陸上競技は30日から―
その最初の種目は男子3000m障害予選です。
3000m障害って?
そもそも市民ランナーには馴染みの薄いトラック種目の中でも、とりわけ知られていない・よく分からない種目であるとも言えるでしょう。
3000m走る間に、でっかいハードルを28回、水濠を7回飛び越えるというとんでもない競技です。ハードルはともかく、水濠ですよ、水濠!普通にビチョビチョになります。。。
ヨーロッパで伝統的なスポーツとされるクロスカントリーをトラックに再現したのが起源とされています。ハードルは倒木、水濠は小川みたいなもので、森の中でそういうのを飛び越えながら走るって感じですね。
国内では、高校から実施されていますが、古くから「穴種目」とされてきました。1500mや5000mでは厳しいけど、3000m障害なら県大会へ行けるかも?インターハイでも通用するかも?みたいな感覚です。選手層も薄いですし、走力が劣っている部分を障害超えでカバーすることも可能です。
とはいえ、トップへ行くにはやはりきちんとした走力が必要です。この種目で一流になろうと思ったら、1500mのスピードから10000mのスタミナ、そして障害飛越の高い技術を必要とします。
私事で恐縮ですが~30年に及ぶ私の指導歴において、全国大会規模の優勝者は3名出ていますが、そのうちの1名がこの種目です!一応、日本学生チャンピオンを出していて、実はけっこうこの種目の指導は得意です。ハードルの飛び方も教えられますよ。自分ではもう飛べませんが。。。
ハードルを飛ぶ技術には、「飛び越える」のと「乗り越える」のとがあります。普通にハードル飛びするのが「飛び越える」。一方、ハードルに片足をかけて飛ぶのが「乗り越える」で、消耗が少なく、技術的にも簡単ですが、「飛び越える」選手よりどうしても遅れが生じます。
穴狙いの高校生はほぼ100%乗り越えていますが、世界のトップになると飛び越える選手が増えます。ずっと乗り越えて、ラストスパートに入ると飛び越えに変える選手もいますね。
水濠はどうしても乗り越えなければなりません。(昔、飛び越えた、とんでもないケニア選手もいましたが…)できるだけ遠くに・浅いところまで飛びたいところですが、その分消耗しますので、その加減が難しいところです。
ハイスピードでボンボン飛んでいかなければならないので、接触や転倒も少なくありません。激しい競り合いになると、終盤はもう脚が上がらなくなってくることもあります。おそらくこの種目を専門にしていて、転倒経験のない選手はいないのではないでしょうか。五輪や世界陸上の決勝でも珍しいことではありません。
伝統的にケニア勢の強さが際立ちますが、あの長い脚でスイスイとハードルを飛び越え、水濠を乗り越えていく…。その上で激熱なラストスパートを見せたりします。最後のハードルでけっ躓いて勝負が決まることもあるので、終わるまでハラハラドキドキですよ。
一般に「3000mSC」と表記されますが、この「SC」は、「Steeple Chase」の略です。歴史的な意味がありますが、すごく長くなるので省略。(wikiに詳しく出ています。)
日本では、「サンショー」で通っていますね。ちなみにご年配の陸上経験者の方は、この「SC」を「スクラッチ」の略だと思っている方が少なくありません。古くは「サンスク」とも言われていました。なにがスクラッチなのか、なぜそうなっていたのか、その経緯は未だに不明です。
今回は、日本から3名の選手が出場します。
なかでも、超新星!弱冠19歳にして日本記録保持者の三浦龍司選手への期待が高まります。
3000m障害(2)に続く!
【水濠】
本番は窪みのところに水が入ります。手前の方から走ってきて、ポンと乗って、向こう側へ飛びます。遠くへ飛べば浅いところに着地できることになります。(いちばん深いところに落ちる高校生もいます…)
この写真はレーンの外側に設置されている外濠ですが、新国立競技場は、レーンの内側に設置される内濠になっています。
