翻案で参戦。
 
 
 

1866「アメリカ・ジャズの旅」 

異文化を知る1

金子郁夫/小林進
長編        三修社文庫
目次
 
1.ジャズといゃあ、ニューヨーク
2.ニューポート・ジャズのシンボルは、リンゴ
3.ニューオリンズで聞こえてくるのは
4.もうひとつの故郷、ナッシュビルへ
5.カリフォーニアにゃ、ジャズは育たないな
アメリカ音楽祭ガイド
 
ジャズといゃあ、ニューヨーク、
この町を語らずしてジャズを語るなーんてのは、
フィルムを入れずに写真を撮って悦に入っている
迷カメラマンみたいなもの。
 
というわけで、
グリニッジ・ビレッジから、
まずジャズ・ジャーニーしてみよう。
 
<ウラスジ>
 
初登場の【三修社文庫】。
 
これから扱うのは全て
「異文化を知る1冊・シリーズ」
なんですが、
便宜上、【三修社文庫】で統一させていただきます。
 
むかし家にあった
「世界文化社」の<世界文化シリーズ>
 
(これで「ベネルクス三国」を知った)
これを細分化してエッセイ風に文庫化した
(ように私には思えた)シリーズ。
 
もう無くなったみたいだけど。
 
<本編>
それぞれの音楽のメッカを訪ねてのアメリカ旅。
1976年、アメリカの独立200年祭の時らしい。
 
ジャズと言いつつ、
ナッシュビル(カントリー)
ニューオリンズ(ジャズはジャズでもディキシーランド)
カリフォーニア(ウエストコースト・サウンド)
にも言及。
 
登場するミュージシャンも多岐に渡ります。
 
それを拾い読むのも一興でした。
 
<余談>
大阪梅田にあったジャズ喫茶。
 
薄暗い中、紫煙がもうもうとしていて、
長方形の店内の奥にでっかいスピーカーがふたつ。
 
コーヒー一杯1000円、店名は「コンボ」だったっけ?
 
新しがり屋の友人に連れられて行った、
最初で最後の「ジャズ喫茶」体験がそれでした。
 
まだ高校生だったかも。
 
ただ、
同じビル内にロック喫茶があって、
出来ればそっちの方に行きたかったのを覚えてる。
 
なんか、高校大学と、ロックよりジャズの方が上、
みたいな風潮があって、
多くの連中がそっちになびいていった。
 
いっちょまえにレコードを買って、
「トルコレーン(コルトレーン)は最高っすよ」
とかなんとか。
 
毛嫌いしてたわけじゃないけど、
積極的に「ジャズ」に向き合おうとはしませんでした。
 
 
 
 
【涼風音楽堂】
この本でも触れられていた60年代後半の
「ウエストコースト・サウンド」の代表曲。
 
私の ”永遠の歌姫” グレイス・スリックが在籍したバンド。
 
「あなただけを」 Somebody To Love 
ジェファーソン・エアプレイン Jefferson Airplane
* この頃のグレイスはジャニス(・ジョップリン)とともに
  「FREE S◯X」の象徴だった気がする。
* 本当にエロかったのはカーリー・サイモンだったけど。